厚生労働省は2022年10月25日、2025年の次期年金制度改正に向けた議論を始めました。
少子高齢化の進展で年金財政の見通しは厳しさを増すばかりです。
すべての国民が加入する基礎年金(国民年金)の加入期間の延長や、一部の厚生年金から穴埋めして給付目減りに歯止めをかける案などがあります。
小手先の改革にとどまれば、年金への信頼も揺らぐことになります。
詳しく解説していきます。
年金改革3つの案
将来の年金水準の見通しを試算する5年に1度の「財政検証」を24年に予定しています。
これに向け、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で見直しを議論します。
24年末までに結論を出し、25年の通常国会に改正法案の提出を目指しています。
公的年金は寿命の伸びや働き手の減少にあわせて給付額を抑える「マクロ経済スライド」で制度を維持する設計でした。
デフレが続いた結果、想定通りに発動できず、高齢者らの給付水準の高止まりが続いています。
その分、財源は減り、将来の給付は減る見通しです。
厚労省によると、現状のままでは国民年金の受給水準が46年度には19年度比で約3割減る恐れがあります。
歯止めをかけるため、3つの案を軸に検討する見通しです。
1.高所得層の厚生年金や国庫負担金で穴埋めする案
1つ目は、マクロ経済スライドを早期停止する代わりに一部の高所得層の厚生年金や国庫負担金で穴埋めする案です。
新たに数兆円単位の国庫負担が必要になる可能性があり、財源確保が欠かせません。
2.基礎年金の加入期間を45年(20歳~64歳)に延長する案
2つ目は、40年(20歳~59歳)となっている基礎年金の加入期間を45年(20歳~64歳)に延長する案です。
自営業者ら多くの加入者にとって負担増となり、広く理解を求める必要があります。
3.厚生年金の適用対象を拡大する案
3つ目は、厚生年金の適用対象を拡大する案です。
国民年金の加入者が厚生年金の対象になると自己負担が増える場合もありますが、年金額などの保障は手厚くなります。
企業にとってはコスト増となります。
具体的には従業員が50人以下の企業に勤めるパートの扱いや、個人事業所のうち現在は加入義務がない飲食サービスや旅館などへの拡大が焦点になっています。
現在は従業員が101人以上の企業のパートは厚生年金の加入対象で、24年10月に51人以上まで拡大する方針が決まっています。
年金財政の問題は少子高齢化
少子高齢化の見通しの甘さもあり、年金改革は不可避の情勢です。
日本の公的年金は現役世代が高齢者に「仕送り」する形式をとっています。
少子化の加速で、現役世代1人が支える高齢者の人数が増え、給付と負担のバランスが崩れつつあります。
新型コロナウイルス下の21年の出生数は約81万人。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位シナリオ)より6年早く少子化が進んでいます。
40年には「団塊ジュニア」世代が65歳以上となり高齢者数がピークの4000万人に近づく「2040年問題」が控えています。
現役世代は15年の約7700万人から40年に約6千万人まで減る予測です。
基礎年金の水準底上げは制度の見直しだけでなく、より多くの女性や高齢者が就労しやすい環境整備も不可欠となります。
まとめ
厚生労働省は2022年10月25日、2025年の次期年金制度改正に向けた議論を始めました。
少子高齢化の進展で年金財政の見通しは厳しさを増すばかりです。
厚労省によると、現状のままでは国民年金の受給水準が46年度には19年度比で約3割減る恐れがあります。
歯止めをかけるため、3つの案を軸に検討する見通しです。
- 高所得層の厚生年金や国庫負担金で穴埋めする案
- 基礎年金の加入期間を45年(20歳~64歳)に延長する案
- 厚生年金の適用対象を拡大する案
少子高齢化の見通しの甘さもあり、年金改革は不可避の情勢です。
現役世代は15年の約7700万人から40年に約6千万人まで減る予測です。
-
年金について学べるおすすめの本5選【2024年版】
年金については、ニュースなどで見聞きすることがあるため、何となく理解していると思いますが、しっかりと制度を把握している人は少ないのではないでしょうか?年金保険料は20歳以上になると納めることになります ...
続きを見る