令和時代に現れた、新たな社会問題ともいえる「同居孤独死」をご存じでしょうか?
孤独死という言葉は聞いたことがあると思いますが、これと似たようなことで、同居している人に亡くなったことに気付かれず、しばらくの間放置されることです。
高齢者の2人世帯が増加している現代の新たな社会問題と言えそうです。
同居孤独死とは?
同居孤独死とは、残された家族が認知症か寝たきりのままのため、他の家族が死亡していても外部に知られるまでに4日以上かかることを指します。
日本政府は同居孤独死の実体を把握できていない
家族など同居者がいるのに死亡後すぐに発見されない「同居孤独死」が、2017~19年の3年間で東京23区と大阪市、神戸市で550人を超えたことが分かりました。
同居者が認知症や寝たきりのため、死亡を周囲に伝えられない例があるほか、介護していた人に先立たれた事例もあります。
全国的な調査はなく、実態はより深刻な可能性が高いです。
現状、日本政府は同居孤独死の実体を把握できておらず、老々介護世帯などの異変を素早く察知する仕組みづくりが急務です。
日本経済新聞による調査
東京23区と大阪市、名古屋市、神戸市には事件性の低い遺体の死因を調べる「監察医制度」があります。
名古屋市を除く自治体は同居者がいるのに4日以上発見されなかった事案を集計しています。
日本経済新聞は各自治体に集計内容を取材し「同居孤独死」としてまとめた。
東京都監察医務院や大阪府監察医事務所などによると、17~19年の同居孤独死は東京23区が448人、大阪市が90人、神戸市が14人で合計552人に上回りました。
統計が残る東京23区では07~09年が277人で、10年で約6割増加した計算です。
原因の約3割が認知症による発見の遅れ
大阪市の発表によると、死亡の発見が遅れた要因として、同居者が認知症だった事例が28人で約3割を占めました。
同居者が寝たきりや障害を抱えていたケースも10人おり、介護していた同居者が先に亡くなり、生活が立ちゆかなくなって命を失った人もいたそうです。
こうした事例は20年以降も後を絶ちません。
11月に大阪市旭区の住宅で発見された80代男性と60代男性の親子の遺体は、推定で死後約1~2週間経過していました。
死因はいずれも低栄養症による衰弱死
大阪府警によると、死因はいずれも低栄養症による衰弱死でしたが、冷蔵庫には食料が残っていたそうです。
近所の男性の話では父親は数年前から認知症を患い、親子に近所付き合いはほとんどなかったといいます。
日本の高齢者の現状
厚生労働省によると、一人暮らしをする高齢者は19年に全国で736万9千世帯あり10年から200万世帯以上増えました。
一方で、高齢者を含む2人暮らし世帯も増加しています。
どちらかが65歳以上の夫婦2人暮らしの世帯は10年に619万世帯でしたが、19年に827万世帯となりました。
同居孤独死を防ぐ民生委員の不足
地域の見守り活動を支えるのは各地の民生委員です。
しかし、高齢化と新型コロナウイルスの影響が重なり、立て直しを迫られています。
19年度の全国の民生委員の改選時の定数は23万9682人で充足率は約95%に達していますが、再任率が68・6%と高く、新たな担い手が十分に育っていないという問題があります。
新型コロナの影響で家庭訪問も難しい状況なのです。
大阪市の民生委員は「マンパワーが限られ、一人暮らし高齢者のケアを優先せざるを得ない。同居者がいる世帯に気を配るのは難しい」と話します。
全国的な調査。実態把握が求められる
関西学院大の牧里毎治名誉教授(地域福祉学)は、同居孤独死が500人を超えたことについて「全国的な調査はなく、氷山の一角だ」とみる。「老々介護など高齢者の2人暮らしは今後も増える。世話をしている1人が体調を崩すと、『共倒れ』に陥るリスクがある」と指摘しています。