この記事では、公的医療保険の「家族出産育児一時金」を解説していきます。
家族出産育児一時金とは、扶養家族が出産したときにお金を貰える社会保障のことですが、一口に「家族出産育児一時金」と言っても、加入している公的医療保険によって補償内容に若干の違いがあります。
※日本の公的医療保険は、加入者対象別に5つに分かれています。
この記事を読めば、加入している医療保険ごとによる、「給付額」「支給方法の選択」「支給手続き」「その他の有益な情報」を知ることができます。
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家族出産育児一時金とは
家族出産育児一時金とは、加入者本人の扶養家族が出産したときに約50万円が支給される社会保障です。
出産
補償の対象になる”出産”とは、妊娠85日(4か月)以降の出産のことです。出産・死産・流産・早産・人工妊娠中絶などの違いは問われません。
なぜ家族出産育児一時金というカテゴリーが有るのか…と疑問に思う方もいるかもですが、
出産そのものは、正常な状態であれば病気としては扱われませんので、いわゆる保険の適用はありませんが、その代わりに家族出産育児一時金が支給されるのです。
また、出生児が2人以上の時には、その数により倍数加算されます。
産科医療補償制度
産科医療補償制度は、妊産婦が安心して産科医療を受けられるように分娩機関(病院、診療所、助産施設など)が加入する制度で、平成21年1月に創設されました。
制度に加入する医療機関などは1分娩ごとに、掛金1万6000円を負担することになっており、この掛金分が出産費用に上乗せさえると見込まれることから、制度に加入する医療機関などで出産(在胎週数22週以上の出産に限る)した場合は、そうでない場合より出産育児一時金が1万6000円多くなっています。
要約すると
産科医療補償制度に加入している医療機関で出産(在胎週数22週以上の出産に限る)した場合の支給額は、50万円。
それ以外の場合の支給額は48万8,000円。
家族出産育児一時金の支給方法
支給方法
- 直接支払制度
- 受取代理制度
- 保険者に請求
家族出産育児一時金の支給方法ですが、基本的には「直接支払制度」または「受取代理制度」の方法ですが、本人が希望した場合や海外で出産した場合は「保険者に請求」の方法で支給されます。
1.直接支払制度
直接支払制度は、出産にかかるまとまった出産費用を現金で用意する負担を減らすため、家族出産育児一時金を出産費用の支払いに直接充てられるようにするものです。
家族出産育児一時金が保険者(全国健康保険協会、健康組合、共済組合等、市区町村、国保組合)から医療機関等に直接支払われます。
そのため、本人は出産費用が出産育児一時金の額を超えた場合に超えた分を窓口で支払えば済むことになります。
また、出産費用が家族出産育児一時金の額の範囲内で収まった場合には申請により差額が本人に支給されます。
2.受取代理制度
受取代理制度は、直接支払制度を導入していない小規模な医療機関や助産施設などが、本来は加入者本人が受け取るべき家族出産育児一時金を本人に代わって受け取るものです。
この制度は、制度の導入を厚生労働省へ届け出た施設でのみ、出産予定日まで2ヵ月以内の人が利用できます。
窓口での差額負担については、直接支払制度と同様です。
家族出産育児一時金に額より出産費用の方が低額の場合は、その差額が本人に支給されます。
3.保険者に請求
保険者に請求ですが、家族出産育児一時金が出産後に本人に現金で支給されます。
ただしこの場合は、医療機関等の窓口において出産費用の全額を自身でいったん支払う必要があります。
医療保険の種類による違い
加入している公的医療保険によって補償内容に若干の違いがあります。
まず、自身や家族が加入している公的医療保険の種類を確認しましょう。
保険の種類 | 加入者 | |
健康保険 (一般被保険者) |
主に中小企業の従業員およびその家族 | |
大企業が単独、または同業同種の中小企業の従業員およびその家族 | ||
健康保険 (日雇特例被保険者) |
日々雇い入れをされる労働者 | |
船員保険 | 一定規模以上の客船、貨物船、漁船などで働く船員およびその扶養家族 | |
共済組合等 | 国家公務員共済組合 | 中央官庁やその所管する独立行政法人、国立大学などで働く国家公務員およびその家族 |
地方公務員共済組合 | 都道府県や市区町村の職員、公立学校、教育委員会、警察などで働く、公務員およびその家族 | |
私立学校教職員共済 | 私立学校法に定められた学校法人などで働く教職員など及びその家族 | |
国民健康保険 | 上記の保険に加入していない全ての国民を対象 | |
後期高齢者医療 | 全ての75歳以上の人(65歳~75歳未満で一定の障害があると認定を受けた人) |
出産育児一時金にかかる分類は下記の5つになります。
- 健康保険(一般被保険者)
- 健康保険(日雇特例被保険者)
- 船員保険
- 共済組合等
- 国民健康保険
それぞれわかりやすく説明していきます。
1.健康保険(一般被保険者)
給付額
1児につき50万円(産科医療補償制度に加入の医療機関等で出産した場合)。ただし、在胎週数22週以降の出産に限ります。
上記以外の場合は48万8,000円。
支給方法の手続き
直接支払制度の場合
退院までの間に、医療機関等に被保険者証を提示し、出産育児一時金の申請・受け取りに係る合意文書を交わします。
出産育児一時金の額より出産費用の方が低額の場合は、事業所所在地の全国健康保険協会都道府県支部、または加入する健保組合にその差額を請求します。
その際、出産一時金内払金支払依頼書・差額申請書など全国健康保険協会、県保組合所定の様式に、退院時に医療機関等から交付される出産費用の領収書・明細書の写し等を添付します。
(全国健康保険協会の場合、協会から差額分請求の案内が届いた後に申請する場合は添付資料の必要はありません)
また、健保組合によっては、差額が自動的に支給されますので、加入する健保組合に確認してください。
受取代理制度の場合
出産育児一時金等支給申請書(受取代理制度)に医療機関等の記名・押印その他必要事項の記入を受ける。
⇩
事業所所在地の全国健康保険協会都道府県または加入する健保組合へ。
申請は出産予定日の2ヵ月前以降になったら行います。
保険者に請求する場合
出産一時金支給申請に医師等の証明書、退院時に医療機関等から交付される合意文書の写しおよび出産費用の領収・明細書の写しを添付
⇩
事業所所在地の全国健康保険協会都道府県または加入する健保組合へ。
その他の情報
健保組合の場合には、このほかに付加給付が支給される場合があります。
加入する健保組合に確認してください。
2.健康保険(日雇特例被保険者)
給付額
1児につき50万円(産科医療補償制度に加入の医療機関等で出産した場合)。ただし、在胎週数22週以降の出産に限ります。
上記以外の場合は48万8,000円。
支給方法の手続き
直接支払制度の場合
退院までの間に医療機関等に健康保険被保険者手帳を提示し、出産育児一時金の申請・受け取りにかかる合意文書を交わします。
出産育児一時金の額より出産費用の方が低額の場合は住所地または居住地の全国健康保険協会都道府県支部にその差額を支給できます。
その際、出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書に、退院時に医療機関等から交付される出産費用の領収書・明細書の写し等を添付します。
(差額分請求の案内が届いた後に申請する場合は添付資料は必要ありません)
受取代理制度の場合
出産育児一時金支給申請書(受取代理用)に医療機関等の記名・押印その他必要事項の記入を受ける
⇩
住所地または居住地の全国健康保険協会都道府県支部へ。
申請は出産予定日の2ヵ前月以降になったら行います。
保険者に請求する場合
出産育児一時金支給証明書に医師等の証明書、退院時に医療機関等から交付される合意文書の写しおよび出産費用の領収・明細書の写し、健康保険被保険者手帳を添付
⇩
住所地または居住地の全国健康保険協会都道府県支部へ。
その他の情報
加入者本人の保険料の納付状況によっては支給の対象にならないこともあります。
全国健康保険協会都道府県支部または協会が事務を委託した市町村に、被保険者手帳を提示し確認してください。
3.船員保険
給付額
1児につき50万円(産科医療補償制度に加入の医療機関等で出産した場合)。ただし、在胎週数22週以降の出産に限ります。
上記以外の場合は48万8,000円。
支給方法の手続き
直接支払制度の場合
退院までの間に医療機関等に被保険者証を提示し、出産育児一時金の申請・受取にかかる合意文書を交わします。
出産育児一時金の額より出産費用の方が低額の場合は、全国健康保険協会都道府県支部にその差額を請求します。
その際、出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書に、退院時に医療機関等から交付される出産費用の領収書・明細書の写し等を添付致します。
(差額請求の案内が届いた後に申請する場合は添付資料は必要ありません)
受取代理制度の場合
出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)に医療機関等の記名・押印その他必要事項の記入を受ける
⇩
全国健康保険協会船員保険部へ。申請は出産予定日の2ヵ月前以降になったら行います。
保険者に請求する場合
出産育児一時金支給申請書に医師等の証明書、退院時に医療機関等から交付される合意文書の写しおよび出産費用の領収・明細書の写しを添付
⇩
全国健康保険協会船員保険部へ。
4.共済組合等
給付額
1児につき50万円(産科医療補償制度に加入の医療機関等で出産した場合)。ただし、在胎週数22週以降の出産に限ります。
上記以外の場合は48万8,000円。
支給方法の手続き
直接支払制度の場合
退院までの間に医療機関等に組合員証を提示し、出産費の申請・受取にかかる合意文書を交わします。
出産費の額より出産費用の方が低額の場合は、加入する共済組合にその差額を請求します。
その際、出産費用差額請求書など共済組合所定の様式に、退院時に医療機関等から交付される出産費用の領収・名産所の写し等を添付して、加入する共済組合に提出します。
日本私立学校振興・共済事業団の加入者の場合は差額が自動的に支給されます。
受取代理制度の場合
出産費用支給申請(受取代理用)など共済組合等所定の様式に医療機関等の記名・押印その他必要事項の記入を受けます。
⇩
加入する共済組合等へ。
申請は出産予定日の2ヵ前月以降になったら行います。
保険者に請求する場合
出産費請求書に医師等の証明書、退院時に医療機関等から交付される合意文書の写しおよび出産費用の領収・明細書の写しを添付します。
⇩
加入する共済組合等へ。
その他の情報
共済組合等により、このほかに付加給付が支給される場合があります。
加入する共済組合等に確認してください。
国民健康保険の場合、手当は支給されない
家族出産育児一時金をもらうためには勤務先で社会保険に入っている必要があります。
そのため、国民健康保険(国保)に加入している場合は家族出産育児一時金の支給はありません。
なお、出産に関わる公的な補助には家族出産育児一時金とは別に「出産育児一時金」というよく似た制度があります。
こちらは国民健康保険に加入している場合も受け取ることができます。
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