第一生命ホールディングス傘下のネオファースト生命保険は認知症を患うと一時金を支払う保険で、永久歯が70歳時点で20本以上残っていれば以後の保険料を1~3割程度安くする商品の取り扱いを2021年12月に始めます。
高齢になっても自分の歯でかむことができれば脳への刺激を保て、発症を抑えられる可能性も高まることに着目して開発したといいます。
歯が20本以上残っている70~74歳の割合は63%
被保険者が認知症と診断され、公的介護保険で要介護1以上と認定されれば保険金を受け取れます。
義歯やインプラントなど人工の歯は対象外です。
厚生労働省によると、2016年時点の調査で歯が20本以上残っている70~74歳の割合は63%でした。
50歳女性が保険金200万円に設定して入った保険の場合、毎月の保険料は2364円。
70歳の時点で永久歯が20本以上残っていると、以後の保険料は2020円になるといいます。
歯を失うと認知機能が低下する
歯を失う原因の多くは歯周病です。
歯周病などで歯を失ってしまうと、食べ物を「噛む」ことができなくなるだけでなく、噛むことによる脳の活性化が起こりにくくなり、認知機能を低下させてしまう可能性があると言われています。
65歳以上の男女4千人を対象に、4年間にわたり認知機能と歯の本数との関係期について調査した報告があります。
この調査結果では、歯がほとんど無く、入れ歯など(インプラントを含む)を使用していないグループは、歯が20本以上残っているグループに比べ認知症になるリスクが1.9倍になっていました。
この研究だけでなくその他多くの報告によっても、「歯を失うと認知機能が低下する」という結果が得られています。
噛むという動作が脳の活性化に関与していることが考えられます。
事実、食べ物を噛むとその刺激は脳の中心部にある海馬という部位に伝わり、その部分の機能を活性化することがわかっています。
海馬は「記憶の司令塔」とも呼ばれており、その部分が刺激されると記憶量力や空間認識機能が向上すると言われています。
歯周病がアルツハイマー病の悪化の原因に
歯周病などで歯を失うと認知症のリスクが高まることは上述した通りですが、これはあくまで「間接的」な原因にすぎません。
しかし、認知症の研究がすすむにつれ、認知症の中でも最も多い「アルツハイマー」病の原因に、歯周病が直接関与している可能性があることがわかってきました。
2013年、アルツハイマー病の患者さんの脳から歯周病菌が発見されたのです。
以後の研究においても、同様にアルツハイマー病の患者さんの脳から、歯周病菌や歯周病菌のつくる毒素が見つかっています。
さらに驚くべきことに、歯周病菌をマウスに投与するとマウスの脳に、アルツハイマー病でみられるような脳の「シミ」ができたという研究の報告もあります。
これらのことから、歯周病はアルツハイマー病などの認知症の発症や悪化に間接的だけでなく直接的な原因となっている可能性が考えられています。
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