この記事では「介護(補償)給付」について解説していきます。
重度の障害を負うことになると介護が必要な状態になります。
そうなると、障害年金などだけでは生活していくことが困難なため、その他にも給付が必要になります。
「介護(補償)給付」は介護が必要な重度の障害者に現金を給付する制度です。
この記事を読めば介護(補償)給付の「給付額」「給付要件」「給付期間」などを知ることができます。
介護(補償)給付とは
介護(補償)給付は、業務上または通勤途上の傷病により重度の障害(障害等級1級および2級の精神神経・胸腹部臓器の障害)にあって、その障害のために常時または随時の介護を必要とし、現に介護を受けている場合に支給されます。
介護(補償)給付は労災保険により給付されます。
支給要件
- 一定の障害の状態に該当すること。
➝ 介護(補償)給付は、障害の状態に応じ、常時介護を要する状態と随時介護を要する状態に区分されます。常時介護を要する障害の状態は、下記のとおりです。
該当する方の具体的な障害の状態 | |
常時介護 | ・精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、常時介護を要する状態に該当する(障害等級1級3・4号、傷病等級第1級1・2号 ・両目が失明するとともに、障害または傷病等級第1級・第2級の障害を有する ・両上肢および両下肢が亡失または用を廃した状態にある |
随時介護 | ・精神神経・胸腹部臓器に傷害を残し、随時介護を要する状態に該当する(障害等級第2級2号の2・2号の3、傷病等級第2級1・2号) ・障害等級第1級または傷病等級第1級に該当し、常時介護を要する状態ではない |
- 「障害(補償)年金」・「傷病(補償)年金」の障害等級1級の人すべてと、2級の精神神経・胸腹部臓器に障害を残す人が対象です。
- 現に介護を受けていること。
➝ 民間の有料の介護サービスなどや親族または友人・知人により、現に介護を受けていることが必要です。 - 病院または診療所に入院していないこと
- 介護老人保健施設、介護医療院、障碍者支援施設(生活介護を受けている場合に限る)、特別養護老人ホームまたは原子爆弾被爆者特別養護ホームに入所していないこと
※これらの施設に入所している間は、施設において十分な介護サービスが提供されているものと考えられることから、支給対象とはなりません。
給付期間
要件を満たしている間、請求に基づき支給されます。なお、請求は 1ヶ月単位となります。
問合わせ先
問合わせ先は、管轄の労働基準監督署になります。
介護(補償)給付の給付額
介護(補償)給付の給付は「常時介護」の場合と、「随時介護」の場合とで大きく異なります。
常時介護の場合
- 親族または友人・知人の介護を受けていない場合には、介護の費用として支出した額(ただし、165,150円[166,950円]を上限とします)が支給されます。
- 親族または友人・知人の介護を受けているとともに、
➝ 介護の費用を支出していない場合には、一律定額として70,790円[72,990円]が支給されます。
➝ 介護の費用を支出しており、その額が70,790円[72,990円]を下回る場合には、一律定額として、70,790円[72,990円]が支給されます。 - 介護の費用を支出しており、その額が70,790円[72,990円]を上回る場合には、その額が支給されます。(ただし、165,150円[166,950円]を上限とします)
随時介護の場合
- 親族または友人・知人の介護を受けていない場合には、介護の費用として支出した額が支給されます。(ただし、82,580円[83,480円]を上限とします)
- 親族または友人・知人の介護を受けているとともに、
➝ 介護の費用を支出していない場合には、一律定額として35,400円[36,500円]が支給されます。
➝ 介護の費用を支出しており、その額が35,400円[36,500円]を下回る場合には、一律定額として、35,400円[36,500円]が支給されます。
➝ 介護の費用を支出しており、その額が35,400円[36,500円]を上回る場合には、その額が支給されます。(82,580円[83,480円]を上限とします)
介護(補償)給付に該当する障害の状態
障害等級 | 障害の状態 |
1級 | ・両眼が失明したもの ・咀嚼及び言語の機能が失われたもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・両上肢をそれぞれひじ関節以上で失つたもの ・両上肢が用をなさなくなつたもの ・両下肢をそれぞれひざ関節以上で失つたもの ・両下肢が用をなさなくなつたもの |
2級 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
関連記事
・【障害等級表】障害等級ごとの障害の状態をすべて解説【障害認定基準】
手続き
介護(補償)給付を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、「介護補償給付・介護給付支給請求書」を提出します。
なお、傷病(補償)年金の受給者および障害等級第1級3号・4号または第2級2・2号の3に該当する方については、診断書を添付する必要はありません。
また、継続して2回目以降の介護(補償)給付を請求するときにも、診断書は必要ありません。
介護(補償)給付の請求は 1ヶ月ごとが一般的ですが、3ヶ月分をまとめて請求しても差し支えありません。
ダウンロード用(OCR)様式
障害補償給付支給請求書などダウンロード(厚生労働省)
(リンク先の「介護(補償)等給付関係」のところにあります)
請求書記入例
介護(補償)等給を請求するときの請求書の記入例は下記のとおりです。
出典:厚生労働省
通勤災害の場合の請求書の記入例
通勤災害の場合の請求書の記入例は下記のとおりです。
介護(補償)等給の請求に関する時効
介護(補償)等給は、介護を受けた月の翌月の1日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。
-
【まとめ】業務上・通勤途上の事故に関する補償をすべて解説
災害補償制度は、労働者(職員等)の業務上(公務・職務上)や通勤途上の病気、ケガ、障害および死亡に対して補償給付を行うとともに、労働者(職員等)の福祉に必要な事業を行うことを目的として、民間労働者につい ...
続きを見る