この記事では、「障害者が自立に必要な訓練を受けられる訓練等給付」について解説していきます。
障害者が自立した生活を送れるようになるのは、本人にとっても社会にとっても喜ばしいことです。
人が自立するということは、「毎日の家庭生活、社会的生活に必要な動作・行動が全て自主的に行え、生きていくのに必要なお金を得るための就労活動も支障なく実施できている状態」を指します。
つまり、自立とは、「他者の援助を受けないで、自分の力で身を立てること」といえます。
人の手を必要とする障害者が身の回りのことを自身で出来るようになること、就労できなかった障害者が賃金を稼ぎ納税をするようになります。
訓練等給付は納税者にとっても歓迎される制度です。
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訓練等給付とは
訓練等給付とは、障害者が自立に必要な訓練を受けたいときに支給される制度です。
地域で自立した生活を行うために必要な知識、技能等を身につけるためのサービスが「訓練等給付」として受けられます。
対象者
訓練等給付の対象者は、自立のための訓練等を必要とする障害者です。
問合わせ先
問合わせ先は、居住の市区町村役場になります。
サービス内容
訓練等給付で受けられるサービスは下記の7種類です。
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 宿泊型自立訓練
- 就労移行支援
- 就労継続支援(A型・B型)
- 就労定着支援
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
それぞれわかりやすく解説していきます。
自立訓練(機能訓練・生活訓練)
自立した日常生活または社会生活ができるよう、一定期間、身体機能または生活能力の向上のために必要な訓練を行います。
宿泊型自立訓練
一定期間、夜間の居住の場を提供し、日中活動から帰宅後に生活能力等の維持・向上のための訓練を行うとともに、地域移行に向けた支援等を行います。
就労移行支援
一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を行います。
就労継続支援(A型・B型)
一般企業での就労での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識および能力の向上のために必要な訓練を行います。
就労定着支援
一般就労に移行したが生活面に課題が生じている障害者に対し、企業や関係機関等との連絡調整等、課題解決に向けた必要な支援を行います。
自立生活援助
集団生活から一人暮らしに移行した障害者に対し、一定期間、定期的な巡回訪問や随時の相談・要請への対応を行い、本人の意思を尊重したい地域生活を支援します。
共同生活援助(グループホーム)
夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。
平成26年4月からは、共同生活介護(ケアホーム)がグループホームに統合され、入浴、排泄、食事の介護等も行っています。
重度や高齢の障害者に常時の支援を行う日中サービス支援型もあります。
利用者が負担する金額
利用者は受けるサービスに係る費用の一定額を自己負担することになります。
ただし、世帯の所得に応じた負担上限額が設定されており、1ヶ月に利用したサービス量にかかわらず負担は上限額までとなります(市町村民税非課税世帯の人に係る福祉サービスの利用者負担は無料)。
また、食費や光熱費は別途負担することになります。
所得区分 | 負担上限額 | |
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 | |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 | |
一般1 |
居宅で生活する障害児 | 4,600円 |
居宅で生活する障害者および20歳未満の施設入所者 | 9,300円 | |
一般2 | 37,200円 |
一般1
市町村民税課税世帯に属する者のうち、市町村民税所得割額16万円未満(世帯収入が概ね600万円以下)のもの(20歳未満の施設入所者、グループホームは除く)ただし、障害者および20歳未満の施設入所者の場合は市町村民税所得割額28万円未満(世帯収入が概ね890万円以下)のもの。
一般2
市町村民税課税世帯に属する者のうち、一般1に該当しないもの
医療に係る部分の負担上限額は、低所得の場合は、低所得1(市町村民税非課税世帯であって障害者または障害児の保護者の年収80万円以下)が15,000円、低所得2(市町村民税非課税世帯であって低所得1以外の場合)が24,600円、一般1・2の場合は40,200円となります。
所得を判断する際の世帯の範囲は、障害のある人が18歳以上(20歳未満の施設入所者は除く)の場合は本人および同じ世帯に属するその配偶者、18歳未満(20歳未満の施設入所者は除く)の場合は原則として保護者の属する住民基本台帳での世帯になります。
利用者負担の軽減措置
- 低所得の人(20歳未満は所得要件なし)が、医療型入所施設や療養介護を利用する場合は、福祉サービスに係る利用者負担と医療費、食事療養費の負担の合算額に対して、負担上限額が設定されます(医療型個別減免)
- 生活保護または低所得の人(20歳未満は所得要件なし)が、福祉型入所施設を利用する場合は、食費および光熱水費の実費負担が所得に応じて軽減されます(補足給付)
- 通所施設を利用する場合は、食費の実費負担について所得に応じた軽減措置があります。
- 生活保護または低所得のひとがグループホームに居住する場合は、1人あたり月額1万円を上限に家賃が補助されます。
高額障害福祉サービス等給付費の支給
同一月・同一世帯における下記の(1)の利用者負担の合算が、(2)の基準額を超えた場合、申請により超えた分が高額障害福祉サービス等給付費として後から支給されます。
ただし、負担額の軽減や介護保険から高額介護(予防)サービス費等が受けられる場合は、それらの支給額を差し引いて計算します。
なお、医療部分に係る利用者負担や食費等の負担額は合算の対象になりません。
(1)合算対象利用者負担
- 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等(介護給付・訓練給付)に係る利用者負担
- 介護保険の居住サービス等の係る利用者負担
- 障害者総合支援法に基づく補装具費に係る利用者負担
- 児童福祉法に基づく障害児通所支援に係る利用者負担
- 児童福祉法に基づく障害児入所支援に係る利用者負担
(2)基準額
市町村民税課税世帯は37,200円、それ以外は0円。
ただし、同一世帯で障害児に係る利用者負担(上記1.4.5.のいずれかに限る)が複数ある場合は基準額を引き下げる特例があります。
介護保険に移行した高齢の障害者への負担軽減措置
特定の障害福祉サービスを5年以上利用している等の要件を満たした高齢者が、介護保険に移行して介護保険から同様のサービスを受ける場合、その利用者負担分が高額障害福祉サービス等給付として申請により償還払いされます。
訓練等給付の利用手続き
下記のステップで手続きが行われます。
step
1サービス利用の申請
相談支援事業者は障害福祉サービスの申請前の相談、申請時の支援などを行います。
なお、市区町村が指定した特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出が必要になります。
step
2障害支援区分の認定
次に、市区町村の審査会において、一次判定結果、認定調査の特記事項、医師の意見書の内容を総合的に勘案して二次判定を行います。
二次判定結果にもとづき、申請者の障害支援区分(1~6区分または非該当)が認定されます。
なお、18歳未満の児童の場合は原則として障害支援区分の認定は行いません。
なお、障害支援区分とは、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示すものです。
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3サービス支給の決定
特定相談支援事業者は支給決定に基づき申請者と相談しながら申請者が希望するサービス事業者等と連絡調整を行うとともに、サービス担当者会議を開催してサービス等利用計画を作成します。
申請者は、サービス等利用計画にもとづいて事業者とサービス利用の契約を結びます。
手続きの注意点
上記で述べた手続の手順は、障害福祉サービス等(介護給付・訓練給付)に係るものです。
訓練等給付だけを希望する場合は障害支援区分の認定は行われません(共同生活援助(グループホーム)において入浴、排泄、食事等の介護を受ける場合は、認定が必要になります)。
利用申請を行うと、申請者の生活や障害に関する認定調査、申請者や介護者の状況、サービス利用の意向、サービス等利用計画案などをふまえ、暫定的に支給決定が行われます。
この決定にもとづき一定期間サービスを利用し、サービスの効果と本人の意思を確認した後、サービス事業者が個別支援計画を制作し正式な支給決定が行われます。
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