この記事では、日本の社会保障制度について解説していきます。
社会保障には「どういったものが有るのか…」なんとなくわかっているが、具体的に理解している人は少ないのではないでしょうか?
実はそれ、物凄い損なことなのです。社会保障の中身を知らなければ、貰えるはずの給付金を取りこぼしたり、必要のない保険を民間で加入してムダなお金を支出してしまうかもしれません。
社会保障を理解すれば”損”をしなくて済みます。とは言え、社会保障制度の情報は膨大です。
この記事では、社会保障制度の説明をざっくりとしていきます。
ざっくりと解説することによって社会保障制度の「種類」を簡潔に理解することができます。
各項目の詳細を知りたい方は、添付されているリンクをクリックすれば詳細ページへ行くことができます。
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社会保障制度とは
人は責任と努力によって生活を維持していますが、病気やけが、老齢や障害、失業などにより、自分の努力だけでは自立した生活を維持できなくなる場合も生じます。
このような個人の責任や努力だけでは対応できないリスクに対して、相互に連帯して支え合い、それでもなお困窮する場合には必要な生活保障を行うのが、社会保障制度の役割です。
社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障を行うものです。
生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障します。社会保障制度は、国民の生活を守るセーフティネットの機能を持っています。
また、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにします。
社会保障の種類
社会保障制度は大きく分けると下記の4つになります。
その①:社会保険
その②:社会福祉
その③:公的扶助
その④:保健医療・公衆衛生
それぞれわかりやすく説明していきます。
その①:社会保険
社会保険とは、社会保障の分野のひとつで、疾病、高齢化、失業、労働災害、介護などのリスクに備えて、事前に雇用者もしくは雇用主、あるいは両者が社会的供出をすることによって、保険によるカバーを受ける仕組みです。
社会保険は下記の5つに分けることができます。
①:医療保険
②:年金保険
③:介護保険
④:雇用保険
⑤:労災保険
それぞれわかりやすく説明していきます。
①:公的医療保険
医療保険とは、医療機関の受診により発生した入院費や手術費といった医療費について、その一部又はすべてを負担してくれる保険のことです。
日本は「国民皆保険」といって、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することになっています。
国民皆保険は、誰もが安心して十分な医療を受けることができ、なおかつ、医療費がかさんだ場合にも、その人の生活を圧迫しないようにして、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与するための制度です。
代表的な公的医療保険には、自営業者などが対象の「国民健康保険」と、民間企業に勤める会社員などを対象にした「健康保険」があります。
その他にも、公務員が入る共済組合や船員を対象とした船員保険などがあります。
②:公的年金
年金には、国民全員が加入する「国民年金」、会社員や公務員が加入する「厚生年金」などがあります。
国民年金では、保険料の納付義務があるのは20歳以上60歳未満の40年間(480ヵ月)と定められています。
よく誤解されがちですが、年金を受け取ることができるのは「老後」だけではありません。公的年金の給付の種類は、「老齢年金」だけでなく、「障害年金」と「遺族年金」の3種類があります。
「老齢年金」とは、老後を迎えた方に給付されるもので、現在の制度では原則として65歳に達したときから給付されます。
「障害年金」とは、ケガや病気などが原因で障害認定を受けた方に給付されるものです。
「遺族年金」とは、亡くなった方の遺族に対して給付されるものです。
③:公的介護保険
「介護保険制度」は2000年にスタートしました。本格的な高齢化社会を迎える日本、社会全体で高齢者の暮らしや健康、安全を保障していこうとする理念のもと誕生した制度です。
日本国民であれば40歳以上は全員保険者になり、たとえ介護サービスを受けられる高齢になったとしても、保険料を払い続けなくてはなりません。
徴収されたお金は、高齢者が介護サービスを受ける際に発生する費用に充てられ、高齢者の暮らしを支えていくための財源となります。
④:雇用保険
雇用保険とは労働者が離職した時の手当や、育児・介護休業中の給付、職業訓練を受ける際の給付を行う保険です。
雇用保険制度により、労働者の生活や雇用を安定させます。また、事業主を支援することで、雇用の拡大を図っています。
雇用保険は大きく分けると、「失業等給付」と「雇用保険二事業」の2つに分けられます。
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⑤:労災保険
労災保険とは、雇用されている立場の人が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。
正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。
公的医療保険との大きな違いは、療養にかかる費用の自己負担がない点です。
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その②:社会福祉
社会福祉制度とは、児童、母子、心身障害者、高齢者など、社会生活を送る上でハンディキャップを負った人々に対して、公的な支援を行う制度のことです。
支援を必要とする社会的弱者が心身ともに健やかに育成され、能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように支援するとともに、社会福祉は救貧・防貧の機能も果たしています。
社会福祉は下記の4に分けることができます。
①:児童福祉
②:母子及び父子並びに寡婦福祉
③:高齢者福祉
④:障害者福祉
それぞれわかりやすく説明していきます。
①:児童福祉
児童福祉とは、児童に対して行われる福祉サービスのことです。
具体的には、障害児、孤児、母子家庭の児童など、特別に支援を要するとされる児童に対する施策を中心に行われています。
また、近年児童虐待の相談件数が急増しており、この対応も、児童福祉の大きな課題の一つです。
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②:母子及び父子並びに寡婦福祉
母子及び父子並びに寡婦福祉とは、「経済的」「社会的」「精神的」に不安定な生活になりがちな母子世帯などについて援助を行い、経済的な自立と、扶養している児童の幸福を増進させるための福祉です。
寡婦福祉の制度とは、子が成人した後も、長年の子の養育による影響で健康や就業・収入面で保障が必要な寡婦には、寡婦福祉として母子家庭の母に準じた援助がなされます。
※寡婦とは、かつて母子家庭の母だった者のことです。
③:高齢者福祉
高齢者福祉とは、長年にわたって社会の進展に寄与し、貢献してきた高齢者が、敬愛され、生きがいをもって健康で安心した生活を送ることができるよう、社会全体で支えていくことを目的にされた福祉です。
ホームヘルプサービスや福祉施設の利用等、介護保険法に基づくサービスを利用するためには、あらかじめ介護の必要性や必要量についての認定(要介護認定)を受ける必要があり、市町村がその業務を行っています。
④:障害者福祉
障害者福祉とは、身体、知的発達、精神に障害を持つ人々に対して、自立を支援する社会的サービスのことです。
障害者には「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」の3つの種類があります。
誕生のときからの先天性障害、乳幼児期の病気による障害、成人になってからの障害(後遺障害)、事故による障害など原因は様々であり、重複障害の場合もあります。
その③:公的扶助
公的扶助とは、生活に困窮する人々に対して最低限度の生活を保障し、自立を助けようとする制度です。
公的扶助は下記の2つに分けることができます。
①:生活保護法
②:生活福祉資金貸付制度
それぞれわかりやすく説明していきます。
①:生活保護法
生活保護制度は、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長するための制度です。
生活保護には下記の8つがあります。
- 医療扶助 (公費負担医療)
- 生活扶助
- 教育扶助
- 住宅扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
②:生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度の貸付対象は「低所得世帯」「障害者世帯」「高齢者世帯」「失業者世帯」で、世帯単位にそれぞれの世帯の状況と必要に合わせた資金の貸付けを行います。
その④:保健医療・公衆衛生
保健医療・公衆衛生とは、人々が健康に生活できるよう様々な事項についての予防、衛生のための制度です。
公衆衛生は、「共同社会の組織的な努力を通じて、疾病を予防し、寿命を延長し、身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である」とされています。
具体的には、環境保健、疾病予防、健康教育、健康管理、衛生行政、医療制度、社会保障があげられています。
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社会保障の課題
日本の社会保障制度は世界的にみても手厚いモノになっています。
社会生活のセーフティーネット機能を持ち、脱落してしまう国民を支え、自立できる支援を行います。
手厚い半面、膨れ上がる社会保障費が問題になっています。(2020年度の国家予算の内、35%程度を社会保障費が占めています)
原因としては下記のとおりです。
- 手厚いことでコストが掛かる
- 急速な高齢化による医療費の増加
会保障給付費の内訳をみると、金額が最も大きいのは年金、医療です。福祉その他(介護、生活保護費等)は、年金や医療ほど規模は大きくはないものの、2015~2020の平均増加率は年金や医療を上回るペースで増加しています。
また、急速な高齢化に加え、急速な少子化によって働き手が減少し、税金の歳入と歳出のバランスが悪くなっていることもあります。
2020年度の国家予算では、歳出の30%以上を借金で賄っている状況です。
誰もが安心して社会生活を送れるように、恒久的な社会保障制度は必要です。
社会保障制度の維持に何が必要なのか…この問題は、現代を生きる日本人に課せられた大きな問題です。
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