離婚するときは婚姻期間中に築いた夫婦の財産を分けあうことになりますが、実は年金も分割することができます。
この制度を利用するには期限内の申請が必要です。
この記事を読めば、「制度の種類」「手続きの方法」などを知ることができます。
公的年金についてよく分らない方は下記のリンクを参照してください。
離婚によって分割できる年金は「厚生年金」だけ
日本の公的年金には、「国民年金」と「厚生年金」があります。
このうち、離婚によって分割できる年金は「厚生年金」だけです。
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度です。
会社員や公務員は国民年金にも加入しており、その上で厚生年金にも加入しています。
日本にはサラリーマンが多く、2つ公的年金を貰える人が多いので「日本の年金は2階建て」と言われています。
第3号被保険者が元パートナーの厚生年金を受け取れる理由
共働きの家庭が多くなっていますが、それでも
夫は「フルタイム」で働き、妻は時間があれば「パート」
という組み合わせが多いです。
この場合、夫は厚生年金を支払い、老後は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受け取ることになります。
一方で妻は、扶養を外れないように(年収130万円以下に抑える)働き、家事もする人が多いです。
この場合、妻は老後は「老齢基礎年金」だけしかもらえません。
妻は家庭の仕事をやり、夫を支えているのに老後に貰える年金に差がありすぎる!不公平だ!ということで、第3号被保険者が元パートナーの厚生年金を分割して受け取れるようになりました。
年金を分割する制度は「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類
厚生年金を分割する制度は下記の2つがあります。
- 合意分割制度
- 3号分割制度
簡単に説明すると、「合意分割制度」は合意もしくは裁判手続きにより分割して受け取れる制度で、「3号分割制度」は相手の合意を必要としないで分割して受け取れる制度です。
それぞれわかりやすく解説していきます。
合意分割制度
平成19年4月1日以後に離婚が成立した場合、離婚の翌日から起算して原則2年以内に請求すれば、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割できます。
なお、平成19年4月1日前の婚姻期間中の高齢年金記録も分割の対象になります。
分割するには、当事者の合意(合意が得られない場合は裁判手続き)により、分割割合を定める必要があります。
分割は、婚姻期間中の厚生年金記録の総額の多い方から少ない方に対して行われ、分割割合は、分割後の当事者それぞれの厚生年金記録の総額(婚姻期間中の分に限る)が、分割わされた側より分割を受けた側のほうが多くならない範囲で定めることとされています。
分割後は、分割後の厚生年金記録に基づいた老齢厚生年金等が支給されます。
ただし、老齢厚生年金を受けるためには、自身が年金の支給開始年齢に達していること、自身で10年以上の受給資格期間を満たしていることが必要です。
老齢厚生年金を受給中に分割が行われた場合は、分割後の厚生年金記録で年金額が再計算されます。
なお、分割の影響を受けるのは、厚生年金の報酬比例部分のみで、定額部分や国民年金の老齢基礎年金は分割の影響を受けません。
また、婚姻期間中に3号分割(後述)の対象となる期間が含まれるときは同時に3号分割の請求があったとみなされます。
その場合、3号分割の対象となる期間は、3号分割のによる分割に加え、合意分割による分割が行われることになります。
合意分割の請求手続き
合意分割の請求手続きは年金事務所、共済組合等で行います。
年金分割のための情報が書かれた「情報通知書」を年金事務所に請求し、受け取る
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夫婦で分割の割合を話し合う
(話し合いで決まらない場合は、裁判所の調停や審判によって決定)
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「標準報酬改定請求書」などの必要書類を年金事務所に提出する
年金事務所に提出する必要な書類は下記の5つです。
- 標準報酬改定請求書」(年金事務所や年金機構のホームページからダウンロード可能)
- 請求者の「マイナンバーカード等」または「年金手帳」または「年金基金番号通知書」
- 婚姻期間を明らかにできる資料(「戸籍謄本」や「戸籍の全部事項証明書」など)
- 直近1ヵ月以内に作成された2人の生存を証明できる資料(「戸籍謄本」や「「戸籍の全部事項証明書」など)
- 年金分割を明らかにできる資料(分割割合に合意したことがわかる「公正証書」や裁判所から発行される審判書の「謄本」など)
詳細については年金事務証、共済組合等に問合わせてください。
3号分割制度
平成20年5月1日以後に離婚が成立した場合、国民年金代3号被保険者であった妻(または夫)から請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3被保険者期間における夫(または妻)の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で2分の1ずつ分割できます。
この場合、当事者双方の合意は必要ありません。
ただし、離婚の翌日から換算して原則2年以内に請求する必要があります。
なお、分割の影響を受けるのは、厚生年金の報酬比例部分のみで定額部分や国民年金の老齢基礎年金は分割の影響を受けません。
分割後の老齢厚生年金等の受給については、先述の「合意分割制度」の場合と同様です。
3号分割の請求手続きは年金事務所、共済組合等で行います。
3号分割制度の手続き
3号分割制度の手続きは年金事務所、共済組合等で行います。
3号分割の場合、夫婦の合意は必要なく、年金分割の請求ができます。
離婚してから2年以内に「標準報酬改定請求書」に必要書類を添えて年金事務所に申請するだけです。
年金事務所に提出する必要な書類は下記の4つです。
- 「標準報酬改定請求書」(年金事務所や年金機構のホームページからダウンロード可能)
- 請求者の「年金手帳」または「年金基金番号通知書」
- 婚姻期間を明らかにできる資料(「戸籍謄本」や「戸籍の全部事項証明書」など)
- 直近1ヵ月以内に作成された2人の生存を証明できる資料(「戸籍謄本」や「「戸籍の全部事項証明書」など)
詳細について年金事務所、共済組合等に問合わせてください。
合意分割と3号分割が同時に行われる場合
合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
したがって、3号分割の対象となる期間は、3号分割による標準報酬の分割に加え、合意分割による標準報酬の分割も行われます。