社会保障

食中毒とは?食中毒の詳細をわかりやすく解説

食中毒とは?食中毒の詳細をわかりやすく解説

この記事では「食中毒」について解説していきます。


食中毒が一番起こりやすい施設は飲食店です。

つまり、自身や家族にも起こりうるということです。


食中毒に対する知識を得ておけば、もしもの時にも落ち着いて行動できるかもしれません。


この記事を読めば、食中毒の「季節変動」「原因物質」「原因食品」「原因施設」や、「食中毒の種類」を知ることができます。



食中毒とは

食中毒とは

食中毒とは、食事によって細菌やウイルス、有毒な物質を体内に取り込み、下痢や腹痛、発熱、はきけなどの症状が出る病気のことです。


一言で食中毒といっても、その内容は様々です。

食中毒の種類は大きく下記の4つに分けることができます。

  1. 細菌性食中毒
  2. ウイルス性食中毒
  3. 自然毒による食中毒
  4. その他の食中毒


食中毒は季節によって起こりやすい食中毒が決まっていたり、食前加熱が有効のものとそうでないものが存在したりします。

また、食中毒として体に現れる症状も違いますし、治療方法も異なります。


それでは一つひとつ見ていきましょう。


食中毒の季節変動

夏季(5月~10月)は細菌性食中毒、冬季(12月~3月)はノロウイルスによる食中毒が多く発生しています。


夏季に多い細菌性食中毒では、例えば、陽炎ビブリオが有名です。

陽炎ビブリオは魚の表面などに付着しており、海水温が上昇する6月~9月に増えます。

食中毒の原因物質

原因物質が判明した食中毒のうち、細菌によるものが約4割で、ウイルス(大多数がノロウイルス)の占める割合は約2割です。

また、自然毒、化学物質による食中毒は合計しても1割に満たないです。


事件数ではアニサキスが最も多いです。

ただし、アニサキスは1例報告が多いため、それを除外すれば、カンピロバクター、ノロウイルスが多く、細菌によるものではカンピロバクター、腸管出血性大腸菌、ウェルシュ菌で全体の3割を占めます。

患者数ではノロウイルスが最も多いです。


例年、自然毒による死者が発生していますが、腸管出血性大腸菌による死者もいます。

原因物質別順位(2018年)

事件数
(1,306件)
患者数
(16,665人)
死者数
(3人)
1位:アニサキス (468)
2位:カンピロバクター (319)
3位:ノロウイルス (256)
4位:植物性自然毒 (36)
5位:腸管出血性大腸菌 (32)
1位:ノロウイルス (8,475)
2位:ウェルシュ菌 (2,475)
3位:カンピロバクター (1,995)
4位:サルモネラ属菌 (640)
5位:アニサキス (478)
1位:植物性自然毒 (3)
不明 (24) 不明 (617) 不明 (0)


食中毒の原因食品

食中毒の原因食品

原因食品が判明する食中毒は、事件数は8割以上ですが、患者数は9割以上に達します。

これは患者が少数の場合には原因食品が判明しにくいのに対し、多数の患者が発した場合には原因食品が判明しやすいことにあります。


アニサキスによる事件報告が増えているため、魚介類が多くなっています。


事件数は例年、魚介類が1位ですが、近年は複合調理食品も多いです。


死者数は例年、ふぐ、キノコ類などの植物性自然毒のよるものが多いです。

原因食品別順位(2018年)

事件数
(1,119件)
患者数
(15,867人)
死者数
(3人)
1位:魚介類 (414)
2位:複合調理食品 (77)
3位:肉類およびその加工品 (65)
4位:野菜およびその加工品 (34) 
1位:複合調理食品 (2,124)
2位:魚介類 (1,209)
3位:肉類およびその加工品 (451)
4位:魚介類加工品 (420)
1位:その他 (2)
2位:野菜およびその加工品 (1)
原因食品不明 (211) 原因食品不明 (1,415) 原因食品不明 (0)


食中毒の原因施設

食中毒の原因施設

原因施設の判明率は、事件数では8~9割であり、飲食店、家庭、販売店、事業場において発生件数が多いです。


事件数は1978年までは家庭が1位でしたが、1999年以降は飲食店が1位となっています。

アニサキスによる事件報告が増えており、近年では販売店が増えています。


仕出屋、学校、事業場では1件当たりの患者数が多いです。


死者数は家庭が多いです。

原因施設別順位(2018年)

事件数
(1,142件)
患者数
(16,803人)
死者数
(3人)
1位:飲食店 (722)
2位:家庭 (163)
3位:販売店 (106)
4位:事業場 (40)  
1位:飲食店 (8,580)
2位:仕出屋 (2,682)
3位:事業場 (1,959)
4位:旅館 (1,266)
1位:家庭 (3)
原因施設不明 (188) 原因施設不明 (479) 原因施設不明 (0)

 


細菌性食中毒の種類

細菌性食中毒の種類

サルモネラ属菌食中毒

特徴 ・感染型のグラム陰性桿菌
・家畜や鳥類の腸管内の常在菌
原因食品 ・鶏卵や生肉
・ミドリガメなどの爬虫類、鼠の糞尿などとの接触
潜伏期間 ・6時間~48時間(平均12時間)
症状 ・下痢(水様便が多いが粘血便もある)
・発熱、腹痛、悪心、嘔吐
過熱予防 ・有効
治療 ・輸血、必要に応じて抗菌薬
疫学 ・事件数、患者数ともに4位


カンピロバクター食中毒

特徴 ・感染型のグラム陰性桿菌
・家畜の腸管内の常在菌
原因食品 ・生肉(特に鶏肉)、牛乳
潜伏期間 ・2日~7日(平均3日)
症状 ・腹痛、下痢(初めは水様便、重症化で粘血便)
過熱予防 ・有効
治療 ・輸血、必要応じて抗菌薬
疫学 ・事件数2位、患者数3位


病原大腸菌食中毒

特徴 ・感染型のグラム陰性桿菌
・人の腸内に常在する大腸菌のうち、下痢疾患の原因となるものを病原大腸菌と呼ぶ
・腸管出血性大腸菌(主にO157)は致死率が高く、『感染症法』の3類感染症に指定
原因食品 ・糞尿に汚染された食品
過熱予防 ・有効
治療 ・輸血、必要に応じて抗菌薬


腸炎ビブリオ食中毒

特徴 ・感染型のグラム陰性桿菌
・海水中に生息し、発症は夏季(7~9月)に多い
原因食品 ・魚介類の生食
潜伏期間 ・6~24時間
症状 ・突然の水様便と上腹部痛
・しばしば発熱、嘔吐
過熱予防 ・有効
治療 ・輸血、必要に応じて抗菌薬
疫学 ・生魚を食べる日本や、東南アジアに多い食中毒


ウェルシュ菌食中毒

特注 ・感染型のグラム陰性桿菌
・ガスの壊疽の原因菌であるが、食品中で増殖することにより食中毒の原因になる
・嫌気性の芽胞形成菌であり、芽胞は加熱調理に耐える
原因食品 ・大量調理され嫌気性条件下になりやすい食品(カレー、シチューなど)
潜伏期間 ・6~18時間
症状 ・水様便、腹痛
疫学 ・食中毒の件数は少ないが、集団発生が多い


セレウス菌食中毒

特徴 嘔吐型(毒素型) 下痢型(感染型)
・グラム陽性桿菌であり芽胞を形成する
・自然界や食品中、家畜の腸管内などに広く分布
・食品内で生産された毒素の摂取により発症 ・摂取した菌の腸管内での毒素生産により発症
原因食品 ・焼き飯、ピラフなどの米飯が多い ・スープ、プリン、肉類など多岐にわたる
潜伏期間 ・1~6時間 ・6~16時間
症状 ・悪心、嘔吐 ・腹痛、水様便
治療 ・輸血などの対症療法


黄色ブドウ球菌食中毒

特徴 ・毒素型のグラム陽性球菌
・人の皮膚、鼻腔、咽頭の常在菌であり、手指の化膿巣を介するなどして食品に移る
原因食品 ・弁当、おにぎり、学校給食、
潜伏期間 ・1~6時間
症状 ・激しい嘔吐、急激な腹痛、下痢、発熱(ー)
予防 ・切り傷、化膿巣のある人は調理しない
過熱予防 ・無効
治療 ・輸血などの対症療法


ボツリヌス菌食中毒

特徴 ・毒素型の嫌気性グラム陽性桿菌
原因食品 ・嫌気性条件下になりやすい食品
潜伏期間 ・12~36時間
症状 ・消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)
・次いで神経症状
・重篤な場合は呼吸器麻痺(致死率20~30%)
過熱予防 ・有効
治療 ・呼吸管理、抗毒素血清療法
疫学 ・例年1件以下と事件数は少ない



ウイルス性食中毒の種類

ウイルス性食中毒の種類

ノロウイルス食中毒

特徴 ・冬季に発生する食中毒のほとんどがウイルス性食中毒であり、その中でもノロウイルスが99%を占める
原因食品 ・カキなどの二枚貝
・感染者の糞便や嘔吐物への接触、飛沫による二次感染
潜伏期間 ・24~48時間
症状 ・悪心、嘔吐、水様性下痢、腹痛
予防 ・二枚貝の食前加熱
・食品取扱者の健康管理
・超器具の消毒
・手洗い
治療 ・輸血などの対処療法
疫学 ・事件数3位、患者数1位


自然毒による食中毒の種類

自然毒による食中毒の種類

毒キノコによる食中毒

特徴 ・植物性事前毒による食中毒の中で最も多い
原因食品 ・ツキヨタケが過半数
潜伏期間 ・一般的に潜伏期間は短いが、症状が現れるまでの期間が長いほど、キノコ中毒が重症化する傾向がある
症状 ・キノコに含まれる毒素により、神経の刺激症状、麻痺症状、臓器障害がみられる


  潜伏期間 症状 種類
胃腸炎型 15分~3時間 胃腸症状、重症の場合は意識レベルの低下がみられる・死亡することはほぼ無い ・ツキヨタケ
・クサウラベニタケ
脳・神経症状型 20分~2時間 急性アルコール中毒様の症状、ムスカリンによる副交感神経刺激症状がみられる ・ベニテングタケ
・ワライタケ
コレラ型 6~12時間 激しい胃腸症状と肝・腎機能障害がみられ、死亡することもある ・タマゴテングタケ
・ドクツルタケ


貝毒による食中毒

特徴 ・有害プランクトンを摂取した貝類が、その毒素成分を中腸線に蓄積して有毒化し、これを人が摂取することで食中毒が発生する
潜伏期間 ・一般に短く、麻痺性貝毒で30分程度
・下痢性貝毒で30~4時間程度
症状 ・麻痺性貝毒:神経伝達を阻害⇨神経症状、致死率は高い
・下痢性貝毒:下痢、悪心、嘔吐、腹痛、通常3日以内に回復する


ふぐ毒による食中毒

特徴 ・耐熱性の神経毒素であるテトロドトキシン(TTX)により発症
・TTXはフグ自体が合成するものではなく、食物連鎖やフグの腸内菌に由来するものです
潜伏期間 ・20分~3時間
症状 ・口、唇、舌、指のしびれ
・やがて知覚、運動神経障害をきたし、放置すれば呼吸菌麻痺により死亡する
過熱予防 ・無効
治療 ・対症療法(胃洗浄、輸血、人工呼吸器など)



その他の食中毒の種類

その他の食中毒の種類

科学性食中毒

食品の生産・加工・保存・流通・消費の過程で起きる工業薬品、農薬などの化学薬品、有害金属、その他の有害物質の混入や、食品成分の変性(油脂の変敗、ヒスタミン中毒)などによる食中毒があります。


化学物質の人体に対する毒性の現れ方は多様であり、原因物質特有の症状が発現しやすいです。

急性中毒として発症する場合がほとんどですが、蓄積して慢性中毒症状を呈する場合もあります。

真菌による食品媒介疾病

カビが生産する毒素を総称してマイコトキシンと呼び、マイコトキシンによる中毒を真菌中毒症、またはカビ中毒症といいます。

マイコトキシンの主な産生菌はアスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属のカビです。


穀物、豆類およびその加工品など炭水化物に富むものが汚染されやすいです。


真菌中毒症では、肝臓・腎臓障害、神経系や造血機能障害など毒性の発現は多彩です。

なお、腎毒性よりも肝毒性を示すものが多い。

寄生虫による食品媒介疾病

寄生虫症は野菜に付着した虫卵や、寄生虫に感染した動物を食べることなどにより感染します。


寄生虫症の予防には食前加熱が有効です。



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