この記事では、「公衆衛生」について解説していきます。
公衆衛生は多くの分野からなり、しっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、公衆衛生を形成する分野を一つひとつ解説していきます。
公衆衛生は社会保障制度の一つです。
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公衆衛生とは
公衆衛生とは、「共同社会の組織的な努力を通じて、 疾病を予防し、寿命を延長し、身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である」とされています。
内容としては環境保健、疾病予防、健康教育、健康管理、衛生行政、医療制度、社会保障があげられています。
つまり、予防と健康の社会科学、社会医学になります。
公衆衛生は多くの分野からなりますが、代表的な区分としては疫学、生物統計学、医療制度があります。
また、環境・社会・行動衛生、職業衛生(労働安全衛生)、食品衛生も重要な分野です。
公衆衛生は集団の健康を対象とするものです。一方、個人の疾病を対象にするものを臨床医学といいます。
健康の概念は、社会や環境、時代とともに変化しており、公衆衛生活動も変化してきました。
現代の公衆衛生は予防医学、環境改善、生活水準の補償、健康教育の推進など、実践の学問です。
健康に影響をおよぼす要因には、細菌・ウイルスなどの病因のほか、宿主に起因する遺伝的要因、生物化学的環境やライフスタイルなどさまざまなものがあります。
多くの場合、それぞれの要因は単独で健康に影響を与えるものではなく、複雑に作用しあうことで健康障害を引き起こします。
疫学
公衆衛生は個人ではなく集団を対象とする為、集団における健康に関係する状態や疾患の発生頻度を測定し、その関連を検討するための方法論が必要になります。
この方法論と応用実践が疫学という学問で、公衆衛生が化学であるための基盤となります。
臨床の現場においてもEBM(根拠に基づいた医療)を進めるため、疫学の概念や手法が活用されています。
疫学とは、特定の集団における健康に関連する状況や事象(疾病・死亡・行動など)の頻度や分布を調べ、それらの規程因子との関連を検討する研究分野です。
これらの研究を推進することで疾病の予防、健康の増進を図ることが目的です。
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保健統計
国や地域に保険医療を提供するためには、集団の健康度、保険衛生、社会生活の状況を定量的に把握することが不可欠です。
その基礎データを得ることを目的として、人口数、出産・死亡数などを推計する人口統計のほか、疾病・傷病状態などを把握する統計などがとられています。
保健統計の種類は「人口統計」と「疾病や障害に関する統計」があります。
人口統計には「人口静態統計」「人口動態統計」
疾病や障害に関する統計には「国民生活基礎調査」「患者調査」などがあります。
医の論理と患者の人権
医の論理とは、医療行為や医学研究において守るべき行動の規範や基準のことです。
医療に従事する者は、治療に関するどのような決定においても患者にとって最善の利益を考慮し、臨床上の決定を行う必要があります。
医の論理をめぐる歴史は、古くは「ヒポクラテスの誓い」に始まり、近代では世界医師会(WMA)が主体となって医の論理の具体化が行われてきました。
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医師法と関係法規
医師や医療従事者は、人間の生命に直接的に影響を及ぼす行為を業務としています。
そのため、各資格者の義務や業務内容の範囲、業務を行う施設の設備などについて、厳格に法律で定められています。
医療制度は「医師法」「医療法」だけでなく、疾病予防、保険、福祉、環境衛生などの各分野の法律によって支えられています。
医療の社会的側面と医療法規がどのように関連しているかを体系的に理解することが求められます。
診療情報と各種証明書
医療を行う上では、診療の過程で知った患者の健康に関するすべての情報を記録する必要があります。
診療録(カルテ)や処方箋などの診療記録は、記録事項や保存期間が法律によって規定されています。
これは、チーム医療の推進のためにも診療情報の共有は不可欠です。
診療情報とは、医療従事者が診療にあたって知った全ての情報を指し、患者の診療情報を紙や電子媒体などに記録したものを診療記録といいます。
医療施設における診療記録の制作・管理については、「医師法」など各種関連法規で規定されています。
終末期医療の概念
悪性腫瘍などの生命を脅かす疾病に直面している患者に対しては、治療と並行して身体的・精神的苦痛などを和らげてQOLを高める緩和ケアを重点的に行います。
さらに死に直面した患者に対しても、尊厳を尊重し、人間らしい死を求める決定権を尊重しなければいけません。
メモ
QOL(クオリティ オブ ライフ)。WHOは1994年にQOLを「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
医療の質と安全の確保
医療の量的な整備が進むにつれ、医療の質と安全性の向上が求められるようになってきました。
医療機関においては、医療安全管理対策が進められるとともに、適切で安全な医療が提供されているかを第三者の立場から評価する病院機能評価などの受審が行われています。
医療の質を評価するにあたっては、「医療提供の構造」「過程」「結果」の3つの側面から行います。
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医療法と医療体制
日本の医療提供体制は、国民皆保険制度とフリーアクセスの下で、必要な医療を受けることができるよう整備が進められ、国民の健康を確保するための重要な基盤となっています。
一方で、医療環境は日々変化しており、将来にわたり質の高い医療を断続して提供できる体制が求められています。
日本の医療提供体制の基本となる「医療法」は1948年に制定され、医療施設の基準などが定められました。
社会保障と医療経済
全ての国民は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を有するが、個人の努力(自助)だけでは対応できないリスクも多いです。
国民が相互に連携して支えあい(共助)、また国が必要な扶助を行う(公助)ことにより国民の生存権を保障するのが社会保障の概念です。
この「自助」「共助」「公助」により、集団生活が行われています。
地域保険
地域とは、相互に共通意識や共通文化を持つ人々の集団を指します。
地域における保健活動において最も重要なのは、地域に生活する人々の実態を具体的に把握し、地域の特性を生かした保健と福祉のまちづくり、快適で安心できる生活環境の確保を実現することです。
地域保険における活動は「地域保険法」の基本方針に基づいて行われています。
基本方針は地域保健対策の総合的な推進・円滑な実地を目的に定められていて、その内容は国民のニーズの変化、介護保険や健康増進法の策定、医療制度改定など、社会的背景に応じて改定が行われています。
成人保険と健康増進
健康増進は、疾病の予防だけでなく、健康状態を向上するための行動を含んだ積極的な概念です。
健康寿命の延伸とQOLの向上を目指して、生涯を通じて健康増進のために個人が努力できるよう、社会全体が支援する体制を整備するため、「健康日本21」などの施策が行われています。
メモ
QOL(クオリティ オブ ライフ)。WHOは1994年にQOLを「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
メモ
健康日本21とは、健康増進法に基づき策定された「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」は、国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向や国民の健康の増進の目標に関する事項等を定めたものです。
母子保健
母子保健の目的は、「健康な次世代を育む」という、人類にとって非常に重要なものです。
母子保健には母親を対象とした母性保険と、子どもを対象とした乳幼児保険の2つの枠組みが含まれますが、母子相互作用の重要性、妊婦・出産・育児期に適切なサービス提供を目的として、母親と子供への一貫した対策が取られています。
高齢者保健
高齢者は日常的に自覚症状を訴えることが多く、受診率が極めて高いです。
また、高齢者の疾病は特に慢性的な経過をたどることが多く、入院医療費の割合が高くなります。
老年人口の増加にともなって、これらは老人医療費増大の主要な原因となっています。
障害者福祉
障害者の福祉施策はノーマライゼーションの理念に基づいて展開されています。
以前までは行政がサービスの支給を決定する処置制度が中心でしたが、支援費制度以降、現在の障害者総合支援法では、障害者が自らサービスを選択する契約制度が中心となり、また障害者が地域で安心して生活できるように自立を支援する体制の整備が進められています。
メモ
ノーマライゼーションとは、「障碍者が一般市民と同じ環境で、同じ条件で、家庭や地域でともに生活すること」を目指す概念です。
精神保健福祉
精神保健福祉施策では、「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針のもと、精神障害者の社会復帰を推進する施策が進められています。
『障害者総合支援法』の施行により、障害の種別を超えて福祉サービスが強化される中、精神障害者の福祉施策においても強化・推進が図られています。
歯科保健
歯・口腔の健康は、食事の摂取や発音などの機能を良好に保つために欠かせないものであり、QOLを大きく左右します。
乳幼児期からライフステージに応じた歯科疾患予防施策が「健康日本21」や『歯科口腔保健の推進に関する法律』に基づき推進されています。
歯科疾患は有病率が高く、特に2大歯科疾患である「虫歯」と「歯周病」は歯の喪失原因の約9割を占めます。
歯の喪失は口腔機能の低下をもたらし、QOLを大きく損ないます。
メモ
QOL(クオリティ オブ ライフ)。WHOは1994年にQOLを「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
メモ
健康日本21とは、健康増進法に基づき策定された「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」は、国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向や国民の健康の増進の目標に関する事項等を定めたものです。
感染症対策
感染症は文明の発祥以来最も多くの命を奪っており、公衆衛生学や疫学は感染症対策を目的として発展してきました。
医学の進歩に伴い感染症の多くは制御可能な疾患となりましたが、ヒトやモノのグローバル化が進む現代において、感染症対策はなお公衆衛生学の重要課題の一つです。
感染症とは、病原体となる微生物(細菌、真菌、ウイルスなど)が宿主となる生物に進入・定着し、増殖することを感染といい、感染のための宿主が何らかの症状を呈(てい)する状態を感染症といいます。
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食品保健
食品の安全性に対して消費者に疑問を与える事件が続いたことを契機に、食品の安全性を確保するための『食品安全基本法』が制定されました。
食品に関する法律としては他に、食品の衛生上の問題を扱う『食品衛生法』、食品の表示について定めた『食品表示法』などがあります。
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栄養
がん、脳卒中、心臓病などの生活習慣病の発症は、生活習慣、とりわけ食生活との関連が深いことから、健康的な食生活の実践を通じた疾病の一次予防が重要になっています。
そのため、栄養対策もかつての栄養欠乏症の予防を主眼としたものから、過剰摂取への対策も考慮した対策へと転換してきました。
学校保健
学校保険とは、学校において、児童生徒等の健康の保持増進を図ること、学校教育活動に必要な健康や安全への配慮を行うこと、自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力を育成することなど、学校における保健管理と保険教育です。
産業保健
産業保健活動は、大きく「労働基準に関する活動」と「労働者の健康管理に関する活動」とに分けられます。
前者は主に『労働基準法』に基づき、労働条件や労働災害補償を対象とします。
後者は主に『労働安全衛生法』に基づき、健康診断・健康相談や産業医の選任・職務を対象とします。
環境保健
環境は人間の健康と密接な関係があります。
人間は生態系の頂点に位置しているため、空気や土壌などの環境による直接影響だけでなく、飲食物などを介した間接的な影響も受けます。
そのため、環境汚染について発生源、汚染状況、生態系への影響、人への健康影響などについて幅広く把握することが必要になります。
国際保健
世界には現在200の国・地域が存在しますが、気候、風土、政治、経済、文化が異なり、人々の生活も多様です。
保険医療の水準も先進国と途上国では大きく異なっていて、このような保険医療の格差を少しでも小さくする国際的な取り組みが行われています。