女性向けの生理用品を学校のトイレや役所の窓口に常備する動きが広がっています。
経済的理由などで生理用品を買えない「生理の貧困」問題が新型コロナウイルス禍を機に表面化しています。
2021年7月時点で約580自治体が無償配布を実施または検討しているほか、民間企業の支援も進んでいます。
専門家は「一過性の取り組みとしないための議論が必要だ」と話しています。
生理用品もトイレにあるのを当たり前にしたい
「トイレットペーパーと同じように、生理用品もトイレにあるのを当たり前にしたい」。5月から女子トイレに生理用品を備えている都立新宿高校(東京・新宿)の藪田憲正統括校長は話します。
都は同校を含む7校で試行したのち、9月から全ての都立高校など約250校で配置し始めました。
同校では予備のトイレットペーパーと同じように生理用品を入れた箱を洗面台の脇に置いています。
1階の女子トイレのみですが、半年足らずで400枚以上が使われ、2学期からはさらに消費ペースが上がっているといいます。
以前から保健室には常備していましたが、年10枚ほどしか使われていなかった。藪田統括校長は「遠慮して1つしか持っていかない生徒もいたと聞く。より自由に使えるようになった」と手応えを語ります。
ただ「生理の悩みを持つ生徒が保健室を訪れなくなると話を聞きづらい」という養護教諭の声もあり、「さらに工夫を重ねたい」としています。
生理用品の無料配布が増加
「生理の貧困」はコロナ禍で経済的に苦しくなった女性が訴えて問題が表面化しました。
これをきっかけに支援の輪が広がり、内閣府によると、無償配布を実施したり検討したりしている自治体は5月時点で約250でしたが、7月時点で約580に増えました。
東京都以外にも神奈川県大和市などが小中学校で常備し始めています。
政府が3月に拡充を決めた「地域女性活躍推進交付金」を活用して生理用品を購入し、役所の生活相談窓口などで配布する堺市や高知県などの自治体もあります。
民間企業の生理用品支援
民間企業も支援に乗り出しています。
スタートアップの「オイテル」は個室トイレの壁に取り付けられた専用機器にスマートフォンをかざすと、生理用品を無料で受け取れるサービスを8月から始めました。
首都圏を中心に商業施設や公共施設など20カ所以上に設置されています。
「予期せず生理がきたが持ち合わせがない」「取り換えに行くときに周囲の目が気になる」など負担を感じる女性は多いです。
オイテルのサービスは専用機器から流す広告収入で設置費用をまかなう仕組みです。
飯崎俊彦専務は「困窮しているかどうかにかかわらず、後ろめたく思わないで利用してほしい」と話します。
生理用品の継続支援が必要
横浜国立大の藤掛洋子教授(開発人類学)は「生理の貧困」を招いた一因として「生理や性に関して人前で話すことへのタブー視」を挙げています。
自治体の生理用品の無償配布は、使用期限が迫った防災備蓄を配る緊急的な措置も多く、継続支援のあり方が課題に挙がります。
「一過性のものにせず、改善に向けた議論を続けるべきだ」と強調しています。
女性は生理がある約40年間、生理用品の購入費を負担しなければいけません。
藤掛教授は「生理用品を軽減税率の対象にするなど、国が大胆に制度設計を変更し、社会全体の意識を変えるよう促すべきだ」とも指摘しました。
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