東京都労働委員会は2022年11月25日、料理配達「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員の労働組合と団体交渉に応じるよう命じました。
オンラインで単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働組合法上の労働者とする法的判断は国内初です。
ウーバー側は不服として再審査の申し立てを検討しています。
海外でギグワーカー保護のルール整備が進む中、日本でも議論が活発になりそうです。
詳しく解説していきます。
動画でも解説しています
ウーバー配達員は「労働者」とする法的判断
配達員らでつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は2019年、ウーバーイーツ事業を運営する日本法人に団体交渉を申し入れました。
ウーバー側は「労働組合法上の労働者でない」と団交を拒否したため組合側が20年、都労委に救済を申し立てていました。
ウーバー側は仕事の時間を選べ、配達を引き受けるかどうかに自由があることなどを理由に配達員は労働者ではないと主張してきました。
都労委は業務を受けるアプリの利用停止措置などがあることを重視。
配達員はウーバーの指揮監督下にあるとして労働者と認めました。
ウーバー側は再審査申し立てなどの対応を検討
ウーバー側は判断を不服とし中央労働委員会への再審査申し立てなどの対応を検討しています。
「今回の判断はフレキシブルで独立した働き方などを十分に考慮しないものだ」との談話を出しました。
仮に裁判でも争われた場合、法的判断の確定まで数年かかる可能性もあります。
組合側の代理人の弁護士は25日の記者会見で「外国では(ギグワーカー保護の)立法措置が進んでいるが日本は何の法的保護もない。命令が議論のスタート地点になればいい」と述べました。
組合側は近くウーバーに報酬体系の透明性向上などを求める要求書を提出します。
ギグワーカーは急増している
料理宅配などネット上で企業の業務を個人に仲介するサービスが台頭し仕事として稼ぐギグワーカーが急増しています。
新型コロナウイルス禍が拍車をかけ、米マスターカードは世界のギグワーカーが23年に18年比8割増の7800万人に達すると予想しています。
人材サービスのランサーズは特定の企業などに雇われない働き手が21年に国内で約800万人に達したと試算しています。
料理宅配員は20万~30万人を占めるとみられています。
主要国では労働者と同じ権利が与えられている
主要国の労働法制は雇用される働き手を標準とし、ギグワーカーは自営業者とみなされてきました。
海外では急増するギグワーカーの不安定な身分や社会保障の脆弱さを問題視して労働者と同じ権利を与える動きが広がっています。
欧州連合(EU)の欧州委員会は21年、一定条件でギグワーカーを労働者と見なす法案を公表しました。
最低賃金などの対象とし、労働組合活動の権利も保護するそうです。
スペインや韓国も近年、ギグワーカーに雇用者の権利を認める法律を制定しました。
日本では労働者として保護する視点は乏しい
日本でも21年、政府がギグワーカーを含むフリーランス保護の指針を公表しましたが、原則、自営業者として独占禁止法などで保護する内容です。
政府が今国会への提出を目指すフリーランス保護新法も契約内容の文書化など取引条件の適正化が柱で労働者として保護する視点は乏しいです。
学習院大の教授は「雇用されている人と同様の働き方であれば保護の必要性は変わらず、最低賃金や解雇規制も適用すべきだ」と指摘しています。
まとめ
配達員らでつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は2019年、ウーバーイーツ事業を運営する日本法人に団体交渉を申し入れました。
ウーバー側は「労働組合法上の労働者でない」と団交を拒否したため組合側が20年、都労委に救済を申し立てていました。
東京都労働委員会は2022年11月25日、料理配達「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員の労働組合と団体交渉に応じるよう命じました。
ウーバー側は判断を不服とし中央労働委員会への再審査申し立てなどの対応を検討しています。