厚生労働省は2022年9月26日、介護保険制度見直しに向けた「給付と負担」の議論を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で本格的に始めました。
原則1割としているサービス利用時の自己負担割合について、2割負担の対象者拡大などを軸に検討します。
要介護認定者や介護費用の増大を踏まえ、制度の持続性を高める方策を探ります。
詳しく解説していきます。
介護サービスは原則1割負担だが、所得に応じ2~3割負担
介護保険制度は2000年度に始まりました。
制度内容や料金体系などを3年に1度見直しています。
次回改定は24年度の予定で、審議会の議論を踏まえて決まります。
最大の論点は介護サービスを利用した場合の自己負担の引き上げです。
現在は原則として1割負担となっています。
例えば1万円のサービスを利用すると1000円を自己負担することになります。
利用者負担割合は、65歳以上の方は1割または一定以上の所得のある場合は2割、特に所得の高い場合は3割となります。
40歳から64歳までの方は1割となります。
3割負となる人
- 65歳以上の方で本人の前年の合計所得金額※1が220万円以上
- 前年の合計所得金額※2と前年の年金収入の合計が
・同一世帯の65歳以上の人数が1人の場合、340万円以上
・同一世帯の65歳以上の人数が2人以上の場合、合計で463万円以上
2割負担となる人
- 65歳以上の方で本人の前年の合計所得金額※1が220万円以上
- 前年の合計所得金額※2と前年の年金収入の合計が
・同一世帯の65歳以上の人数が1人の場合、280万円以上340万円未満
・同一世帯の65歳以上の人数が2人以上の場合、合計で346万円以上463万円未満
の両方にあてはまる方または
- 65歳以上の方で本人の前年の合計所得金額※1が160万円以上220万円未満
- 前年の合計所得金額※2と前年の年金収入の合計が
・同一世帯の65歳以上の人数が1人の場合、280万円以上
・同一世帯の65歳以上の人数が2人以上の場合、合計で346万円以上
※1 合計所得金額から、土地建物等の譲渡所得に係る特別控除額を差し引いて算定します。
※2 合計所得金額から、公的年金等に係る雑所得金額及び土地建物等の譲渡所得に係る特別控除額を差し引いて算定します。
65歳未満の方、市民税非課税の方、生活保護受給者は1割負担となります。
介護費用は増加の一途をたどっている
介護給付費は制度が始まった2000年度の3倍以上に
高齢化により日本の介護費用は増え続けています。
利用者の自己負担分を除いた介護給付費は20年度に10兆2311億円と初めて10兆円を超え、制度が始まった00年度の3倍以上に膨らみました。
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利用者が支払う保険料は、制度開始当初の2倍超
65歳以上が支払う保険料も増え続けています。
21~23年度は月額平均6014円と制度開始当初の2倍超になりました。
40年度には9000円程度に達するとの見通しもあります。
制度の持続性確保のため、サービス見直しで給付を抑制するとともに、自己負担が過度に増大しないようにすることが大きな課題になっています。
制度の持続性確保のため2割負担の対象者拡大
21年4月末時点で要介護(要支援を含む)の認定者数は684.2万人います。
認定を受けている人のうち「現役並み所得」として3割負担する人は4%程度、「一定以上所得」として2割負担する人は5%程度です。
厚労省は部会で、高齢者負担が増すとの懸念から、引き上げに反対する声を紹介しました。
一方で制度の持続性確保のため所得など能力に応じた負担を求めることに賛成する意見も示しました。
医療保険では今年10月から一定所得以上の窓口負担が1割から2割に引き上がることを踏まえ、医療とのバランスを考えるべきだとの意見もあります。
「ケアプラン」作成の有料化も論点
適切な介護を受けるための計画書「ケアプラン」作成の有料化も主要な論点となっています。
現在は全額が介護保険給付の対象で、利用者の自己負担はありません。
プラン作成を担うケアマネジャーの処遇改善などを見据えて有料化を求める意見があります。
一方で部会では有料化による入り口の負担増で利用控えが起こるとの反対意見も目立ちます。
厚労省はこのほか、要介護認定1、2の人の給付見直しや介護老人保健施設などの多床室の室料負担なども論点として挙げています。
まとめ
介護保険制度は2000年度に始まりました。
制度内容や料金体系などを3年に1度見直しています。
次回改定は24年度の予定で、審議会の議論を踏まえて決まります。
原則1割としているサービス利用時の自己負担割合について、2割負担の対象者拡大などを軸に検討します。
高齢化により日本の介護費用は増え続けています。
利用者の自己負担分を除いた介護給付費は20年度に10兆2311億円と初めて10兆円を超え、制度が始まった00年度の3倍以上に膨らみました。
65歳以上が支払う保険料も増え続けています。
21~23年度は月額平均6014円と制度開始当初の2倍超になりました。
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