政府は介護の人員規制の緩和を検討しています。
介護施設の入所者3人につき、少なくとも1人の職員を配置する現行の基準を見直し、1人で4人に対応できるようにする案を軸に調整します。
センサーなどのIT(情報技術)活用で介護現場の生産性を高めたい考えです。
財政を圧迫する社会保障費の膨張を抑えつつ、介護・医療分野の人材不足を緩和するには思い切った規制改革が必要となっています。
介護人材は23年度に22万人、40年度には69万人が不足
介護や医療の現場ではセンサーで患者らの状況を確認したり、ロボットで作業負荷を抑えたりする技術開発が進んでいます。
ただ、省力化が可能でも現行の配置基準があるため、事業者は投資に躊躇(ちゅうちょ)していました。
2021年12月20日の規制改革推進会議で内閣府が改革を提起しました。
2022年初めから厚生労働省などと本格的な検討に着手します。
介護は少子高齢化で需要が高まる一方、担い手不足が指摘されています。
厚労省の将来推計で介護人材は23年度に22万人、40年度には69万人が足りなくなる見通しです。
政府は早急に対応する必要があると判断したのです。
規制緩和で業務の効率化と質の維持
政府はまず有料老人ホームを対象に規制緩和を検討しています。
現場で働く人の負担が増したり、「手抜き介護」が増えて介護の質が落ちたりしないよう制度設計します。
緩和の条件として、業務の効率化と質の維持を両立させる計画を介護事業者が政府に示す案があります。
コンサルティング会社といった外部機関による監査で安全性などを確保することも求めます。
生産性向上のカギを握るのはITの活用です。
例えば介護大手のSOMPOホールディングスはベッドにセンサーを取り付け、遠隔で見守りながら身体情報を計測するといった試みを始めています。
眠っているかを確認できれば巡回が減らせ、別の仕事に時間を使えます。
政府は先進的な取り組みをモデル事業として認め、効果があれば他の事業者に広げる手法でIT活用を促していく方針です。
在宅介護の難しい人が暮らす特別養護老人ホーム(特養)は、個室と共有スペースを組み合わせた「ユニット型」と呼ぶ施設での収容基準の見直しを検討します。
これまでは1つのユニットあたり10人程度としていましたが、より多くの人数を収容できる案を議論します。
介護士や看護師の業務の負担軽減や賃金増
介護は仕事の負担と給与の見合いなどから現在も人材が集まりにくいです。
岸田文雄首相は予算措置による介護士や看護師の処遇改善を掲げています。
それだけではなく、規制緩和を通じて生産性を高めることで、現場の業務の負担軽減や賃金増などにつなげる狙いがあります。
医療・介護分野には利便性や生産性向上の壁になっている規制が多いです。
介護に限らず、医療機関でも入院患者に対する看護師の人数が定められています。
新型コロナウイルス対策では抗原検査キットの個人向け販売が薬局に限られ、インターネット販売は医療界などの反対で解禁していません。
オンラインでの診療や服薬指導も煩雑な要件などがあり、実際の利用が十分に進んでいません。
少子高齢化により社会保障費は国費ベースで21年度に40兆円弱に膨らんでいます。
古い規制を見直して生産性を向上することで、費用の膨張を抑える重要性は高まっています。
まとめ
政府は介護の人手不足を解消するために、1人の職員で4人に対応できるようにしたい考えです。
介護は少子高齢化で需要が高まる一方、担い手不足が指摘されています。
厚労省の将来推計で介護人材は23年度に22万人、40年度には69万人が足りなくなる見通しです。
政府はまず有料老人ホームを対象に規制緩和を検討しています。
現場で働く人の負担が増したり、「手抜き介護」が増えて介護の質が落ちたりしないよう制度設計します。
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