セクハラなどをして処分を受けた先生が、再び教員になることが『児童生徒性暴力防止法案』の成立によって難しくなりました。
現行の教育職員免許法では懲戒免職処分などで免許を失っても3年たてば再び取得できます。
児童生徒性暴力防止法案を全会一致で可決
過去のわいせつ行為を理由に教員の免許再交付を拒めるようにする児童生徒性暴力防止法が2021年5月28日の参院本会議で、全会一致で可決、成立しました。
教育職員免許法に特例を設け、都道府県の教育委員会が免許再交付の可否を判断できるようになりました。
早ければ1年以内に施行
法案が成立したため、一部を除き公布から1年以内に施行します。
都道府県教委が可否を判断する
議員立法は教員免許法に特例を設けます。
対象は小中高校や幼稚園、認定こども園などの教員らです。
都道府県教委が「再交付は適当」と認められる場合に与えるしくみとし、可否を判断する裁量を持てるようになります。
各教委は専門家らによる「教員免許再授与審査会」の意見を聞いて、過去の処分内容や更生状況を見極めます。
全国共通のデータベースを整備
法案でわいせつ行為などを「児童生徒性暴力等」と定義し、教員らにこうした行動を禁じる規定を創設します。
国は「児童生徒性暴力等」による免許失効者の氏名や処分理由を登録する全国共通のデータベースを整備ことになります。
無期限の免許の再取得禁止は見送り
法整備については政府も模索し、無期限で免許を再取得できなくする案などを検討していました。
しかし、憲法が保障する職業選択の自由や禁錮以上の刑を終えて10年たてば刑が消滅する刑法の規定との整合性の問題で見送った経緯があります。
再び免許を取得できるようにすることで法案成立に目途
3月に初会合を開いた与党のワーキングチーム(WT)を中心に法案をまとめました。
再び教員になるのを一律に排除するのではなく、教委の裁量で判断する仕組みであれば憲法などの規定に抵触しないと考えました。
現行制度では3年経てば再び復帰できる
現行の教育職員免許法では懲戒免職処分などで免許を失っても3年たてば再び取得できます。
処分歴を申告せずに他の自治体で採用され、再びわいせつ行為に及ぶ事例などがありました。
わいせつ行為による処分、2019年度は273人
出典:日本経済新聞社
文部科学省によると全国の公立学校で2019年度、わいせつ行為などで懲戒処分や訓告といった処分を受けたのは273人でした。
5年間で3割増えました。そして再犯率が高い現実があります。
与野党で早急な対処を求める意見が広がり、議員立法に動きました。
メモ
議員立法とは、立法府に所属する議員の発議により成立した法律の俗称。