刑務所に新たに入所した60歳以上の受刑者の14%に認知症の疑いがあることが2022年1月24日、法務省への取材で分かりました。
同省は刑務作業の軽減や出所後の福祉支援などの対策を進めていますが、刑法犯に占める高齢者の割合は年々上昇しています。
認知症などを患っていれば、社会復帰も難しくなります。
専門家は福祉施設に委ねるなど抜本的な対策の必要性を指摘しています。
60歳以上の受刑者の14%が認知症の疑い
法務省は18年に主要な全国8刑務所で60歳以上を対象に入所時の認知症スクリーニング検査を始めました。
現在は10カ所に拡大しています。
同省によると、20年は検査した930人の14%にあたる128人で認知症の疑いがみられました。
18年は12%、19年は14%と1割強で横ばいが続いています。
矯正統計年報によると、20年に新たに入所した65歳以上の高齢受刑者は2143人。入所者全体に占める割合は13%で、10年から5ポイント以上増えました。
受刑者の高齢化が進み、認知症を患った受刑者は今後さらに増える可能性があります。
受刑者向けに介護職員実務者研修を実施している
「認知症の方の発言は、否定から入るのではなく、受け入れるところから始めましょう」。府中刑務所(東京都府中市)では2020年度から福祉専門官が講師となり、受刑者向けに介護職員実務者研修を実施しています。
研修は半年間毎日続き、修了すると介護福祉士の受験資格が得られます。
資格取得は出所後の雇用先の確保に加えて、刑務所内で介助にあたる人員を刑務官以外から確保する狙いもあります。
背景にあるのが認知症疑いの受刑者の増加です。
高齢受刑者の出所後の社会復帰は難しい
高齢受刑者の出所後の社会復帰は他の年代に比べて難しいです。
犯罪白書によると、出所後2年以内に罪を犯して再び入所した割合(再入率)は19年の出所受刑者全体が15・7%だったのに対し、65歳以上は19・9%と4ポイント以上高いです。
認知症を患っていれば、さらに困難となります。
法務省は現在、認知症患者を含む65歳以上の高齢受刑者について、刑務所ごとに刑務作業時間の短縮や作業内容の軽減などの対策を取っています。
厚生労働省とも連携し、65歳以上や障害を持つ受刑者が出所後に医療・福祉サービスを円滑に利用できるような調整も実施しています。
法務省によると、こうしたサービスにつなぐなどした高齢受刑者は20年度は370人。同年度までの5年間の実績は計1966人に及びます。
龍谷大の浜井浩一教授(犯罪学)は、一部の刑務所で機能回復に向けた取り組みが進んでいることを評価しながらも「欧州に比べると全体的には不十分。刑務所は認知症の疑いがある受刑者に対し、社会復帰を念頭に生活機能を低下させないための処遇をさらに工夫すべきだ」と指摘しています。
そのうえで「認知症患者を服役させず、福祉施設に委ねるような刑事司法制度の根本的な見直しも検討する必要がある」と話しています。
まとめ
刑務所に新たに入所した60歳以上の受刑者の14%に認知症の疑いがあることがわかりました。
同省によると、20年は検査した930人の14%にあたる128人で認知症の疑いがみられました。
18年は12%、19年は14%と1割強で横ばいが続いています。
受刑者の高齢化が進み、認知症を患った受刑者は今後さらに増える可能性があります。
高齢受刑者の出所後の社会復帰は他の年代に比べて難しいです。
犯罪白書によると、出所後2年以内に罪を犯して再び入所した割合(再入率)は19年の出所受刑者全体が15・7%だったのに対し、65歳以上は19・9%と4ポイント以上高いです。
認知症を患っていれば、さらに困難となります。
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