この記事では、「学校生活に関する社会保障の種類」を解説していきます。
学校生活を送るうえでの資金面の援助や、生徒が災害に巻き込まれてしまった場合の保障など、日本の社会保障には学校生活に関するさまざまな保障が存在します。
この記事を読めば、それらに関する保障内容を知ることができます。
就学援助制度とは
義務教育を円滑に実施するために、経済的な理由で就学困難となっている児童・生徒に学用品費等を支給して就学を援助しようとする制度です。
就学援助制度の対象者
経済的理由で就学困難な学齢児童(翌年度から小学校へ入学する児童を含む)、学齢生徒を抱える保護者で、下記のいずれかに該当するとき。
- 生活保護法に規定する要保護者
- 要保護者に準ずる程度に困窮している者(市区町村の教育委員会が要保護者に準ずる程度に困窮していると認めるもの)
就学援助制度の援助内容
- 学用品費
学習に直接必要な物品の購入費 - 通学費
通学定期代などの費用 - 修学旅行費
修学旅行に直接必要な交通費、宿泊費、見学料、記念写真代、医薬品代、旅行損害保険料等の費用 - 通学用品費
通学用品費の購入費 - 校外活動費
校外で行われる学校行事に参加するための交通費、見学日 - 体育実技用具日
体育の授業に必要な実技用具の購入費 - 新入学児童生徒学用品費等
新入学にあたって必要な学用品の購入費 - クラブ活動費
クラブ活動に実施に必要な用具等の購入費等 - 生徒会費
生徒会費、児童会費、学級費 - PTA会費
学校・学級・地域等を単位とするPTA活動に要する費用 - 医療費
学校の健康診断において治療が必要と認められた疾病(学校保健安全法施行令で定めるものに限る)の利用に係る医療費 - 学校給食費
学校給食に要する費用
高等学校等修学支援金制度とは
家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意思のある高校生等が、安心して勉強に打ち込める環境をつくるため、国の費用で高等学校就学支援金として授業に充てるための一定額の援助を行うことで、家庭の教育費負担を軽減するものです。
支援内容
国公私立を問わず、高等学校等に通う一定の収入額未満の生徒に対して、授業に充てるため国から高等学校就学支援金が支給されます。
修学支援金は、簡便で確実に授業料負担を軽減できるように、学校が生徒本人に代わって受けとり、授業料等の一部に充てる仕組みになっています。
支給要件
日本国内に住所を有し、保護者等の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50.7万円未満で、国立・公立・私立の下記の学校に在学しているとき。
- 国公私立の高等学校(全日制、定時制、通信制)
- 中等教育学校後期課程
- 特別支援学校高等部
- 高等専門学校(1~3年)
- 専修学校高等課程
- 国家資格者養成課程に指定されて専修学校一般課程や各種学校のうち、①准看護士、②調理師、③製菓衛生士、④理容師、⑤美容師の国家資格者養成課程の指定を受けたもの
- 文部科学大臣に指定されて外国学校
- 海上技術学校
受給対象とならない方
下記のいずれかに該当する場合は支給されません。
- 世帯年収が910万円以上の世帯(片働きの場合)
- 高校学校等を既に卒業または修了した方
- 高等学校等に在学した期間が通算して36ヶ月を超えた方(通信制・定時制は48ヶ月まで可)
なお、世帯年収の枠組みは以下のようにさまざまですので、受給できるかどうかは学校に確認が必要です。
- 親が離婚してる場合
→ 主に生計を共にしており養育をしている親の収入が世帯年収となる - 祖父母と同居の場合
→ 主な養育者である父・母などの収入が世帯年収となる - 入学者が20歳以上の場合
→ 自分の生計を維持している人の年収か、自分の収入のみが世帯年収となる
支給額
公立・私立高等学校等は9,900円(年額118,800円)を限度として支給。学校の種類によって異なる。
私立高等学校等については、世帯の収入に応じて1.5~2.5倍の加算があります。
支給限度額は下記のとおりです。授業料が下記に達しない場合には、授業料を限度として就学支援金を支給します。
学校の種類 | 金額 |
国立高等学校、国立中等教育学校の後期課程 | 月額9,600円 |
公立高等学校(定時制)、公立中等教育学校の後期課程(定時制) | 月額2,700円 |
公立高等学校(通信制)、公立中等教育学校の後期課程(通信制) | 月額520円 |
国立・公立特別支援学校の高等部 | 月額400円 |
上記以外の支給対象高等学校等 | 月額9,900円 |
なお、単位制の高等学校、中等教育学校の後期課程、専修学校においては、履修単位数に応じた支給となります。
- 支給対象単位数の上限:74単位
- 年間の支給対象単位数:30単位
- 支給期間の上限:36月(定時制・通信制課程の場合は、在学期間について、その月数を1月の4分の3に相当する月数として計算)
- 一単位あたりの支給額は4,812円(これを履修期間で除した額が支給月額)
特別支援学校への就学奨励とは
教育の機会均等の趣旨と特別支援学校等への就学という特殊事業を勘案して、国および地方公共団体がそれらの学校への就学について、保護者の経済的負担を軽減させるため、その経済状況に応じて費用経費の全部または一部を支給するものです。
なお、特別支援学校とは、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者または病弱者(身体虚弱者を含む)に対して、幼稚園、小学校、中学校または高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害による学習上または生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を習得させることを目的とする学校のことです。
受給要件
特別支援学校ならびに小中学校の特別支援学級等に就学する幼児、児童および生徒の保護者などであるとき。
援助内容
- 許可用図書購入費
- 学校給食費
- 通学費(本人・付添人)
- 帰省費(本人・付添人)
- 職場実習交通費
- 交流および共同学習交通費
- 寄宿舎居住にともなう経費(寝具購入費、日用品等購入費、食費)
- 修学旅行費(本人・付添人)
- 校外活動等参加費(本人・付添人)
- 職場実習宿泊費
- 学用品・通学用品購入費
- 新入学児童・生徒学用品・通学用品購入費
など
援助額
世帯の収入、学部等により受給要件、援助内容および額が異なります。
医療費の援助とは
学校保健安全法は、児童・生徒の健康管理のため各種の健康診断(後述)を始め、健康相談、保健指導、感染症の予防対策のための出席停止、臨時休校などの措置を定めていますが、その一環としてこの記事で解説する「医療費の援助」も行っています。
受給要件
義務教育諸学校の児童または生徒が、感染症または学習に支障を生ずるおそれのある疾病にかかり、学校より治療指示を受けた場合で、その保護者が下記のいずれかに該当するとき。
- 生活保護法による要保護者
- 要保護者に準ずる程度の困窮者と教育委員会が認めた者
生活保護の受給要件
生活保護を受けるには下記のすべてに該当する必要があります。
- 雇用保険被保険者ではない、また雇用保険の求職者給付を受給できない者
- 本人収入が月8万円以下の者
- 世帯全体の収入が月25万円以下(年300万円以下)の者
- 世帯全体の金融資産が300万円以下の者
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない者
- 全ての訓練実施日に出席する者(やむを得ない理由がある場合は8割以上の出席)
- 訓練期間中から訓練終了後, 定期的にハローワークに来所し職業相談を受ける者
- 同世帯の者で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない者
- 既にこの給付金を受給したことがある場合は, 前回の受給から6年以上経過している者
- 過去3年以内に失業等給付等の不正受給をしていないこと
対象の疾病
- トラコーマおよび結膜炎
- 白せん、かいせん、のうか疹
- 中耳炎
- 慢性副鼻腔炎およびアデノイド
- う歯
- 寄生虫病(虫卵保有を含む)
援助内容
治療費のほぼ全額が支給されます。
都道府県、市区町村によって若干異なる場合もあるため、居住の市区町村役場で確認してください。
学校等の児童生徒等に対する災害救済給付とは
学校の管理下での災害に関する公的な共済制度については、独立行政法人日本スポーツ振興センター法により定められています。
独立行政法人日本スポーツ振興センターと学校等の設置者が災害共済給付契約を締結することにより、学校の管理下の災害に際して所定の給付金を支給するという仕組みを設けているものです(後述)。
この共済制度には、学校等の設置者が保護者の同意を得て、児童生徒等を一括して加入させています。
受給要件
独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度に加入している下記の者が、学校の管理下の災害により負傷しまたは疾病にかかったとき、および障害が残ったり死亡したとき。
- 義務教育諸学校の児童・生徒(特別支援学校を含む)
- 高等学校、中等教育学校、高等専修学校、高等専門学校および幼稚園の生徒、学生および幼稚園(特別支援学校の高等部、幼稚部を含む)
- 幼保連携型認定こども園、保育所等の幼児、幼児
給付内容
災害共済給付の額は下記のとおりです。
- 医療費
医療保険並みの療養に要する費用の額が5,000円以上かかったとき、その費用の額の10分の3(高額療養費の自己負担限度額を限度)に、療養にともなう諸費用としてさらに10分の1の額を加えた額。
入院時食事療養費の標準負担額がある場合はその額を加算 - 障害見舞金
2,800万円(運動などの行為と関連のない突然死および通学の場合は半額) - 供花料
(損害賠償を受けたこと等により死亡見舞金が支給されない場合)17万円 - へき地通院費
1日あたり定額1,000円
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奨学金とは
奨学金とは、奨学制度に基づき学生を援助するために貸与または給付されるお金、またはその制度のことです。
独立行政法人日本学生支援機構では、大学(短期大学を含む)・大学院・高専・専修学校(専門課程)の学生に奨学金を貸与しています。
また、経済的理由により進学が極めて困難な生徒を対象として、返還の必要がない給付型の奨学金も実施しています。
高校および専修学校(高等課程)の生徒に対する奨学金貸与は、都道府県が行っています。
また、奨学金については、機構が実施するもののほか、自治体や民間団体が行うもの、私立学校が自校の学生・生徒に対して行うものなどさまざまありますが、それらについてはそれぞれの団体、学校に照会してください。
奨学金には下記の5つがあります。
- 第一種奨学金(無利息貸与型)
- 第二種奨学金(利息付貸与型)
- 入学時特別増額貸与奨学金(利息付)
- 給付奨学金
- 海外留学のための奨学金
それぞれわかりやすく解説していきます。
第一種奨学金(無利息貸与型)
対象学種
大学、短大、大学院、高等専門学校、専修学校(専門課程)。
対象者
特に優秀な学生・生徒で経済的理由により著しく就学困難であると認定された者(学種ごとに成績・家計の基準あり)。
ただし、低所得世帯については成績基準を満たさなくても対象になります。(大学院を除く)。
貸与月額
学種別、設置者(国公立、私立)別、入学年、通学形態(自宅・自宅外)別によりそれぞれ下表のように定められています。
学種 | 貸与月数 | 国・公立 | 私立 | |||
自宅 | 自宅外※5 | 自宅 | 自宅外※5 | |||
大学 | 48ヶ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 54,000※2 | 64,000※3 | |
短大・専修 | 24ヵ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 53,000※2 | 60,000※3 | |
大学等通信 一面接授業期間 |
1ヶ月 | 88,000 | ||||
大学院 | 修士課程 | 24ヵ月 | 50,000 88,000 | |||
博士課程 | 36ヵ月 | 80,000 122,000 | ||||
高専 | 1~3年※4 | 36ヵ月 | 21,000 | 22,500 | 32,000 | 35,000 |
4~5年 | 24ヵ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 53,000※2 | 60,000※3 |
※1 20,000円または30,000円を選択
※2 20,000円、30,000円または40,000円を選択
※3 20,000円、30,000円、40,000円または50,000円を選択
※4 高等専門学校1~3年では通学形態にかかわらず貸与月額として10,000円を選択可能
※5 自宅外通学の場合でも、自宅通学の月額を選択可能
返還方法
定額変換方式(月々の返還額は貸与総額に応じて算出された定額)または所得連動返還方式(月々の返還額は前年の所得に応じてその年ごとに決定)のいずれかを選択できます。
返還期間
定額返還方式の場合は最長20年、所得連動返還方式の場合は返還が完了するまでの期間となります。
返還が難しくなった場合の救済制度
病気・災害・経済困難などで返還が難しくなった場合の救済制度として、月々の返還額を減額して返還期間を延長する制度(所得連動返還方式を選択している場合は利用できません)や返還期限を猶予する制度があります。
また、条件により第二種奨学金との併用貸与を受けることもできます。
第二種奨学金(利息付貸与型)
対象学種
大学、短大、大学院、専修学校(専門課程)高等専門学校(4・5年生)。
対象者
定められた学力および家計の基準に該当している者。貸与基準は第一種奨学金よりゆるやかになっています。
貸与月額
- 下記の月額のなかから、申込者が自由に選択できます。
①大学・短大・専修学校(専門課程)・高等専門学校(4・5年生)
➝2万円~12万円(1万円刻み)
②大学院
➝5万円・8万円・10万円・13万円・15万円 - 増額貸与
希望により、私立大学の医・歯・薬・獣医学課程で最高月額(12万円)を選択した場合は4万円(医・歯学課程)・2万円(薬・獣医学課程)、法科大学院在学者で最高月額(15万円)を選択した場合は4万円または7万円の増額貸与を受けることができます。
利息
在学中は無利息とし、利率は年3%を上限となります。
申込み時に利率固定方式(貸与終了時に決定した利率で固定)または利率見直し方式(返還期間中おおむね5年ごとに利率を見直し)のいずれか一方を選択します。
増額貸与分については原則として基本月額の利率に0.2%上乗せした利率になります。
返還方式・期間
定額返還方式のみ。
貸与総額に応じて20年以内の元利均等方式で返還します。
入学時特別増額貸与奨学金(利息付)
入学にかかる一時的な経費に対応するため、第1学年(編入学者の入学年次を含む)において、希望により、入学月の基本月額に10・20・30・40・50万円のなかから希望する額を増額して貸与が受けられます。
対象学種
大学、短大、大学院、専修学校(専門課程)、高等専門学校(第4・5学年編入者)。
申込資格
入学年月を貸与始期として第一種奨学金または第二種奨学金の貸付を受ける者で、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を申請して融資を受けることができなかった者(日本政策金融公庫が定める要件を満たすもの)。
利息
第二種奨学金の増額貸与分と同じ。
返還期間
貸与総額に応じて20年以内の元利均等方式で返還します。
給付奨学金
返還の必要のない給付型の奨学金です。
高等学校等において優れた生徒であって、大学等への進学の目的および意思が明確であるにもかかわらず、経済的理由により進学が困難な生徒に対し、大学等への進学を後押しすることを目的としています。
対象学種
大学(学部)、短期大学、専修学校(専門課程)、高等専門学校(4・5年次)。
対象者
住民税非課税世帯、生活保護受給世帯または社会的擁護を必要とする人(児童養護施設退所者等)であって、一定の学力・資質要件(具体的な基準を各高校等で定めています)を満たす人。
給付月額
- 国公立の場合、自宅通学は2万円、自宅外通学は3万円
- 私立の場合、自宅通学は3万円、自宅外通学は4万円
- 社会的擁護が必要な人へは、入学時に24万円を一時金として別途支給
海外留学のための奨学金
機構が実施している海外留学のための奨学金は下記のとおりです。
1.~3.が返還義務のない給付型の奨学金、4.が貸与型(有利子)の奨学金です。
- 海外留学支援制度(学部学位取得型・大学院学位取得型)
➝学士、修士、の学位取得を目指し、海外の大学に留学する人を対象とした奨学金 - 海外留学支援制度(協定派遣)
➝日本の大学等が諸学国の高等教育機関との学生交流に関する協定等に基づいて、在籍学生を諸外国の学校に短期間派遣するプログラムを実施する場合に、プログラムに参加して海外に留学する人を対象とした奨学金です - 官民協働海外留学支援制度
➝官民協働で取り組む海外留学支援制度「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」によって、海外の大学等に留学する人を対象として奨学金です - 第二種奨学金(海外・短期留学)
➝海外の大学および大学院の正規課程(学位取得課程)への留学や、海外の短期大学、大学、大学院への短期留学をする人を対象とした奨学金
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