この記事では、「奨学金」について解説していきます。
大学等に進学する場合、授業料等に多額のお金が必要になります。
金銭的理由により、人によっては進学を諦めてしまうかもしれません。
日本の社会保障では、それらの状況をつくらないために進学を希望する者にお金を貸与する「奨学金」が存在します。
この記事を読めば、奨学金の「種類」「対象者」「条件」などを知ることができます。
奨学金とは
奨学金とは、奨学制度に基づき学生を援助するために貸与または給付されるお金、またはその制度のことです。
独立行政法人日本学生支援機構では、大学(短期大学を含む)・大学院・高専・専修学校(専門課程)の学生に奨学金を貸与しています。
また、経済的理由により進学が極めて困難な生徒を対象として、返還の必要がない給付型の奨学金も実施しています。
高校および専修学校(高等課程)の生徒に対する奨学金貸与は、都道府県が行っています。
また、奨学金については、機構が実施するもののほか、自治体や民間団体が行うもの、私立学校が自校の学生・生徒に対して行うものなどさまざまありますが、それらについてはそれぞれの団体、学校に照会してください。
奨学金には下記の5つがあります。
- 第一種奨学金(無利息貸与型)
- 第二種奨学金(利息付貸与型)
- 入学時特別増額貸与奨学金(利息付)
- 給付奨学金
- 海外留学のための奨学金
それぞれわかりやすく解説していきます。
第一種奨学金(無利息貸与型)
対象学種
大学、短大、大学院、高等専門学校、専修学校(専門課程)。
対象者
特に優秀な学生・生徒で経済的理由により著しく就学困難であると認定された者(学種ごとに成績・家計の基準あり)。
ただし、低所得世帯については成績基準を満たさなくても対象になります。(大学院を除く)。
収入条件
家計支持者の年間給与がおよそ800万円以下であること
成績条件
高等学校の平均成績が3.5以上であること
貸与月額
学種別、設置者(国公立、私立)別、入学年、通学形態(自宅・自宅外)別によりそれぞれ下表のように定められています。
学種 | 貸与月数 | 国・公立 | 私立 | |||
自宅 | 自宅外※5 | 自宅 | 自宅外※5 | |||
大学 | 48ヶ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 54,000※2 | 64,000※3 | |
短大・専修 | 24ヵ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 53,000※2 | 60,000※3 | |
大学等通信 一面接授業期間 |
1ヶ月 | 88,000 | ||||
大学院 | 修士課程 | 24ヵ月 | 50,000 88,000 | |||
博士課程 | 36ヵ月 | 80,000 122,000 | ||||
高専 | 1~3年※4 | 36ヵ月 | 21,000 | 22,500 | 32,000 | 35,000 |
4~5年 | 24ヵ月 | 45,000※1 | 51,000※2 | 53,000※2 | 60,000※3 |
※1 20,000円または30,000円を選択
※2 20,000円、30,000円または40,000円を選択
※3 20,000円、30,000円、40,000円または50,000円を選択
※4 高等専門学校1~3年では通学形態にかかわらず貸与月額として10,000円を選択可能
※5 自宅外通学の場合でも、自宅通学の月額を選択可能
返還方法
定額変換方式(月々の返還額は貸与総額に応じて算出された定額)または所得連動返還方式(月々の返還額は前年の所得に応じてその年ごとに決定)のいずれかを選択できます。
返還期間
定額返還方式の場合は最長20年、所得連動返還方式の場合は返還が完了するまでの期間となります。
手続き・問合わせ先
各自在籍の学校になります。
返還が難しくなった場合の救済制度
病気・災害・経済困難などで返還が難しくなった場合の救済制度として、月々の返還額を減額して返還期間を延長する制度(所得連動返還方式を選択している場合は利用できません)や返還期限を猶予する制度があります。
また、条件により第二種奨学金との併用貸与を受けることもできます。
第二種奨学金(利息付貸与型)
対象学種
大学、短大、大学院、専修学校(専門課程)高等専門学校(4・5年生)。
対象者
定められた学力および家計の基準に該当している者。貸与基準は第一種奨学金よりゆるやかになっています。
貸与月額
- 下記の月額のなかから、申込者が自由に選択できます。
①大学・短大・専修学校(専門課程)・高等専門学校(4・5年生)
➝2万円~12万円(1万円刻み)
②大学院
➝5万円・8万円・10万円・13万円・15万円 - 増額貸与
希望により、私立大学の医・歯・薬・獣医学課程で最高月額(12万円)を選択した場合は4万円(医・歯学課程)・2万円(薬・獣医学課程)、法科大学院在学者で最高月額(15万円)を選択した場合は4万円または7万円の増額貸与を受けることができます。
利息
在学中は無利息とし、利率は年3%を上限となります。
申込み時に利率固定方式(貸与終了時に決定した利率で固定)または利率見直し方式(返還期間中おおむね5年ごとに利率を見直し)のいずれか一方を選択します。
増額貸与分については原則として基本月額の利率に0.2%上乗せした利率になります。
返還方式・期間
定額返還方式のみ。
貸与総額に応じて20年以内の元利均等方式で返還します。
手続き・問合わせ先
各自在籍の学校です。
第一種奨学金との併用
条件により第一種奨学金(無利息貸与型)との併用貸与を受けることができます。
また、必要に応じ貸与月額の変更が認められる場合があります。
在籍の学校の奨学金担当窓口に相談してください。
入学時特別増額貸与奨学金(利息付)
入学にかかる一時的な経費に対応するため、第1学年(編入学者の入学年次を含む)において、希望により、入学月の基本月額に10・20・30・40・50万円のなかから希望する額を増額して貸与が受けられます。
対象学種
大学、短大、大学院、専修学校(専門課程)、高等専門学校(第4・5学年編入者)。
申込資格
入学年月を貸与始期として第一種奨学金または第二種奨学金の貸付を受ける者で、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を申請して融資を受けることができなかった者(日本政策金融公庫が定める要件を満たすもの)。
利息
第二種奨学金の増額貸与分と同じ。
返還期間
貸与総額に応じて20年以内の元利均等方式で返還します。
手続き・問合わせ先
各自在籍の学校になります。
その他
入学前の貸与および入学時特別増額貸与奨学金だけの貸与は受けられません。
給付奨学金
返還の必要のない給付型の奨学金です。
高等学校等において優れた生徒であって、大学等への進学の目的および意思が明確であるにもかかわらず、経済的理由により進学が困難な生徒に対し、大学等への進学を後押しすることを目的としています。
対象学種
大学(学部)、短期大学、専修学校(専門課程)、高等専門学校(4・5年次)。
対象者
住民税非課税世帯、生活保護受給世帯または社会的擁護を必要とする人(児童養護施設退所者等)であって、一定の学力・資質要件(具体的な基準を各高校等で定めています)を満たす人。
給付月額
- 国公立の場合、自宅通学は2万円、自宅外通学は3万円
- 私立の場合、自宅通学は3万円、自宅外通学は4万円
- 社会的擁護が必要な人へは、入学時に24万円を一時金として別途支給
手続き・問合わせ先
在学している高校等の奨学金窓口に申込みます。
募集時期は学校により異なりますので在籍の学校へ問い合わせてください。
なお、申込みは大学等への進学前(高等専門学校生は4年次進級前)に行います。
その他
給付奨学金を受けられる人は、各高校等から推薦に基づいて機構が審査したうえで決定されます。
なお、奨学金の交付開始後も奨学生としての適格性の審査が毎年度行われ、翌年度の奨学金交付の可否等が決定されます。
また、貸与型の奨学金も併せて利用できます。
海外留学のための奨学金
機構が実施している海外留学のための奨学金は下記のとおりです。
1.~3.が返還義務のない給付型の奨学金、4.が貸与型(有利子)の奨学金です。
- 海外留学支援制度(学部学位取得型・大学院学位取得型)
➝ 学士、修士、の学位取得を目指し、海外の大学に留学する人を対象とした奨学金です - 海外留学支援制度(協定派遣)
➝ 日本の大学等が諸学国の高等教育機関との学生交流に関する協定等に基づいて、在籍学生を諸外国の学校に短期間派遣するプログラムを実施する場合に、プログラムに参加して海外に留学する人を対象とした奨学金です - 官民協働海外留学支援制度
➝ 官民協働で取り組む海外留学支援制度「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」によって、海外の大学等に留学する人を対象とした奨学金です - 第二種奨学金(海外・短期留学)
➝ 海外の大学および大学院の正規課程(学位取得課程)への留学や、海外の短期大学、大学、大学院への短期留学をする人を対象とした奨学金です
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