社会保障

公的扶助とは?公的扶助(生活保護)の詳細をわかりやすく解説

公的扶助、生活保護

この記事では、日本の「公的扶助」制度について解説していきます。

公的扶助(生活保護)の基本的な情報を網羅していますので、コレだけ読めば公的扶助による自身や家族の保障状況を理解できます。


公的扶助制度は社会保障制度の一つとして、社会保険制度と並び国民・住民生活を保障するものです。

公的扶助制度は、国民の健康と生活を最終的に保障する制度として位置づけられています。公的扶助による救済は、貧困・低所得者を対象としていて、最低生活の保障を行う救貧的機能を有しています。


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公的扶助とは(生活保護)

公的扶助とは(生活保護)

公的扶助とは、厚生労働省(実施は地方自治体)が管理運営主体となって、生活困窮者に対し「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するとともに、自立を助長する制度です。

扶助とは

扶助(ふじょ)とは、力添えをして助けること。援助。

 

生活保護法に基づいて行われ、生活保護制度と呼ばれます。一般的に「生活保護」と略されます。


財源は、国(3/4)及び自治体(1/4)の一般収入によってまかなわれ、受給者に醵出義務はありません。

支給される生活保護費

支給される生活保護費

厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。

扶助の種類は8つ+1

生活保護は、8種類の「扶助」と、1つの「控除」があります。

必要に応じて1種類以上の支援が受けられます。


医療扶助, 介護扶助は現物(サービスなど)給付で, それ以外は金銭給付が原則です。

  1. 生活扶助
  2. 教育扶助
  3. 住宅扶助
  4. 医療扶助
  5. 介護扶助
  6. 出産扶助
  7. 生業扶助
  8. 葬祭扶助
  1. 勤労控除


生活保護の受給要件

生活保護を受けるには下記のすべてに該当する必要があります。

  1. 雇用保険被保険者ではない、また雇用保険の求職者給付を受給できない者
  2. 本人収入が月8万円以下の者
  3. 世帯全体の収入が月25万円以下(年300万円以下)の者
  4. 世帯全体の金融資産が300万円以下の者
  5. 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない者
  6. 全ての訓練実施日に出席する者(やむを得ない理由がある場合は8割以上の出席)
  7. 訓練期間中から訓練終了後, 定期的にハローワークに来所し職業相談を受ける者
  8. 同世帯の者で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない者
  9. 既にこの給付金を受給したことがある場合は, 前回の受給から6年以上経過している者
  10. 過去3年以内に失業等給付等の不正受給をしていないこと


給付の水準

場所や家族構成などによって給付額は異なります。

給付水準を示す例は下記のとおりです。

  • 東京都区部等における標準3人世帯(33歳, 29歳, 4歳)の場合で、158,380円(月額)

  • 東京都区部等における高齢単身世帯(68歳)の場合で、79,790円(月額)


生活保護の現状

  • 生活保護費は、2017年度当初予算で3.8兆円を計上しています。

  • 被保護世帯数は、2017年11月時点で1,642,971世帯となっています。

  • 被保護者数は、2017年11月時点で2,125千人となっています。



生活保護の種類と内容

生活保護の種類と内容


1.生活扶助(食費、被服費、光熱費等)

生活扶助基準は、衣食などのいわゆる日常生活に必要な基本的、経常的経費についての最低生活費を定めたものである。この生活扶助基準は、第1類費と第2類費に分けられ、そして特別の需要のある者にはさらに各種加算が合算されます。


【第1類費(個人的経費)】
飲食物費や被服費など個人単位に消費する生活費についての基準であり、年齢別に設定されています。


【第2類費(世帯共通的経費)】
世帯全体としてまとめて支出される経費であり、例えば、電気代、ガス代、水道代などの光熱水費や家具什器費などである。この第2類費は、世帯人員別に設定されています。

なお、冬季においては、寒冷の度合いなどにより、暖房費などの必要額が異なるため、こうした事情を考慮し、都道府県を単位とて地域別(6区分)に冬季加算額が設定されています。


【加算(特別の需要のある者が必要とする生活費)】
 特別な需要に対応するものとして加算制度があり、第1類費、第2類費のほかにさらに一定額を上積みします。

妊産婦加算・・・・ 妊婦及び産後6か月までの産婦

老齢加算・・・・・ 70歳以上の老人又は68歳以上70歳未満の病弱者

在宅患者加算・・・ 在宅の傷病者で栄養補給を必要とする者

母子加算・・・・・ 児童(18歳になる日以後の最初の3月31日までの間にある者)を抱える母(父)子世帯

障害者加算・・・・ 身体障害者障害程度等級表1級、2級及び3級の身体障害者若しくは国民年金法施行令別表1級及び2級障害者

2.住宅扶助(家賃、地代等)

住宅扶助には、「家賃、間代等」と「住宅維持費」があります。


【家賃、間代等】
借家借間に居住する被保護者に対し、家賃等や転居時の敷金、契約更新料などを補填するものとして支給されます。

・実費(地域に応じて上限額を設定)


【住宅維持費】
居住する家屋の補修や、畳、建具等の従属物の修理、豪雪地帯においては雪囲い、雪下ろし等に必要な経費を補填するものとして、必要を要すると認定された場合にのみ支給されます。

・年額12万2,000円
(補修規模は、社会通念上最低限度の生活にふさわしい程度)

3.教育扶助(学用品費等)

教育扶助は、小学生、中学生に対し、義務教育にかかる必要な学用品費や教材代、給食費等を補填するものとして支給されます。

(※ 修学旅行代は文部科学省の就学援助制度から支給)

・基準額(月額):小学校等2,600円、中学校等5,000円
教材代、学校給食費、交通費:実費学習支援費(クラブ活動費)(年額):実費(小学校等上限額 1万5,700円以内、中学校等上限額 5万8,700円以内)

4.介護扶助

介護扶助は、介護保険サービスの利用にかかる経費を補填するものとして支給されます。

・原則現物給付です。

5.医療扶助

医療扶助は、病院等における医療サービスの利用にかかる経費を補填するものです。

・原則現物給付です。

6.出産扶助

出産扶助は、出産に伴い必要となる分娩介助や検査、室料などの経費を補填するものとして支給されます。


・施設分娩の場合:実費(上限額29万5,000円以内)

・居宅分娩の場合:実費(上限額25万9,000円以内)

7.生業扶助(生業費、技能習得費、就職支度費)

正業扶助は、「生業費」と「技能習得費」、「就職支度費」の3つがあります。


【生業費】
生計の維持を目的とする小規模の事業を営むための資金又は生業を行うための器具、資料代の経費を補填するものとして支給されます。

・実費(上限額4万6,000円以内)


【技能習得費】
技能修得費・・・・生計の維持に役立つ生業につくために必要な技能を修得するための授業料、教材代等の経費を補填するものとして支給されます。

・実費(上限額8万円以内)


高等学校等就学費・高校生に対し、高等学校教育にかかる必要な学用品費や教材代、交通費等を補填するものとして支給されます。

・基本額(月額):5,200円


【就職支度費】
就職が確定した者に対し、就職のために直接必要となる洋服代、履物等の購入経費、就職の確定した者が初任給が支給されるまでの通勤費を補填するものとして、必要な場合に支給されます。

・3万1,000円以内

8.葬祭扶助

葬祭扶助は、葬祭に伴い必要となる葬祭料や読経料などの経費を補填するものとして
支給されます。

・大人の場合:実費(上限額20万6,000円以内)

・小人の場合:実費(上限額16万4,800円以内)

9.勤労控除

勤労控除は、「基礎控除」と「新規就労控除」、「未成年者控除」の3つがあります。


【基礎控除】
就労に伴い経常的に生じる就労関連経費を補填するとともに、就労意欲の助長を促進するため、就労収入の一部を手元に残すものです。

・就労収入額に応じて設定(全額控除額1万5,000円)


【新規就労控除】
新たに継続性のある職業に従事した者に対し、新たに就労に就いたことに伴う就労関連経費を補填するものです。

・1万1,300円


【未成年者控除】
就労している未成年者に対し、就労意欲を促し世帯の自立助長を図るため、就労収入の一部を手元に残すものです。

・1万1,400円



生活保護の手続きの仕方

生活保護の手続きの仕方

手続きの簡単な流れ

  • 事前の相談
  • 保護の申請
  • 調査・審査
  • 受給 or 却下


step
1
事前の相談

生活保護制度の利用を希望される方は、福祉事務所の生活保護担当窓口へ行きます。

そこで、生活保護制度の説明を受けるとともに、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討が行われます。


step
2
保護の申請

生活保護を申請するための書類を用意して、それらを窓口に提出します。

必ず必要な書類は「生活保護の申請書・申告書」と「本人確認書類」です。

「生活保護の申請書・申告書」は福祉事務所に用意されています。

状況に応じて、資産を証明するモノ、収入を証明するモノ、離婚、失業、医療費を証明するモノが必要になります。


step
3
調査・審査

生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)が行われます。

1. 預貯金、保険、不動産等の資産調査
2. 扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
3. 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
4. 就労の可能性の調査


step
4
受給 or 却下

申請後、原則14日以内、最長30日以内に受給可否が決定します。

結果の通知方法は、電話 or 郵送です。

郵送の場合は、保護決定通知書か保護申請却下通知書が届きます。



生活保護受給者の義務

生活保護受給者の義務

生活保護は仕事をしないのにお金を貰えて羨ましい…という声がありますが、それ故に義務が発生します。

生活保護を受給するモノの義務は下記のとおりです。

  1. 保護を受ける権利を譲り渡すことはできない。

  2. 常に,能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活の維持,向上に努めなければならない。

  3. 収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,または,居住地もしくは世帯の構成に異動があったときは,速やかに,福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

  4. 福祉事務所長が行う生活の維持,向上,その他保護の目的達成に必要な指導に従わなければならない。



公的扶助の問題点

公的扶助は、生活困窮者に対し「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するとともに、自立を助長する制度です。

社会保障の最後の砦とも言え、国民を支える最終セーフティーネットです。


とってもありがたい制度ですが、公的扶助には問題点もあります。

出典:厚生労働省

公的扶助には、「不正受給」と「年金よりも高額」という問題があります。

不正受給とは、収入や生活できるだけの貯蓄があるのにもかかわらず、生活保護を受給していたり、受給後に収入を隠したり、あるいは少なく申請する行為のことです。


厚労省によると、不正受給の金額は通算169億9,408万円(過年度の支出分を含む)で、不正受給の件数は4万3,938件と過去最多。

2014年7月に改正生活保護法が施行され、罰金の上限を引き上げたほか、不正をした際の返還金にペナルティーの上乗せなどが盛り込まれましたが、2015年の状況では不正受給数は過去最多となっています。


また、国民年金よりも生活保護を受給するほうが、手元に残る額が高いということも問題となっています。


公的扶助制度は困窮した人を助ける素晴らしい制度ですが、この2つの問題解決は制度を存続させていくうえで必要不可欠です。



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