失業保険(雇用保険)の基本手当を受給中、または受給を目指いている場合であってもアルバイトをすることは可能です。
ただし、制度をよく理解しないままアルバイトをしてしまうと、基本手当を減額されたりして、結果的に損をしてしまいます。
この記事を読めば、失業保険を受給中にアルバイトをするなら知っておくべき5つのことを理解できます。
給付制限中ならアルバイトの制限は緩い
失業保険の基本手当を受けるまでの流れは、簡単に説明すると下記のようになります。
申請
⇩
待期期間(7日間)
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給付制限期間(2ヵ月)
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基本手当の支給
正当な理由がないのに、自己都合で退職した場合や、正当な理由がないのにハローワークの職業指導を受けることを拒んだ場合には、失業手当の給付が一定期間制限されます。
これを給付制限といいます。
失業手当の受給中と異なり、給付制限中のアルバイトについては、ハローワークはそれほど厳格な態度をとっていません。
そもそも、ハロワークが受給期間中のアルバイトに目を光らせているのは、働きながら、同時に失業保険を受け取るという不正受給を防止するためです。
しかし、手当の支給が行われない給付制限中は、そのような不正受給が問題になることはありませんし、失業者の生活の問題もあります。
そのため、ハロワークとしてもアルバイトを一切認めないという厳しい対応は取りにくいのです。
詳細は所轄のハローワークに確認しましょう
短期アルバイトをした方が得なこともある給付制限中のアルバイトをどの程度認めるかは、ハローワークによって異なります。
一番確実なのは、待期期間の7日間が終わった時点で、管轄のハローワークに問い合わせることです。
問い合わせる内容は下記の3つになります。
- 給付制限中にアルバイトが可能なのか
- どれくらいの範囲(月に何日、週に何時間)で可能なのか
- どのように申告をするのか
確認したら、ハロワークから聞いた条件で勤務できるアルバイトを探します。
フルタイムのアルバイトを毎日するのは難しいかもしれませんが、短期アルバイトであれば認められる可能性は高いです。
再就職しても失業手当の受給権は消滅しない場合もある
給付制限中にフルタイムのアルバイトを毎日すると、「再就職」したものとして扱われる可能性はあります。
給付制限中に再就職してしまうと、失業手当の受給権が消滅してしまうと誤解している人が多いですが、実は違います。
手当の支給が一時的に中止されるだけで、受給権が無くなるわけではありません。
そのため、1年間の受給期間中に、再就職してすぐに退職すれば、最初の退職時に確定した所定給付日数分の失業手当をそのまま受け取ることができます。
この仕組みを利用して、給付制限中にずっと長期アルバイトをするのと同時の効果を得ることも可能です。
「失業手当」と「アルバイトの給与」を上手に受け取る方法
失業保険の基本手当を受けるまでの流れは、簡単に説明すると下記のようになります。
申請
⇩
待期期間(7日間)
⇩
給付制限期間(2ヵ月)
⇩
基本手当の支給
上記のように、基本手当の受給には2ヶ月以上の期間を要します。
この2ヶ月間にアルバイトをすれば、「失業手当」と「アルバイトの給与」を上手に受け取ることができます。
まず、待期期間が満了したら、すぐにアルバイトを探して働き始めます。
勤務を開始したら、勤め先の会社に採用証明書を発行してもらい、それをハローワークに提出します。
就職により、失業手当の支給は中止されますが、その後、本来の給付制限期間が満了する直前まで働いて、その仕事を辞めます。
その際に、勤め先から退職証明書(雇用保険の加入者は離職票)をもらい、それをハローワークに提出します。
この場合、給付制限期間経過後に当初の失業手当を受給することが認められます。
上記のように、失業手当については、給付制限期間中、あるいは給付期間中に就職しても、以前に取得した失業手当の給付日数が直ちに消滅してしまうという仕組みにはなっていません。
ただし、アルバイトなどの就労をする前に受給権が存続する場合と消滅する場合については、あらかじめハロワークで確認しておきましょう。
失業保険を受給中にアルバイトした時の基本手当
失業期間中の強い味方となる失業給付の基本手当は、失業しているそれぞれの日について、失業状態にあると認定されてはじめて受けられるものです。
失業保険の受給中は、アルバイトや内職をしてはいけないと誤解している人がいます。
しかし、一定の日数、時間内での勤務であり、それをしっかりとハローワークに申告すれば、アルバイトや内職は可能です。
では、失業期間中に、アルバイトや内職をした場合、給付はどうなるのでしょうか。
ハローワークでは、働いた程度によって、下記の2種類に分けられます。
- 就業または就労
- 内職または手伝い
就業または就労とは、事業主に雇用され、1日の労働時間が4時間以上である場合をいいます。
なお、契約期間が7日以上であって、週の所定労働時間が20時間以上、かつ、週の就労日が4日以上の場合には、実際に就労していない日を含めて就労しているものとして取り扱います。
一方、内職または手伝いとは、1日の労働時間が4時間未満の場合をいいます。
これには、事業主の雇用された場合以外にも、自営業を営むこと、自営業の準備、請負・委任による労務提供、内職、ボランティア活動も含まれます。
なお、内職または手伝いをしたことによって収入を得ていなくてもハローワークへの申告は必要です。
また、1年を超えて継続して雇用された場合には、再就職として扱われ、以降の失業保険を支給されません。
就業または就労をした場合、基本手当はどうなるのか
受給期間中に就業(就労)をする場合には、就業手当の支給の有無に注意する必要があります。
就業手当は、受給期間中にアルバイトやパート等に就いた人に、それらの給料とは別に、手当を支給する制度です。
「給料の他に手当がもらえる」と聞くと、得をするのではないかと思うかもしれませんが、そうではありません。
基本手当に3割がもらえるといっても、上限額は1,800円程度です。しかも、就業手当を受け取ると、基本手当を全額受け取ったとみなされます。
その結果、アルバイトをした日数分の手当が先送りされることはなく、所定給付日数から完全に消滅してしまうのです。
つまり、1,800円程度の就業手当をもらうために、基本手当の日額数千円が受け取れなくなり、損をすることになります。
内職または手伝いをした場合、基本手当はどうなるのか
受給期間中に、内職または手伝いをした場合は、基本手当と内職などの給料の両方を受け取ることができます。
しかし、内職などの給料が高額になり一定の金額を超える場合には、基本手当が減額になることや、基本手当の支給が先送りになることがありますので、注意が必要です。
具体的には下記のように計算します。
$$①(収入-控除額)+基本手当日額≦賃金日額の80%$$
上記の場合、内職などの収入が少額のため、基本手当は全額支給されます。
$$②(収入-控除額)+基本手当日額>賃金日額の80%$$
上記の場合、賃金日額の80%を超えた金額が基本手当から減額されます。
減額分は、基本手当の支給が先送りにならず、完全に消滅してしまいます。
$$③(収入-控除額)≧賃金日額の80%$$
上記の場合、基本手当は全額不支給となります。
そして、この分の手当の支給は先送りになり、受給期間内であれば後から満額受け取ることができます。
なお、計算式の控除額は1,300円前後で毎年8月に改定されます。
ちなみに、受給期間中のアルバイトや内職は、「失業状態」にある人が、就職活動の合間に行う家計補助的な労働として認められているものです。
そのため、就職活動をまったくしないで、毎日、内職ばかりしていると、「失業状態にない」とハローワークから判断されるおそれがあります。
そうなると、失業手当の支給が停止されますので注意してください。
アルバイトするならハロワークに申告する
アルバイトするならハロワークに申告する必要がります。
アルバイトとして働く申請をせずに失業保険を受給した場合、不正受給と見なされ、罰則を科されることになります。
- 〈支給停止〉
不正受給と判断された日から支給停止となり、失業保険を受け取ることができなくなります。 - 〈返還命令〉
返還命令を受けた場合、失業保険の支給停止に加えて、これまでに受け取った分をすべて返還しなければなりません。 - 〈納付命令〉
納付命令を受けた場合、返還命令で返金するお金とは別に、それまでに受け取った失業保険の2倍の金額を納付しなければなりません。
返還命令や納付命令を受けた場合、すぐに支払う必要があり、さらに不正受給と見なされた日からの延滞金も発生します。
このように不正受給は厳重に処罰されるため、アルバイトや内職、手伝いなどをする際は、ハローワークにきちんと申告しておくことが大切です。