社会保障

遺族(補償)一時金とは?「金額」や「受給資格者」をわかりやすく解説

遺族(補償)一時金とは?「金額」や「受給資格者」などを解説

労災保険といえば、業務上や通勤上によるケガや病気の治療費が無料になる…というイメージを持たれている方が多いと思います。

実は、保険加入者が死亡した場合は、その遺族が補償を受けられる保険でもあるのです。


この記事を読めば、遺族(補償)一時金の「金額」「受給資格者」「手続き」などを知ることができます。




遺族(補償)一時金とは

遺族(補償)一時金とは

労災保険に加入している人が、業務上または通勤途上の災害によるケガや病気がもとで死亡した場合には、一定の範囲内の遺族に「遺族(補償)給付」が行われます。

遺族がもらえる給付は、遺族の条件によって、「年金」か「一時金」に分かれます。


遺族(補償)一時金とは、遺族(補償)年金を受けられる遺族がいない時に、一定の範囲内でその他の遺族に支給される一時金です。


遺族(補償)給付は労災保険によって支払われます。


厳密には、業務災害の場合を遺族補償一時金、通勤災害の場合を遺族一時金といいます。



遺族(補償)一時金が支給される条件

遺族(補償)一時金が支給される条件は下記の2つになります。

  1. 労災労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいないとき
  2. 遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金が額および遺族(補償)年金前払一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1,000日分に満たない場合



一時金を受け取ることができる遺族

一時金を受ける遺族は、下記うち最先順位者(最先順位者が失権し、同順位者がいないときは次順位者に権利が移る)となっています。

受給資格 優先順位

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡当時生計維持関係にあった子、父母、孫および祖父母
  3. 上記 2.に該当しない子、父、孫および祖父母
  4. 兄弟姉妹



年金を受けることができる遺族

受給資格者は、労働者の死亡当時、生計維持関係のあった次の遺族です。


実際に遺族(補償)年金を受ける遺族は、そのうち最先順位者(最先順位者が失権し、同順位者がいないときは次順位者に権利が移る)となっています。

受給資格 優先順位

  1. 妻、60歳以上または一定の障害のある夫
  2. 18歳に達する年度の年度末までにあるまたは一定の障害のある子
  3. 60歳以上または一定の障害のある父母
  4. 18歳に達する年度の年度末までにある孫または一定の障害のある孫
  5. 60歳以上または一定の障害のある祖父母
  6. 18歳に達する年度の年度末までにある兄弟姉妹もしくは60歳以上または一定の障害兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

    なお、7~10までの人が実際に受けられるのは60歳になってからです。


遺族(補償)年金を受けられる遺族がいない時に、一定の範囲内でその他の遺族に「遺族(補償)一時金」が支給されます。



遺族(補償)一時金の給付の内容

遺族(補償)一時金の給付の内容


被災労働者の死亡当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合

遺族(補償)一時金 遺族特別支給金 遺族特別一時金
給付基礎日額の1,000日分 300万円 算定基礎日額の1,000日分



遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族(補償)年金前払金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合

遺族(補償)一時金 遺族特別支給金 遺族特別一時金
給付基礎日額の1,000日分から、すでに支給された遺族(補償)年金等の合計額を差し引いた金額 算定基礎日額の1,000日分から、すでに支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた金額



給付基礎日額とは

給付基礎日額とは

「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に騒動する額をいいます。


平均賃金とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。


年金としての保険給付の額の算定の基礎となる給付基礎日額は、毎年、前年度と比較した賃金水準の変動率に応じて増額または減額(スライド)されます。

また、年齢階層別の最低・最高限度額も適用されます(年金給付基礎日額)。


※船員については、給付基礎日額の特例があります。


算定基礎日額とは

算定基礎日額

「算定基礎日額」とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を 365で割った額です。

特別給付とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。


特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の 365倍に相当する額)の 20%に相当する額を上回る場合には、給付年額の 20%に相当する額が算定基礎年額となります。

ただし、150万円が限度額です。


手続き

手続き

遺族(補償)一時金を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、「遺族補償一時金支給請求書」または「遺族一時金支給請求書」を提出します。


なお、特別支給金の支給申請は、原則として遺族(補償)一時金の請求と同時に、同一の様式で行うことになります。

ダウンロード用(OCR)様式

障害補償給付支給請求書などダウンロード(厚生労働省)
(リンク先の「遺族(補償)等給付関係」のところにあります)



請求書記入例

遺族(補償)一時金を請求するときの請求書の記入例は下記のとおりです。

遺族(補償)一時金を請求するときの請求書の記入例

出典:厚生労働省



提出に必要な添付書類

状況 添付書類
被災労働者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあたとき その事実を証明する書類
被災労働者の収入によって生計を維持していたものである場合 その事実を証明する書類
被災労働者の死亡当時、遺族補償年金を受けることのできる遺族がいない場合 ・死亡診断書、死体検案書、検視調書またそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡の事実および死亡の年月日を証明することができる書類
・戸籍の謄本、抄本など、請求人と死亡した労働者との身分関係を証明することができる書類
遺族補償年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した時で、受給資格者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および、遺族(補償)年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合 戸籍の謄本、抄本など、請求人と死亡した労働者との身分関係を証明することができる書類



遺族(補償)一時金の請求に関する時効

障害(補償)給付の請求に関する時効

遺族(補償)一時金は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。



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