厚生労働省は医療機関で受診した際にかかる初診料・再診料を2024年度から引き上げる方針です。
医療従事者の賃上げや新型コロナウイルスの感染拡大の経験を踏まえた日常的な感染症対策の原資に充てます。
また、他産業でおよそ30年ぶりに高い水準の賃上げとなった社会情勢も踏まえ、医療従事者の待遇改善に充てる原資としても活用されます。
詳しく解説していきます。
初診料・再診料の引き上げは、数円から多くて数十円程度
厚生労働省は1月26日の中央社会保険医療協議会に、初診料や2回目以降の受診時にかかる再診料の引き上げ案を示しました。
具体的な増額幅を詰めており、窓口負担は数円から多くて数十円程度の上乗せとなる見通しです。
現在は3割負担の患者の場合、窓口の支払額が初診料で864円、再診料は219円かかります。
医療機関はほかに保険料や税からも報酬を受け取るため、医療機関に入る総額は窓口負担も含めた初診料で2880円、再診料で730円となっています
引き上げはおよそ4年半ぶり
引き上げは2019年10月の消費増税時以来でおよそ4年半ぶりです。
初診料は2006年度にそれまで病院と診療所で額が違っていたのを同額にしました。
その後、消費増税への対応を除けば増額は初めてです。
初診・再診料は医療機関の収益の柱の一つです。
厚生労働省によると2022年6月時点で、外来や往診に関する診療報酬のうち初診料と再診料が13.7%を占めています。
問診や触診、血圧測定といった簡単な検査や人件費、カルテなど備品や設備の費用に充てています。
初診料・再診料の引き上げの理由
感染対策
今回の引き上げの理由の一つが感染対策です。
新型コロナへの医療対応を促すための報酬の上乗せは2023年度中に終わる見通しですが、新型コロナの感染は収まっていません。
インフルエンザなどその他の感染症も繰り返し流行しています。
厚労省は施設内の感染対策がこれから常に不可欠になるとみて、必要な費用を賄うために初診料などの増額を判断しました。
賃上げ
初診・再診料は医療行為にかかわらず幅広い医療機関の収入につながっています。
他産業でおよそ30年ぶりに高い水準の賃上げとなった社会情勢も踏まえ、医療従事者の待遇改善に充てる原資としても活用されます。
初診料などの使い道は医療機関の裁量で決まるため、確実に賃上げの原資に回るような新たな仕組みも設ける予定です。
初診・再診料とは別に看護師や薬剤師などの賃上げの原資として、3割負担の場合なら初診時に18円、再診時に6円を上乗せされます。
対象は具体的な賃上げ計画を地方厚生局に提出した医療機関に限ることを想定し、賃上げしたかどうかの実績報告も求めます。
原資が医師だけでなく幅広い職種に行き渡るようにする狙いがあります。
医療費の財源は5割が保険料、4割が税金、1割が窓口負担
診療報酬は病院や診療所が公的医療の対価として受け取る収入で、医療費の総額にあたります。
医療費の財源は5割が保険料、4割が税金、1割が窓口負担からなっています。
診療報酬は公定価格のため、医療機関は物価高や賃上げのために必要な費用を価格に転嫁できません。
一方で報酬を増額すれば窓口での支払いや保険料が増え、個人負担は高まります。
賃上げの実績を丁寧に検証し、医療費全体を適正にしていく必要があります。
まとめ
厚生労働省は医療機関で受診した際にかかる初診料・再診料を2024年度から引き上げる方針です。
窓口負担は数円から多くて数十円程度の上乗せとなる見通しです。
現在は3割負担の患者の場合、窓口の支払額が初診料で864円、再診料は219円かかります。
医療機関はほかに保険料や税からも報酬を受け取るため、医療機関に入る総額は窓口負担も含めた初診料で2880円、再診料で730円となっています
今回の引き上げの理由は、感染症対策と賃上げです。