この記事では「育児短時間勤務」について解説していきます。
「子は宝」という言葉があります。特に少子化の進む日本では、子供を産み・育てる環境を整えることが求められ、制度の整備が進んでいます。
「育児短時間勤務」はそのうちの一つです。
この記事を読めば、「短時間勤務制度の対象となる人」「育児短時間勤務の給与」「育児短時間勤務の対象期間」などを知ることができます。
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育児短時間勤務とは
育児短時間勤務とは、3歳未満の子どもを養育する従業員が希望した場合、勤務時間を短縮できる制度です。
企業は、従業員が希望した場合、原則として1日の勤務時間を「原則として6時間」とする措置を行わなければいけません。
例えば、所定労働時間が週5日、8時間の従業員であれば、週5日間を通して、始業と終業の時間を調整し、て6時間(5時間45分から6時間まで)にすることが基本となります。
「原則として6時間」とは、所定労働時間の短縮措置は、1日の所定労働時間を6時間とすることを原則としつつ、通常の所定労働時間が7時間45分である事業所において短縮後の所定労働時間を5時間45分とする場合などを勘案し、短縮後の所定労働時間について、1日5時間45分から6時間までを許容する趣旨です。
なお、1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けた上で、そのほか、例えば1日の所定労働時間を7時間とする措置や、隔日勤務等の所定労働日数を短縮する措置など所定労働時間を短縮する措置を、あわせて設けることも可能です。
短時間勤務制度の対象となる人
短時間勤務制度の対象になるには、下記のすべての条件を満たす必要があります。
- 3歳に満たない子を養育する労働者であること
- 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
- 日々雇用される者でないこと
- 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
- 労使協定により適用除外とされた労働者でないこと
労使協定により適用除外にできる労働者
労使協定とは、事業主と労働者の間で結ばれる協定のことです。
本来、上記の条件を満たせば、短時間勤務制度の対象となりますが、労使協定により短時間勤務制度の対象外にできる労働者もいます。
対象外にできる労働者は下記の通りです。
- 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずること
が困難と認められる業務に従事する労働者
3.については、例えば改正法の施行前に既に1日6時間の短時間勤務制度が導入されている場合など、短時間勤務制度を講ずることが客観的にみて困難と認められない業務については、制度の対象外とすることはできません。
育児短時間勤務の給与
厚生労働省が示す指針では、所定労働時間の短縮措置を含む休業等によって業務に従事していなかった期間を、働いていない期間として取り扱っても不利益な取扱いには当たらないとされています。
つまり、時短制度の利用によって労働時間が短くなった場合、最大、短縮された時間分までは減給が可能ということです。
給与支払いの減額の有無は、育児短時間勤務を取得する前に事前に確認しましょう。
育児短時間勤務の対象期間
原則、子どもが3歳に達するまでが対象ですが、小学校就学の始期(6歳になった日以降の最初の3月31日)のまで対象とすることが努力義務とされています。
育児短時間勤務中でも残業はできる
会社が時短勤務中(=子どもが3歳までの間)の従業員に残業をさせることについて、問題はありません。
短時間労働者が会社に対して残業をしないよう請求した場合は法的に問題がありますが、請求していない場合、残業を求めることは可能です。
不利益取扱いの禁止
短時間勤務制度の適用を申し出たことや、制度の適用を受けたことを理由として、解雇、雇い止め、減給等の不利益な取扱いを行うことは、育児・介護休業法で禁止されています。
例えば、短時間勤務中の現に働かなかった時間について賃金を支払わないことや、賞与の算定に当たり勤務日数を考慮する場合に、短時間勤務制度により短縮された時間分を算定基礎に含めないことは不利益な取扱いには該当しませんが、短縮された時間分を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いに当たると考えられます。
育児短時間勤務では手当が減る場合もある
短時間勤務制度を利用している方の中には、基本給のほかに支払われていた「手当がつかなくなった」という人もいます。
手当の中でも、特殊な職務に就いた場合などに支給される「職務手当」を外している企業は多くあります。
しかし、基本給だけでなく、手当の不支給が不利益な取扱いに該当しないかは検討の余地があります。
育児時間と併用できる
時短勤務制度と育児時間の請求は、利用目的が異なるため併用できます。
育児短時間勤務とは、3歳未満の子どもを養育する従業員が希望した場合、勤務時間を短縮できる制度です。
時短勤務制度の目的は、「仕事と子育ての両立をしやすくし、労働者の減少を食い止めること」です。一方で育児時間は、「働くお母さんと赤ちゃんを守ること」が目的なので、時短勤務制度と利用目的は重ならず、併用が可能となります。
時短勤務制度と育児時間の併用を認めないという企業もありますが、これは違法になります。
短時間勤務制度の申請方法・手続き
法律では、育児時間の具体的な手続については規定されていません。よって、申請や手続きは労使間でのみ行われます。
各職場で定めた書式や口頭で行います。「制度の利用予定日の1か月前まで」に提出する形が多いです。
企業によっては3歳以降も短時間勤務ができる
育児・介護休業法では、3歳以降についても育児と仕事の両立を支援する制度の設置を事業主の努力義務としています。
そのため、企業によっては3歳以降も短時間勤務ができるようになっています。
厚生労働省の調査によると、育児短時間勤務の最長利用期間は「3歳に達するまで」とする事業所がもっとも多く、39.0%でした。
また、「小学校就学の始期に達するまで」が32.5%とおよそ3分の1を占めました。中には「小学校卒業まで」や「小学校卒業後も利用可能」といった事業所もありました。
短時間勤務制度を導入している会社の具体例
トヨタの場合
トヨタ自動車も育児支援制度を積極的にとり入れている企業の一つです。トヨタ自動車では、男性、女性を問わず、ライフプランに合わせたキャリア形成を支援しています。
トヨタ自動車では、子が小学校を卒業するまでの間、4時間、6時間、7時間労働の中から選び、短時間勤務をすることができます。
介護の場合もこの時間から選ぶことになりますが、要介護状態の家族一人につき3年を越さない範囲で取得できるという規定が設けられています。
全日空の場合
全日空では、育児・看護休暇や短日数勤務制度、短時間勤務制度など、さまざまな育児のための支援制度を設けています。
たとえば、育児短時間勤務では子どもが9歳になるまでの期間、1日の所定労働時間を5~6時間まで短縮することができます。
また、育児短日数勤務を利用すれば、勤務日数を約5割、約7割、約8割のいずれかから選択できます。これにより、月により変動はありますが、月間の勤務日数を10~16日程度まで減らすことも可能です。
働く女性をめぐる問題点
妊娠・出産を契機に7割が退職
厚生労働省の第1回21世紀出生児縦断調査では、子どもが1人の女性の場合、出産する1年前には仕事を持っていた人(有職者)のうち約7割が、出産6か月後には無職となっています。
出典:内閣府
また、その後の母親の就業状況をみると、女性の有職率は出産半年後25%に対して4年後には46.8%と上昇しているが、このうちパート・アルバイトの割合が22.2%と常勤(15.9%)よりも高くなっています。
このように、妊娠・出産を機に仕事と子育ての二者択一を迫られるとともに、いったん離職すると、パート・アルバイトに比べ、常勤での再就職は少ない状況にあります。
出産前後で仕事を辞める理由
日本労働研究機構の「育児や介護と仕事の両立に関する調査」によると、出産前後で仕事を辞める理由としては、「家事、育児に専念するため、自発的にやめた」(52.0%)が最も多いが、「仕事と育児の両立の難しさでやめた」(24.2%)と「解雇された、退職勧奨された」(5.6%)となっており、約3割が両立環境が整わないこと等を理由に辞めています。
また、両立が難しかった具体的な理由としては、「自分の体力がもたなそうだった」(52.8%)、「育児休業をとれそうもなかった」(36%)、「保育園等の開所時間と勤務時間が合いそうもなかった」(32.8%)、「子供の病気等で度々休まざるを得ないため」(32.8%)など、職場に両立支援制度があっても、実際には利用しにくい状況があることを示唆する回答も多いです。
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