この記事では「障害のある児童に関する社会保障の種類」をわかりやすく紹介していきます。
障害のある児童については障害の特性や児童の発達に即して適切な教育や指導が必要となるため、障害のある児童の自立を目指したさまざまな支援策が、児童福祉法にもとづいて講じられます。
また、保護者の負担を軽減するため、特別児童扶養手当などの現金による支援も行われています。
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障害児福祉手当とは
障害児福祉手当とは、常時介護を必要とする精神または身体に重度の障害のある20歳未満の児童に対して、経済的補助として支給され、家庭における精神的、物質的な負担を軽減しようとするものです。
支給対象者
精神または身体に重度の障害があるため、日常生活において常時介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の児童。
支給額
支給額は月額 14,880円です。
支給時期
障害児福祉手当が支給される時期は、原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
支給制限
障害児福祉手当の支給は、下記の3つのいずれかに該当する場合には支給されません。
- 児童が日本国内に住所がないときおよびその障害について社会保険などから年金を受けている
- 施設に入所している
- 受給資格者本人の前年の所得が一定以上
- 扶養義務者の前年の所得が一定以上
特別児童扶養手当とは
特別児童扶養手当とは、20歳未満の精神または身体に障害のある児童のいる家庭の父母またはその他の養育者に所得補償として支給されます。
支給額は、児童1人につき、障害等級1級の場合月額 51,700円、障害等級2級の場合月額 34,430円です。
支給対象者
20歳未満で精神または身体に中程度以上の障害がある児童を家庭で監護、養育している父母またはその他の養育者。
等級 | 障害の程度 |
1級 | 身体障害者手帳1~2級または療育手帳「A」を持っているか、これと同程度の重い障がいのある児童 |
2級 | 身体障害者手帳3~4級(4級は一部)を持っているか、これと同程度のやや重い障がいのある児童 |
支給額
児童1人につき、障害等級1級の場合月額 51,700円、障害等級2級の場合月額 34,430円。
障害等級 | 1人につき月額 |
1級(重度障害児) | 51,700円 |
2級(中度障害児) | 34,430円 |
支給時期
手当が支給される時期は、4月、8月、11月(12月期分は11月中に振り込む自治体が多い)の3回払いです。
支払日 | 支給対象月 |
4月11日 | 12、1、2、3月 |
8月11日 | 4、5、6、7月 |
11月11日 | 8、9、10、11月 |
支払日が土・日・祝日の場合は、原則としてその直前の金融機関営業日を支払日となります。
支給制限
特別児童扶養手当の支給は、下記の3つのいずれかに該当する場合には支給されません。
- 児童が日本国内に住所がないときおよびその障害について社会保険などから年金を受けているとき
- 父母または養育者が日本国内に住所がないとき
- 父母または養育者およびその配偶者または扶養義務者の前年の所得が一定額以上
介護給付とは
介護給付とは、障害者(児)が介護を必要とするときに、住宅介護(ホームヘルプ)や短期入所(ショートステイ)など、日常生活において障害者の介護に必要なサービスを「介護給付」として受けられる制度です。
「介護給付」は、現金ではなくサービスそのものを提供する、現物給付です。
介護給付で受けられるサービスの種類
介護給付で受けられるサービスは下記の9種類です。
- 住宅介護(ホームヘルプ)
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
- 短期入所(ショートステイ)
- 療養介護
- 生活介護
- 障碍者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援)
ただし、18歳未満の児童の場合2、7~9は除かれます。
それぞれわかりやすく解説していきます。
利用者が負担する金額
利用者は受けるサービスに係る費用の一定額を自己負担することになります。
ただし、世帯の所得に応じた負担上限額が設定されており、1ヶ月に利用したサービス量にかかわらず負担は上限額までとなります(市町村民税非課税世帯の人に係る福祉サービスの利用者負担は無料)。
また、食費や光熱費は別途負担することになります。
所得区分 | 負担上限額 | |
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 | |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 | |
一般1 |
居宅で生活する障害児 | 4,600円 |
居宅で生活する障害者および20歳未満の施設入所者 | 9,300円 | |
一般2 | 37,200円 |
自立支援医療(育成医療)とは
自立支援医療(育成医療)とは、身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)に行われる医療です。
心身に障害のある児童や、そのまま放置すると将来において身体障害者の規程による障害と同程度の障害を残すとみられる疾患のある児童で、確実に治療効果が期待できるものに対して、医療を給付します。
ちなみに、自立支援医療には下記の3つの支給対象があります。
- 精神通院医療
- 更生医療
- 育成医療
医療給付の対象になる障害
- 視覚障害・・・白内障、先天性緑内障
- 聴覚障害・・・先天性耳奇形 → 形成術
- 言語障害・・・口蓋裂等 → 形成術
唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって、鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正 - 肢体不自由・・・先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
- 内部障害
- <心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術 - <腎臓>・・・腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
- <肝臓>・・・肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
- <小腸>・・・小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
- <免疫>・・・HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
- <その他の先天性内臓障害>
先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、停留精巣(睾丸)等
→ 尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術
給付は現金ではなく現物給付
自立支援医療の給付は、現金ではなく医療処置や薬剤などの現物給付になります。
具体的には下記のとおりです。
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 医学的処置、手術およびその他の治療、施術
- 居宅における療養上の管理及びその治療にともなう世話その他の看護
- 病院または診療所への入院およびその療養にともなう世話その他の看護
- 移送
自立支援医療にかかる自己負担額
一か月にかかる自己負担額は、所得に応じて定められる額(その額がかかった医療費の1割相当額より高い場合は1割相当額)となります。
また、費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない児童(重度かつ継続)や中間所得せたいについては、さらに軽減措置を実施しています(中間所得世帯の軽減措置については令和 3 年 3 月までの経過措置)。
なお、入院時の食費については別途自己負担となります。
所得区分 | 更生医療・ 精神通院医療 |
育成医療 | 重度かつ 継続 |
|||
一定所得以上 | 対象外 | 対象外 | 20,000円 | 市町村民税235,000円以上 | ||
中間 所得 |
中間 所得 2 |
医療保険の 高額療養費 |
10,000円 |
10,000円 |
市町村民税課税以上 235,000円未満 |
市町村民税33,000円以上 235,000円未満 |
中間 所得 1 |
5,000円 | 5,000円 | 市町村民税課税異常33,000円未満 | |||
低所得 2 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 市町村民税非課税 (本人収入が800,001円以上) |
||
低所得 1 | 2,500円 | 2,500円 | 2,500円 | 市町村民税非課税 (本人収入が800,000円以下) |
||
生活保護 | 0円 | 0円 | 0円 | 生活保護世帯 |
障害児入所支援とは
障害児入所支援とは、障害のある児童が施設に入所し、支援を受けられるサービスです。
身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神障害のある児童(発達障害児を含む)または難病等により障害のある児童に対して、児童福祉法にもとづき、障害児入所施設(福祉型・医療型)や指定医療機関において支援が行われます。
また、それらに係る費用が障害児入所給付(医療にかかる費用については障害児入所医療費)として支給されます。
支援の内容
入所または入院している障害児に対し障害の応じた適切な支援(保護、日常生活の指導および知識技能等の給付)を行います。
支援の内容は、「福祉型」・「医療型」により異なります。
福祉型障害児入所施設
- 食事、排せつ、入浴等の介護
- 日常生活上の相談支援、助言
- 身体能力、日常生活能力の維持・向上のための訓練
- レクリエーション活動等の社会参加活動支援
- コミュニケーション支援
- 身体能力、日常生活能力の維持・向上のための訓練
医療型障害児入所施設
医療型の施設においては、福祉型で行われる支援のほかに治療も行います(知的障害児、肢体不自由児、重症心身障害児が対象)。
- 疾病の治療
- 看護
- 医学的管理の下における食事、排せつ、入浴等の介護
- 日常生活上の相談支援、助言
- 身体能力、日常生活能力の維持・向上のための訓練
- レクリエーション活動等の社会参加活動支援
- コミュニケーション支援
利用者の負担額
利用者は、サービスに係る費用の一定額を自己負担することになります。
ただし、世帯の所得に応じた負担上限額が設定されており、1ヶ月に利用したサービス量にかかわらず負担は上限額までとなります(市町村税非課税世帯の児童に係る福祉サービスの利用者負担は無料)。
また、食費や光熱水費は別途負担することになります。
負担上限額
所得区分 | 負担上限額 | |
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 | |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 | |
一般1 |
居宅で生活する障害児 | 4,600円 |
居宅で生活する障害者および20歳未満の施設入所者 | 9,300円 | |
一般2 | 37,200円 |
障害児通所支援とは
障害児通所支援とは、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害児を含む)または難病等により障害のある児童に対して、児童福祉法にもとづき、障害児通所支援が行われます。
また、それらに係る費用が障害児通所給付(医療型児童発達支援のうち治療に係るものについては肢体不自由通所医療費)として支給されます。
支給の内容
障害児通所支援には下記の5つの種類があります。
- 児童発達支援
- 医療型児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 居宅訪問型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.児童発達支援とは
障害児を保護者のもとから児童発達支援センター等に通わせて、日常生活における基本的動作の指導、独立自活に必要な知識技能の付与又は集団生活への適応のための訓練を提供することを目的とした事業です。
2.医療型児童発達支援とは
肢体不自由のある児童について、上記1の支援および治療を行います。
3.放課後等デイサービス
学校就学中の障害児に対して、学校授業終了後または休業日に児童発達支援センター等の施設に通わせ、生活能力向上のために必要な訓練、社会との交流の促進等を行います。
4.居宅訪問型児童発達支援
上記1~3の支援等を受けるために外出することが著しく困難な重度の障害児について、居宅を訪問して日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与等の支援を行います。
5.保育所等訪問支援
児童が集団生活を営む施設等(保育所等)に通う障害児について、当該施設を訪問し、障害児本人や訪問先施設のスタッフに対し、当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援等を行います。
利用者の負担額
障害児通所支援を利用する者は、サービスにかかる費用の一定額を自己負担することになります。
負担額は居住の市区町村によって異なります。
ただし、世帯の所得に応じた負担上限額が設定されており、1ヶ月に利用したサービス量にかかわらず負担は上限額までとなります
ただし、食費は別途実費負担することになります。
所得区分 | 負担上限額 | |
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 | |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 | |
一般1 |
居宅で生活する障害児 | 4,600円 |
居宅で生活する障害者および20歳未満の施設入所者 | 9,300円 | |
一般2 | 37,200円 |
補装具費とは
補装具費(ほそうぐひ)とは、障害のある人が日常生活を送る上で必要な用具(補装具)の購入又は修理に要した費用を支給する制度です。
障害者(児)の失われた部位や障害のある部分を補って、日常生活や職業活動を容易にするために、車椅子や補聴器などの必要な用具(補装具)の購入費や修理費を支給します。
また、障害者の利便に照らして補装具の購入よりも借受が適切と考えられる場合に限り、借受も補装具費の対象となります。
給付の対象になる補装具
- 義肢
- 装具
- 座位保持装置
- 車椅子
- 電動車椅子
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 重度障害者用意思伝達装置
- 盲人安全杖
- 義眼
- 眼鏡
- 補聴器
- 座位保持椅子
- 起立保持具
- 頭部保持具
- 排便補助具
ただし、13~16は18歳未満の児童のみ対象になります。
利用者の負担上限額
補装具の購入・修理に係る費用の1割を自己負担することになります。
ただし、世帯の所得に応じた負担上限月額が設定されています(市町村民税課税世帯37,200円。市町村民税非課税世帯および生活保護世帯は利用者負担なし)。
所得区分 | 負担上限月額 |
市町村民税課税世帯 | 37,200円 |
市町村民税非課税世帯 | 利用者負担なし |
生活保護世帯 |
ただし、上限月額よりも補装具に係る費用の1割の金額の方が低い場合には、その金額を支払います。
日常生活用具給付等事業とは
日常生活用具給付等事業とは、障害者(児)に対して、訓練用ベッド、訓練椅子などの日常生活用具を給付することによって、日常生活の便宜と機能の回復を図る事業です。
また、手すりの設置や階段の解消等、小規模な住宅改修を伴うものも対象となります。
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