厚生労働省は2022年12月13日、新型コロナウイルスワクチンの国費負担について専門家を交えた議論を始めました。
感染力や重症化率などのリスク評価や接種が伸び悩んでいることをふまえ、来春以降で有料化する時期を見極めます。
自治体からは早期に方針を示すよう求める声が上がっており、感染症法上の分類見直しと並行して検討を急ぎます。
詳しく解説していきます。
動画でも解説しています
ワクチン接種は2023年3月に実施期限を迎える
現在、コロナワクチンは予防接種法上の「特例臨時接種」に位置付けられています。
このため、国がワクチンを製薬会社から買い上げ接種にかかる費用を公費負担しています。
2023年3月に実施期限を迎えるため、4月以降に延長するか、位置づけを変更するかを決める必要があります。
接種1回の費用は約9600円
厚労省は厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の分科会を開き、議論を始めました。
会合では「緊急時対応を繰り返すフェーズから、持続可能な対応に切り替えていく段階だ」「重症化予防のための幅広い年齢への接種は今後も必要だ」といった意見が出ました。
財務省は公費負担を早期に見直すべきだとの立場を示しています。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会は11月、コロナワクチンの接種費用について「特例的な措置は廃止すべき」だと提起しました。
同省の推計では接種1回の費用は約9600円です。
2021年度の接種回数は約2億5700万回ですので、国は2兆3396億円を費(つい)やしたことになります。
インフルエンザワクチンと同様に「定期接種」
2023年4月以降の選択肢の一つにあるが、インフルエンザワクチンと同様に予防接種法上の「定期接種」に移行する案です。
インフルワクチンは原則として重症化しやすい65歳以上らを定期接種の対象とし、実費を一部払うことで接種を受けられます。
自治体によっては無料で提供しています。
64歳以下など対象以外の人が希望する場合、通常は自己負担が発生します。
新型コロナの感染は収束したわけではないので自己負担の導入には慎重な意見もあります。
会合では委員から「自治体の準備が間に合わない」「接種対象や回数など検討課題が山積している」などと、来春の定期接種化は難しいとの指摘が出ました。
従来ワクチンを用いた生後6カ月~4歳の乳幼児接種は10月下旬に始まったばかりです。
3月まででは保護者への周知期間が短く、反発が予想されます。
5類になっても公費負担を続けることは可能
予防接種の扱いは厚労省が別の専門家組織で議論している、感染症法上の位置づけの見直しとも関係します。
コロナが同法上の「新型インフルエンザ等感染症」から、より低リスクな季節性インフルエンザと同等の「5類」相当に移行させることになれば、ワクチンの有料化を求める意見が強まる可能性があります。
ただ、会議では委員から「5類になっても公費負担を続けることは可能」として、ワクチンの公費負担を継続することも選択肢とするよう求める声もあがりました。
感染症法上の分類を見直すことになれば、コロナ治療費に患者負担を導入する可能性もあります。
厚労省は年明けに再び分科会などを開き、来春以降の指針を示すとしています。
接種会場や打ち手の確保を続けるかどうか、自治体の対応に時間が必要になるためです。
まとめ
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの有料化について専門家を交えた議論を始めました。
現在、コロナワクチンは予防接種法上の「特例臨時接種」に位置付けられています。
2023年3月に実施期限を迎えるため、4月以降に延長するか、位置づけを変更するかを決める必要があります。
財務省の推計では接種1回の費用は約9600円です。
2021年度の接種回数は約2億5700万回ですので、国は2兆3396億円を費(つい)やしたことになります。
接種はすでに高齢者が中心になりつつあります。
9月にはオミクロン型に対応した新たなワクチンの接種が始まりました。
2回目までを接種済みの12歳以上が1回受けられます。
接種率は全人口の26.4%、高齢者でも42.3%にとどまっています。
従来ワクチンを用いた2回目接種は全人口の8割に達していました。
-
ワクチンの接種拒否を理由に解雇するのはNG!厚労省が声明
厚生労働省は新型コロナウイルスワクチンを接種しない労働者や求職者に不利益が生じないよう企業に対応を促します。接種しないことだけを理由とした解雇や雇い止めは許されないとし、接種を採用条件とする場合も理由 ...
続きを見る