社会保障

養育支援が必要な家庭を救う「養育支援訪問事業」とは

養育支援が必要な家庭を救う「養育支援訪問事業」とは

この記事では「養育支援訪問事業」について解説していきます。


乳児家庭全戸訪問事業などにより、特に支援が必要と判断された家庭には、より手厚い指導・助言が求められます。

養育支援訪問事業では、上記のような家庭をサポートする準備が整えられています。


この記事を読めば、「養育支援訪問事業の目的」「支援を受ける対象者」「支援内容」などを知ることができます。




養育支援訪問事業とは

養育支援訪問事業とは


養育支援訪問事業の目的

養育支援訪問事業の目的は、養育支援が特に必要であると判断した家庭に対し、保健師・助産師・保育士等がその居宅を訪問し、養育に関する指導、助言等を行うことにより、当該家庭の適切な養育の実施を確保することです。


実施主体は市区町村

実施主体は、市区町村になります。

よって、問い合わせ先は居住の市区町村役場になります。


なお、市町村が認めた者へ委託を行うことができます。


支援内容

【乳児家庭等に対する支援】

妊娠期から乳幼児の保護者で積極的な支援が必要と認められる児童不安にある人や精神的に不安定な状態等で支援が特に必要な状態に陥っている人に対して、育児支援や簡単な家事等の援助、相談・助言等の支援を行います。


【不適切な養育状態にある家庭等に対する支援】

食事、衣服、生活環境等について不適切な養育状態にあり、定期的な支援や見守りが必要な家庭、施設の対処等により児童が家庭復帰した後の家庭など生活面に配慮したきめ細やかな支援が必要な家庭に対して、一定の目標・期限を設定したうえで指導・助言等の支援を行います。


支援を受ける対象者

乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)や新生児訪問指導により把握した、特に支援が必要と認められる児童及び養育者。


具体的には下記の様な家庭が考えられます。

  1. 若年の妊婦及び妊婦健康診査未受診や望まない妊娠等の妊娠期からの継続的な支援を特に必要とする家庭
  2. 出産後間もない時期(おおむね1年程度)の養育者が、育児ストレス、産後うつ状態、育児ノイローゼ等の問題によって、子育てに対して強い不安や孤立感等を抱える家庭
  3. 食事、衣服、生活環境等について、不適切な養育状態にある家庭など、虐待のおそれやそのリスクを抱え、特に支援が必要と認められる家庭
  4. 児童養護施設等の退所又は里親委託の終了により、児童が復帰した後の家庭




事業従事者

養育支援訪問事業では、地域の実情にあわせて、養育支援に関する必要な情報提供をできる専門家が訪問します。


具体的には下記のような方です。

  • 保健師
  • 助産師
  • 看護師
  • 保育士
  • 児童指導員
  • 子育て経験者
  • ヘルパー
    など


必要な支援の提供のために複数の訪問支援者が役割分担の下に実施する等、効果的に支援を実施することになります。


養育支援訪問事業の事例

養育支援訪問事業の事例


事例1:知的障害がある母親の事例

○訪問時期及び期間:妊娠中から生後4か月まで


母が母子健康手帳の交付を受けるため、保健センターへ来所した。

保健師が面接を行い、体調や生活状況等を確認したところ、父も母も知的障害があること、母は実家で生活しており父以外の同居家族もいるが、家族は皆仕事をしていて日中は母だけになるということを聴取した。


出産・育児に向けた準備、授乳やオムツ交換等の基本的な育児手技、養育環境の整備について、特に母に対して丁寧な関わりを行っていくことが必要となる家庭であると判断したため、妊娠中から養育支援訪問を開始した。


妊娠中は出産に向けた必要物品の確認等準備を進め、産後は週1回の頻度で訪問を行った。産後の訪問では、始め、母が頑なになってしまい、訪問員の助言をなかなか受け入れない様子もあったが、訪問員が母の思いに傾聴し母が行う育児の方法を認める声かけを続けたところ、徐々に信頼関係ができ、母の方からいろいろな相談が聞かれるようになった。

子どもの順調な発育も確認されており、生後4か月からは保育園に入園となったため、養育支援訪問は終了となった。


なお、入園の際にも、母とともに訪問員が保育園の面接へ一緒に出向き、入園にあたっての母の不安の軽減を図った。


事例2:パニック障害の既往があり不安の訴えが多い母親の事例

○訪問時期及び期間:生後3か月~1歳まで


母は、母子健康手帳交付時の面接では特に問題が把握されていなかったが、出産後に多くの不安の訴えが示されるようになった。

保健師が訪問したところ、母にはパニック障害の既往があり、出産後より漠然とした不安や恐怖心があること、身近に育児の支援者がいないことを把握した。

そのために、母は、子どもへの接し方がわからない、家事全般に苦手さがあり育児と両立できないといった状況から、さらに不安が増すという悪循環に陥っていた。


保健師が一つ一つをアドバイスすることによって、母は安心感を得て行動に移すことができていたことから、継続的に母に寄り添いながら家事や育児のアドバイスをする支援が必要と判断し、養育支援訪問を開始した。


週1回の訪問を継続する中で、母は、訪問員へ厚い信頼を寄せ、自身の健康状態や実家と疎遠になっていること等を話すようになった。

訪問員は、母の不安に寄り添い訴えを傾聴しながら、経験に基づく様々なアドバイスをし、家事や育児の支援を行った。


母は徐々に精神的に安定し、良い意味で適度に手を抜きながら家事や育児をこなせるようになった。

子どもは発育・発達ともに順調に経過していった。また、子どもと一緒に外出するようにもなったことで友人ができ、子育てを相談できる存在ができたことから、養育支援訪問は終了となった。


事例3:言葉の遅れがある子どもへの対応の仕方に問題がある母親の事例

○訪問時期及び期間:3歳~3歳6か月まで


3歳児健康診査において、子どもの言葉の遅れと落ち着きのなさが確認された。

母から子どもへの声かけが少ないこと、普段は日中ほとんど屋内で過ごしているということから、子どもの言葉の遅れの主な要因は、経験不足によるところが大きいと考えられた。

また、母はすぐに叩いて子どもの行動を制止しようとしている様子もあった。母の実家は遠方にあり、父の両親はすでに他界していたため、母にとって子育ての相談をする相手がいなかった。


母は、子どもの経験を増やす機会として遊びの教室への参加には消極的であったが、子どもの言葉の遅れに対する心配は抱いていたため、家庭で子どもの経験を増やすような対応の仕方を母に身につけてもらうことを目的に、養育支援訪問を開始した。


訪問員は、子どもの発達段階や家庭の住環境を考慮した上で、子どもへ必要な対応の仕方を母へわかりやすくアドバイスした。

子どもは徐々に言葉の面で成長が見られるようになり、母はそれをとても喜び、訪問員を信頼して次々とアドバイスを実行できるようになった。


子どもの言葉の成長が確認され、母の対応に改善がみられるようになったことから、養育支援訪問は終了となった。


養育支援訪問事業の実施状況

養育支援訪問事業の実施状況

養育支援訪問事業を実施している市町村は、全国1,741市町村のうち、1,335市町村(76.7%)でした。

平成29年4月1日現在

養育支援訪問事業の実施状況



養育支援訪問事業における対象家庭の把握経路

養育支援訪問事業の対象家庭を把握した経路は、「乳児家庭全戸訪問事業による把握」が876市町村(65.6%)と最も多く、次いで、「要保護児童対策地域協議会の支援ケース」が778市町村(58.3%)でした。

区分 市区町村 比率
乳児家庭全戸訪問事業による把握 876 65.6%
要保護児童対策地域協議会の支援ケース 778 58.3%
母子保健所管課からの情報提供 630 47.2%
児童相談所からの情報提供 376 28.2%
発達障害者支援センターからの情報提供 89 6.7%
子育て世代包括支援センターからの情報提供 154 11.5%
医療機関からの情報提供 672 50.3%
警察からの情報提供 134 10.0%
保育所・幼稚園・学校からの情報提供 371 27.8%
民生委員・児童委員からの情報提供 145 10.9%
地域住民からの情報提供 139 10.4%
他の自治体からの情報提供 392 29.4%
保健師の活動 677 50.7%
妊娠届出・母子健康手帳交付時 693 51.9%
本人からの申し出 448 33.6%
家族からの相談 340 25.5%
その他 73 5.5%


※複数回答あり


養育支援訪問事業における訪問できなかった理由

養育支援訪問事業の対象家庭の一部を訪問できなかった212市町村(15.9%)のうち、訪問できなかった理由は、「訪問の同意が得られなかった」が121市町村(57.1%)、「訪問したが不在だった」が87市町村(41.0%)でした。

区分 市区町村 比率
対象家庭全てを訪問 1,116 83.6%
一部訪問できなかった 212 15.9%
  日程の調整ができなかった 57 26.9%
  訪問の同意が得られなかった 121 57.1%
  訪問したが不在だった 87 41.0%
  転居していた 30 14.2%
  訪問者の数が足らなかった 13 6.1%
  その他 73 34.4%
未回答 7 0.5%


※複数回答あり
※割合は四捨五入のため、100%にならない場合があります。


養育支援訪問事業で訪問した家庭の特徴

養育支援訪問事業の対象家庭の特徴は、「育児不安がある」が1,072市町村(80.3%)で最も多く、次いで、「養育者の育児技術がない又は未熟である」が1,031市町村(77.2%)でした。

区分 市区町村 比率
育児不安がある 1,072 80.3%
妊婦健康診査、乳幼児健康診査等の未受診 535 40.1%
養育者の育児技術がない又は未熟である 1,031 77.2%
養育者が精神疾患を抱えている又は精神的問題がある 961 72.0%
ひとり親である 811 60.7%
要保護児童対策地域協議会の対象ケースである 890 66.7%
子どもが発達障害を抱えている又は発達障害の疑いがある 695 52.1%
子どもが身体的疾患を抱えている 539 40.4%
養育者が知的障害を抱えている 569 42.6%
養育者が10代である 563 42.2%
養育する子どもの人数が多い 561 42.0%
DVを受けている又はDVを受けている可能性がある 480 36.0%
養育者が身体的疾患を抱えている 374 28.0%
養育者が外国籍である又は日本語でのコミュニケーションが難しい 341 25.5%
入所措置解除後である 233 17.5%
経済的に困窮している 744 55.7%
その他 73 5.5%


※複数回答あり
※割合は四捨五入のため、100%にならない場合があります。



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