この記事では、「新型コロナによって、貯金をする人が多くなっている」ことについて解説していきます。
新型コロナウイルスによって財布の紐がきつく結ばれました。
毎週通っている、近所のディスカウントストアで売っている激安納豆が連日売り切れになり、購入制限が行われたのでこれは実感を持って感じています。
残念ながら、一度きつく結ばれた財布の紐はなかなか緩まないようです。
一律10万円が支給された特別定額給付金はもう一度行われるのか?
麻生財務相の「10万円給付分だけ貯金増えた」がすべて正しいとは言いませんが、その傾向があり、ワクチンの普及が始まった今、再び給付金が配られる確率は限りなく0に近いでしょう。
コロナによって貯金する家庭が増加
出典:日本経済新聞社
貯蓄率35%に上昇
新型コロナによって、お金をため込む傾向が鮮明になっています。
総務省が2021年5月11日に発表した2020年度の家計調査では、特別定額給付金の支給により可処分所得は前年度に比べ実質4・0%増えた一方、消費支出は4・7%減りました。
所得に対する貯蓄の増加の割合を示す平均貯蓄率は35・2%と前年度比3・2ポイント上昇しました。
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が余儀なくされ、お金が貯蓄に向かっていることを表しています。
消費支出は4・9%減
2人以上世帯全体の消費支出は月平均27万6167円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年度から4・9%減りました。
消費増税後の14年度(5・1%減)に次いで2番目の落ち込みとなりました。
このうち勤労者世帯をみると、2020年度の可処分所得は月平均で49万6872円になりました。
景気低迷を背景に世帯主収入が前年比で実質2・1%減と落ち込む一方、特別収入が前年度の3倍に拡大しました。
2020年4月に決めた経済対策で1人あたり一律10万円が特別定額給付金として支給され、所得全体を押し上げました。
所得は増えたが、消費は落ち込んでいる
消費支出は月平均で30万4508円となり、実質ベースでは3年連続で前年度を下回りました。
減少率は4・7%で、19年度の0・6%減から拡大しました。
平均消費性向は61・3%
2020年度に支出が減った主な項目 | ||
項目名 | 月平均 | 前年度との差 |
消費支出全体 | 30万4508円 | ▲1万6065円 |
外食 | 1万1796円 | ▲4188円 |
洋服類 | 1万260円 | ▲2183円 |
宿泊料 | 983円 | ▲1063円 |
パック旅行費 | 632円 | ▲2115円 |
交際費 | 1万3016円 | ▲3857円 |
新型コロナによる緊急事態宣言や外出自粛の影響で、パック旅行向けの支出は月平均632円と、前年度の2747円から8割近く減りました。
外食も4188円減の1万1796円となり、在宅勤務の広がりを受けて洋服類の支出も1万260円と、前年度から2183円減りました。
巣ごもり消費で光熱・水道や家電・家具などの耐久財は支出が増えたものの、全体を押し上げるほどではありませんでした。
所得が増え消費が減ることで、自由に使える手取り収入を意味する可処分所得に対し、消費の割合がどれほどだったかを示す平均消費性向は61・3%となりました。
19年度の66・9%に比べ5・6ポイント低下しました。
調査手法の見直しなどの影響で単純比較はできないが、家計調査では1970~80年代は70%台後半、90~2010年代はおおむね70%台前半でした。
給付金を含めて所得はためこみ、消費は控えたことで、消費性向は歴史的な低水準にあります。
2020年に家計は36兆円の現預金を積み上げ
預金が膨らむ傾向に「正直、不思議でしょうがない」と疑問の声が上がります。
ゴールドマン・サックス証券は、2020年に家計は36兆円の現預金を積み上げていると推計します。これは、国内総生産(GDP)の7%近い水準に相当します。
過去の傾向から今後の展開を推測すると、一定規模の預貯金が取り崩されることで、今後2年間で3・9兆円の消費押し上げが期待されます。
しかし、日本は先進国の中でもワクチン接種が遅れ、東京都や大阪府などへの緊急事態宣言が5月末まで延長されました。
コロナ下で落ち込んだ経済の回復は米国などと比べて進んでいません。
個人消費の回復は遠い
総務省が同日発表した総消費動向指数をもとに足元の動向を分析すると、2021年1~3月期の個人消費は前期比実質で1・9%下がっており、コロナ下での自粛の影響はなお色濃く出ています。
家計に滞留するお金が使われるようになり、個人消費が景気のけん引役になるにはまだ時間がかかるようです。