子どもに低額や無料で食事を提供する「子ども食堂」が広がってきています。
2012年に東京都内でボランティアが始めた取り組みが自治体や民間企業などにも担い手を広げ、21年には全国6000カ所を超えました。
沖縄県、滋賀県などで加速しています。
経済的困難を抱える世帯の支援にとどまらず、幅広い世代が集う場としても欠かせない存在になりつつあります。
7人に1人が貧困状態にある
厚生労働省によると中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は、直近18年時点で13.5%となり7人に1人が貧困状態にあることになります。
世帯類型別でみると、母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率が5割に迫ります。
子ども食堂の設置数は大都市ほど多い
NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」が21年に行った調査によると子ども食堂の設置数は大都市ほど多いです。
東京都が747カ所で最多で、大阪府が470カ所で続きます。
一方、子どもの徒歩圏内に子ども食堂が普及している割合を示す「充足率」(各小学校に対する食堂カバー率、むすびえ算出)は沖縄が52.9%で首位となっています。
次いで滋賀県(47.7%)、鳥取県(42.7%)の順となります。
東京都は40.7%で4位でした。
食堂の規模に準じた補助金が交付される
沖縄県は子どもの貧困への危機感が極めて強いです。
15年に県が実施した調査で3人に1人程度(29.9%)が貧困状態との結果が示され、対策が本格化しました。
県は16年、30億円の「子どもの貧困対策推進基金」を創設し、国も10億円の予算を確保しました。
市町村はこれらを原資に食堂の規模に準じた補助金を交付します。
21年10月時点の子ども食堂は241カ所と、18年比114カ所増えました。
那覇市社会福祉協議会の担当者は「財政支援に加え、自治体と社会福祉協議会の担当者が連携を強めたことなどが奏功した」と説明しています。
2位の滋賀県、3位の鳥取県でも行政が支援に取り組んでいます。
滋賀県では制度や財政面で後押しする体制を整えました。
助成金のほか、営業許可を特例で免除し、開設のハードルを引き下げました。
鳥取県では食材費なども補助対象です。
18年から21年にかけて食堂を最も増やしたのは山口県で7.9倍。
保険加入や講習の参加など一定の要件を満たせば食堂を開設できる独自の登録制度を設け、手続きの負担を軽減しました。
子ども食堂は交流拠点として幅広い役割を併せ持つ
子ども食堂は交流拠点として幅広い役割を併せ持ちます。
東京都健康長寿医療センター研究所は「コミュニティーが醸成されている地域ほど食堂が多い傾向がある」と指摘しています。
同研究所は全国約2万5000人を対象に地域の協調性や信頼関係を測るソーシャルキャピタル(SC)と呼ばれる指標を算出し、20年の各都道府県の子ども食堂数との相関を分析しています。
「地域の人は信頼できる」と答える人が多かった高知県や鳥取県などは、人口あたりの食堂数の割合も高いです。
鳥取県の子ども食堂では子どもと運営ボランティアの信頼関係が強まったことで「家庭内で困っていること」などの本音を引き出し、直接的な世帯支援につなげています。
Uターンなどで地域との関わりが乏しくなっていた母子世帯の母親が地域住民とのつながりを育んだケースも多いです。
まとめ
子どもに低額や無料で食事を提供する「子ども食堂」が広がってきています。
2012年に東京都内でボランティアが始めた取り組みが自治体や民間企業などにも担い手を広げ、21年には全国6000カ所を超えました。
「子どもの貧困率」は、直近18年時点で13.5%となり7人に1人が貧困状態にあることになります。
子ども食堂の設置数は大都市ほど多いです。