医療や介護など社会保障にかかる費用が膨張しています。
このままでは社会保険料は2040年度に今より3割増え、190兆円に膨らむことになりそうです。
政府は少子化対策の拡充を打ち出し、財源として保険料への上乗せを検討しています。
負担がさらに増すことになれば、対策の効果が薄れる恐れがあります。
税を含む幅広い議論を封じたままでは保険料の上昇に歯止めがかからず、現役世代への負担の偏りを解消できません。
詳しく解説していきます。
社会保障費、2040年度の給付費は190兆円に膨らむ
医療や介護、年金などにかかる経費の総額を表す社会保障給付費は2023年度の予算ベースで134兆円に上っています。
政府が2018年に発表した社会保障の将来見通しでは2040年度の給付費は190兆円に膨らみます。
20年で約1.3倍になります。
GDP成長率1%で維持される、薄氷を踏む社会保障制度
給付費の規模をはかるため国内総生産(GDP)比で見ると、2023年度は23.5%となります。
政府見通しの2040年度は24%ほどに高まります。
政府はこの間の経済成長率を年1%程度に設定して数値を算出しています。
高齢化や人口減を背景に、給付費のGDP比は政府の見通しを上回って推移すると予測されています。
成長率が1995年度以降に平均で0.35%だったことをふまえ、2020年度以降の平均を0.5%成長と仮定すると、2040年度のGDP比は28%に上昇します。
政府の見通しより4ポイントほど高い結果になります。
不足分は社会保険料の引き上げでまかなう
負担の増加分を社会保険料の引き上げでまかなう場合、保険料は今より3割増になる可能性があります。
保険料率の上限を定める年金と異なり、医療や介護の保険料率に限度ありません。
とはいえ、保険料率の引き上げ余地が無限にあるわけではないです。
給付費の膨張にあわせて保険料を上げ続ければ、社会保障の持続性は不透明になります。
政府は2040~2050年度の社会保険料率の上限幅に関する試算を早急に示すべきでしょう。
子育てを担う現役世代の負担能力との関係で、全体の上限に関する許容範囲の議論や検討を深める必要があります。
医療給付費を適切に抑えていく仕組みが必要
給付費の伸びが経済や人口動態をふまえた伸びを上回る場合、超過分を自動調整する仕組みが求めまれます。
超高齢化社会では国民負担を引き上げざるを得ません。
そのうえで、高齢化や人口減の進行を考慮して医療給付費を適切に抑えていく仕組みが必要です。
保険料の増加ペースを支え手の負担能力並みに抑えることができれば、制度の持続可能性が高まります。
少子化はあらゆる世代に影響を及ぼします。
年齢にかかわらず広く公平に負担する観点から、財源として消費税などの増税も視野に入れた議論が求められます。