この記事では「療養(補償)給付」について解説していきます。
療養補償給付は、労働者災害補償保険(労災保険)の保障の一部で、治療や薬剤の支給を無料で受けられるありがたい制度です。
※一部自己負担あり。
この記事を読めば、「現物給付と現金給付の違い」「補償される費用の種類」「手続き・申請方法」「その他のポイント」を知ることができます。
療養補償給付とは
療養補償給付とは、労働者が業務または通勤が事由で負傷したり、病気にかかって療養を必要とするとき、療養補償給付(業務災害の場合)または療養給付(通勤災害の場合)が支給されます。
療養補償給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」があります。
療養の給付とは(現物給付)
療養の給付とは、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等で無料で治療や薬剤の支給などを受けられます。これを現物給付といいます。
療養費用の支給とは(現金給付)
療養費用の支給とは、近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定医療機関等以外の医療機関や薬局等で医療を受けた場合に、その療養にかかった費用を支給する現金給付です。
療養補償給付で補償される費用の種類
療養補償は業務または通勤中に発生した怪我や病気の治療費を補償する制度です。療養補償給付で補償される費用の種類は、下記の6つのうち、必要と認められるものに限ります。
- 診察
- 薬剤又は治療材料の支給
- 処置、手術
- 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 移送費
療養補償給付の「支給期間」と「支給額」
療養補償給付の支給期間
療養補償給付は傷病が治癒するまでその支給が続きます。
なお、労災保険における「治癒」とは、身体の諸器官が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態(症状固定)をいいます。
療養補償給付の支給額
指定病院等で診察や治療等を受ける場合、自己負担がなくその場で全額補償されます。
※通勤災害の場合は初診時に一部負担金として200円かかります。
指定病院等以外の病院で診察や治療等を受けた場合、療養にかかる費用を病院に支払い、その後に、被災労働者に対して支払った費用の額が現金で支給されます。
療養補償給付の手続き・申請方法
申請書の提出先
療養補償給付の手続きには、下記の2つの申請書をそれぞれの機関への提出する必要があります。
- 療養補償給付支給申請書(指定病院等へ)
- 療養の費用支給申請書(療養の費用支給申請書へ)
転院する場合
治療や通院の都合により療養(補償)給付を受ける病院を転院する場合には、転院先の病院に下記の書類を提出する必要があります。
提出書類は、「業務災害の場合」と「通勤災害の場合」とで異なります。
- 業務災害の場合:「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」
- 通勤災害の場合:「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」
それぞれ、転院先の指定病院等へ提出してください。
申請書類の記入例
申請書類の作成方法は、下記のリンク先をご覧ください。記入例があります。
なお、支給申請書が必要な方は下記のリンク先をご覧ください。厚生労働省の資料ダウンロードページへ行きます。
厚生労働省
療養補償給付のその他のポイント
自営業者などは療養補償給付の対象外
休業補償給付は労災保険によって支給される制度ですのです。よって、労災保険に加入していない「自営業者」や「代表権・業務執行権を有する役員」は休業補償給付の対象外です。
療養補償給付には時効がある
原則として治療は労災病院・労災指定病院で受けます、この場合、現金給付になることから請求権の問題は特にありませんが、
労災病院・労災指定病院以外の病院で治療を受けた場合は、いったんかかる費用を自己負担する必要があります。この場合、費用の請求をしないでいると、請求権は2年で消滅してしまいます。
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【まとめ】業務上・通勤途上の事故に関する補償をすべて解説
災害補償制度は、労働者(職員等)の業務上(公務・職務上)や通勤途上の病気、ケガ、障害および死亡に対して補償給付を行うとともに、労働者(職員等)の福祉に必要な事業を行うことを目的として、民間労働者につい ...
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