社会保障

傷病(補償)年金とは?「給付額」や「給付期間」などを解説

傷病(補償)年金とは?「給付額」と「給付期間」などを解説

自立した生活を維持していくには継続した収入が必要になり、賃金収入が得られる就業は多くの方にとって必須のはずです。

日本の社会保障には、障害によって働くことのできなくなった方には公的保険によって、生活するための現金が支給されます。


障害を負って就業ができなくなった場合の公的保険といえば、国民年金から支給される「障害年金」が有名です。

その他にも、障害の原因が業務上・通勤途上の場合は労災保険から「傷病(補償)年金」が併せて支給されます。


この記事を読めば、「傷病(補償)年金」の「金額」「支給要件」「給付期間」などを知ることができます。




傷病(補償)年金とは?

傷病(補償)年金とは?

傷病(補償)年金とは、業務や通勤が原因となった負傷または疾病などによって開始した療養が、1年 6カ月を経過しても治っていない時に休業(補償)給付から切り替わって支給される年金です。


傷病(補償)年金とは、業務上または通勤途上の傷病が長びく場合、休業(補償)給付に代えて、その傷病の程度に応じて手厚い保護を行うとするもので、それぞれの法令に定められる傷病等級1級~3級の人に支給されます。

傷病等級は、障害(補償)年金の障害等級の1級~3級に対応しています。




受給要件

業務上または通勤途上に負傷し、または疾病にかかった労働者が、その傷病についての療養を開始して 1年 6ヶ月を経過した日またはその日以降において、下記の要件のどちらにも該当した場合です。

  1. 傷病が治らず、療養の必要があること
  2. その傷病による障害の程度が傷病等級の1級~3級に該当する



問合わせ先

問合わせ先は、管轄の労働基準監督署になります。


労災保険における「治ったとき」とは

労災保険における「治ったとき」とは

傷病(補償)年金は、傷病が 1年 6ヶ月を経過しても治っていない場合に、休業(補償)給付から切り替わって支給される年金です。

つまり、「治っている」か「治っていないか」の判断が重要になります。


労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学以上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいい、この状態を労災保険では「治癒」(症状固定)といいます。


したがって、「傷病の症状が投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるに過ぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には労災保険では「治癒」(症状固定)として、傷病(補償)給付を支給しないことになっています。


※治癒(症状固定)した場合は「傷病(補償)年金」の支給は終わりますが、障害が残った場合は、「障害(補償)年金」など、別の制度から支給を受けられる可能性があります。



傷病(補償)年金の給付の内容

傷病(補償)年金の給付の内容

傷病(補償)年金の給付の内容は下表のとおりです。

障害等級 傷病(補償)年金 傷病特別支給金 傷病特別年金
第1級 給付基礎日額の313日分 114万円 算定基礎日額の313日分
第2級 給付基礎日額の277日分 107万円 算定基礎日額の277日分
第3級 給付基礎日額の245日分 100万円 算定基礎日額の245日分


それでは、詳しく解説していきます。


年金額

障害の程度に応じて、それぞれ給付基礎日額の1級は 313日分、2級は 277日分、3級は 245日分。

ただし、年金給付基礎日額については、最低限度額・最高限度額が年齢仮想別に設定されていて、その最低・最高の限度額を超える場合には下表の限度額となります。


年齢階層別年金給付基礎日額限度額

年齢 ~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44
最低限度額 4,892 5,475 6,000 6,379 6,749 7,031
最高限度額 13,264 13,264 14,226 17,257 19,022 21,365
年齢 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~
最低限度額 7,075 6,902 6,414 5,213 3,940 3,940
最高限度額 23,267 25,192 24,757 19,737 14,973 13,264



傷病特別支給金

上記年金額に加えて、障害の程度に応じてそれぞれ1級は 114万円、2級は 107万円、3級は 100万円の一時金が支給されます。


傷病特別年金

上記年金額に加えて、障害の程度に応じてそれぞれ算定基礎日額(ボーナス年額(年金給付基礎日額の 365倍の 20%相当額か 150万円いずれか低いほうを限度)の 365分の1)の、1級は 313日分、2級は 277日分、3級は 245日分が支給されます。


給付期間

受給要件の状態が続いている間は給付が続きます。


ただし、傷病(補償)年金は3年経過したとき、会社が病気を理由に解雇できるようになりますので、注意が必要です。


障害年金との同時給付による減額

傷病(補償)年金と同時に厚生年金保険の障害厚生年金および国民年金の障害基礎年金が受けられるときは 27%、障害厚生年金だけが受けられるときは 12%、障害基礎年金だけが受けられるときは 12%、それぞれ労災保険の傷病(補償)年金が減額されます。



年金の支払い月

傷病(補償)年金は、毎年 2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期にそれぞれの前 2ヶ月分が支払われます。


※傷病(補償)年金が支給される場合には、療養(補償)給付は引き続き支給されますが、休業(補償)給付は支給されません。

※傷病等級が第1級または第2級の胸腹部臓器、神経系統・精神障害があり、現に介護を受けている方は、介護(給付)を受給することができます。
 この給付を受けるためには、別途請求書などを提出する必要があります。


給付基礎日額とは

給付基礎日額とは

「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に騒動する額をいいます。


平均賃金とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。


年金としての保険給付の額の算定の基礎となる給付基礎日額は、毎年、前年度と比較した賃金水準の変動率に応じて増額または減額(スライド)されます。

また、年齢階層別の最低・最高限度額も適用されます(年金給付基礎日額)。


※船員については、給付基礎日額の特例があります。


算定基礎日額とは

算定基礎日額

「算定基礎日額」とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を 365で割った額です。

特別給付とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。


特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の 365倍に相当する額)の 20%に相当する額を上回る場合には、給付年額の 20%に相当する額が算定基礎年額となります。

ただし、150万円が限度額です。


傷病(補償)年金に該当する状態

障害等級 障害の状態
1級 ・神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、常に介護を要する
・胸部腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要する
・両目が失明しているもの
・そしゃく及び言語の機能を廃しているもの
・両上肢を肘関節以上で失ったもの
・両上肢の用を全廃しているもの
・両下肢をひざ関節以上で失ったもの
・両下肢の用を全廃しているもの
2級 ・神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、随時介護を要する
・胸部腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要する
・両目の視力が0.02以下になっているもの
・両上肢を腕関節以上で失ったもの
・両下肢を足関節以上で失ったもの
3級 ・神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、常に労務に服することができない
・胸部腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの
・一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になっているもの
・そしゃく又は言語の機能を廃しているもの
・両手の手指の全部を失ったもの


障害等級の区分をざっくりと解説すると下記の様になります。

  • 1級:常時介護を必要とする程度
  • 2級:随時介護を必要とする程度
  • 3級:労務に服することのできない程度の障害




手続き

傷病(補償)年金の手続き

傷病(補償)年金については請求する必要はなく、労働基準監督署の職権により支給が行われます。


しかし、療養開始後 1年 6ヶ月を経過しても傷病が治っていないときは、その後 1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届」を所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。

また、療養開始後 1年 6ヶ月を経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合は、毎年 1ヶ月の休業(補償)給付を請求する際に、「傷病の状態等に関する報告書」を併せて提出しなければなりません。



受給権者が死亡した場合の遺族への支給額

受給権者が死亡した場合の遺族への支給額

受給権者が死亡した場合は、「傷病(補償)年金差額一時金」として遺族が支給を受けることができます。


傷病(補償)年金の受給権者が死亡した場合、すでに支払われた傷病(補償)年金の合計額が、障害等級に応じ定められている額(1級は 1,340日分、2級は 1,190日分、3級は 1,050日分、4級は 920日分、5級は 790日分、6級は 670日分、7級は 560日分)に満たないとき、その差額が「傷病(補償)年金差額一時金」として遺族に支給されます。

障害等級 日分
1級 1,340日分
2級 1,190日分
3級 1,050日分
4級 920日分
5級 790日分
6級 670日分
7級 560日分




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