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2024年から年収600万円でも「給付型奨学金」の対象になる

2024年から年収600万円でも「給付型奨学金」の対象になる

返済不要の「給付型奨学金」の対象が低所得層から中間層に広がります。

文部科学省の有識者会議は、子どもが3人以上いる世帯を最重視するといった支援の優先順を柱とする制度案をまとめました。


大学進学を後押しする狙いがあり、2024年度から始まります。

焦点となっていた対象世帯の年収基準はまだ決まっておらず、近く取りまとめられます。

大規模な財源が必要になり、年収基準がどこまで引き上げられるかは不透明です。


詳しく解説していきます。


2024年から奨学金は大きく変わる

2024年から奨学金は大きく変わる

高度人材の育成に向け政府は奨学金制度の見直しを進めています。

今回は学部生らを対象とした給付型の制度案が固まり、大学院修士課程を対象に国が学費を立て替える「出世払い」型奨学金の設計も利用しやすいように制度変更されます。

国の修学支援が2024年度から大きく変わることになります。


給付型奨学金は2017年度に創設されました。

授業料減免と合わせ修学支援新制度と呼ばれ、2021年度は約32万人が利用しています。

2022年度当初予算で約5000億円を計上しました。

家族構成や学部の優先枠はありません。

例えば、両親と子2人の世帯の場合は年収380万円未満を基準とし、年収に応じて3段階の支給水準を定めています。


制度変更の2つの狙い

制度変更の2つの狙い

新たな制度案のポイントは、これを中間層へ広げるうえでの優先順位を示したことです。


3人以上の子を扶養する家庭の学生を最優先する

制度変更の狙いの1つ目は、支援対象の選考では3人以上の子を扶養する家庭の学生を最優先するとしました。

高校生の大学進学希望率は子どもが多い世帯ほど低い傾向があります。

奨学金で進学を諦める学生を減らし、経済格差の固定化を防ぐ狙いがあります。


理工農系学部の学生も支援対象

制度変更の狙いの2つ目は、理工農系学部の学生も支援対象とし、私立と国公立では一般的により授業料が高い私立の学生を手厚く支援します。

政府が重視するデジタルや脱炭素といった成長分野の人材育成を考えています。


支給対象者は、年収600万円前後を基準

支給対象者は、年収600万円前後を基準

奨学金の対象とする年収基準をどこまで引き上げるかが焦点でしたが、制度案では具体的な金額を示しませんでした。

財源の消費税収に限りがあるなか、基準次第で必要な予算が変動するためこれから政府内で調整されます。


支給対象者は、ボリュームゾーンの年収600万~700万円の層まで支援するのが望ましい、という意見が出ています。

政府内では、私立高校の授業料が実質無償化される年収水準と同程度の年収600万円前後を基準とし、支援額を低所得層の上限(約160万円)の4分の1程度とする案などが浮上しています。


文科省は年収基準が定まった後、奨学金業務を規定する日本学生支援機構法の施行令などを改正し制度を具体化します。


授業料は増加傾向

授業料は増加傾向

政府が奨学金拡充に動く理由は学費が上しているからです。

2021年度の私立大授業料は平均約93万円で、11年度(約86万円)から8・5%増加しています。

国立大も値上げが相次いでいます。

一方で賃金は伸び悩んでおり、中間層でも大学進学に伴う家計への負担は増加傾向です。


給付型奨学金の拡充により大学への公的支出が増えることになります。

少子化が進むなかで学生集めに苦慮する大学は増えており、奨学金の拡充策が教育の質が低い大学の救済措置とならないようにする制度設計が重要です。


奨学金が使える大学や専門学校などは全国に約3000校ありますが、経営判断の指標となる定員充足率が低い学校もあります。

文科省は定員充足率など学校側の要件を厳格化します。


日本の学費負担は大きい

日本の学費負担は大きい

中間層にとっても教育費支出は大きな負担になっています。

わずかな年収の差で給付型の対象にならない世帯や学生が不利になりすぎないように、貸与型の奨学金も含めて高等教育費にかかる制度全体の改善が必要です。


高等教育費の負担のあり方は税制や福祉政策の違いから各国で大きく異なっています。

経済協力開発機構(OECD)によると北欧は高い税率を課す一方で学費を無料とする国が多いです。

しかし、日本の家計負担の学費の割合は日本(52%)はOECD平均(22%)を大きく上回っています。


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