この記事では「妊娠・出産・育児を理由とする解雇の禁止」を解説していきます。
従業員が妊娠・出産をすることで会社の生産性が落ちることがあっても、それを理由に不当な解雇が行われないように労働者を守る法律が存在します。
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産休中と出産30日は解雇できない
労働基準法の第19条には、下記のように記載されています。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
会社は、産前・産後休業中とその後30日間は女性労働者を解雇することはできません。この期間は経営環境が悪化したときなども含め、どのような理由があっても解雇することはできません。
妊娠中・産後 1 年以内の解雇は証明が必要
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律では、第9条の1項と4項に下記のように記載されています。
事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
巷では、妊娠を契機に労働者への待遇を悪くして自主退職を誘導したり、退職の強要や解雇を言い渡したりする事案は発生していますが、これらは違法の可能性があります。
妊娠中や産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠、出産、産休を取得したことなど以外の正当な理由があることを証明できない限り、無効となります.
また、男女雇用機会均等法第9条の3項では下記のように記載されています。
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
たとえば、労働基準法「第67条」では、事業主に対し労働者の就業中の育児時間の確保を求める条文があります。
これらの行為によって生産性が落ちたとしても、降格や契約の変更をしてはならないということです。
厚生労働省令で定める事項
- 妊娠したこと
- 出産したこと
- 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと
- 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと
- 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと
- 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと
- 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと
- 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと
- 妊娠又は出産に起因する症状※により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと
不利益な取扱いと考えられる例
- 解雇すること
- 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
- あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
- 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
- 降格させること
- 就業環境を害すること
- 就業環境を害すること
- 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
- 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
- 不利益な配置の変更を行うこと
- 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
育児休業を理由に解雇はできない
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律では、第10条に下記のように記載されています。
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
育児休業は法律で認められている労働者の権利です。事業主としては利益に反することであっても事業をする限りこれを遵守する必要があり、退職を迫ったり解雇することは違法になります。
解雇の形式は3種類ある
解雇の形式には下記の3つがあります。
- 懲戒解雇
- 普通解雇
- 整理解雇
それぞれわかりやすく解説していきます。
懲戒解雇
懲戒解雇とは民間企業において、事業主が会社の秩序を乱した労働者に対して課すことができる制裁罰の一つです。懲戒解雇になると退職金は出ません。
なお、公務員の場合は懲戒解雇ではなく、懲戒免職と呼ばれます。
普通解雇
普通解雇とは民間企業において、懲戒解雇には当てはまらないが会社の就業規則に定められた解雇事由に相当する際に行われる解雇です。業務を行う能力が不足している場合などに適用されます。
普通解雇は公務員に対する分限免職に相当します。
整理解雇
整理解雇とはいわゆるリストラのことです。経営不振や事業規模の縮小など経営上の理由で人員整理を行うための解雇になります。
働く女性をめぐる問題点
妊娠・出産を契機に7割が退職
厚生労働省の第1回21世紀出生児縦断調査では、子どもが1人の女性の場合、出産する1年前には仕事を持っていた人(有職者)のうち約7割が、出産6か月後には無職となっています。
出典:内閣府
また、その後の母親の就業状況をみると、女性の有職率は出産半年後25%に対して4年後には46.8%と上昇しているが、このうちパート・アルバイトの割合が22.2%と常勤(15.9%)よりも高くなっています。
このように、妊娠・出産を機に仕事と子育ての二者択一を迫られるとともに、いったん離職すると、パート・アルバイトに比べ、常勤での再就職は少ない状況にあります。
出産前後で仕事を辞める理由
日本労働研究機構の「育児や介護と仕事の両立に関する調査」によると、出産前後で仕事を辞める理由としては、「家事、育児に専念するため、自発的にやめた」(52.0%)が最も多いが、「仕事と育児の両立の難しさでやめた」(24.2%)と「解雇された、退職勧奨された」(5.6%)となっており、約3割が両立環境が整わないこと等を理由に辞めています。
また、両立が難しかった具体的な理由としては、「自分の体力がもたなそうだった」(52.8%)、「育児休業をとれそうもなかった」(36%)、「保育園等の開所時間と勤務時間が合いそうもなかった」(32.8%)、「子供の病気等で度々休まざるを得ないため」(32.8%)など、職場に両立支援制度があっても、実際には利用しにくい状況があることを示唆する回答も多いです。
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