この記事では、「退職後も傷病手当金を受け取れる条件」について解説していきます。
傷病手当金は「業務外・通勤外」の事故等により、療養のために給料をもらえないときに給付される社会保障です。
この傷病手当金は、一定の条件が揃うと退職後も給付を受け取ることができます(傷病手当金の継続給付)。
この記事を読めば、退職後も傷病手当金を受け取れる「受給要件」「受給額」「手続き」などを知ることができます。
傷病手当金の継続給付
退職時に傷病手当金を受給中だった人または受給資格を持っていた人は、退職前に一定の加入期間がある場合には、退職後も引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。
ただし、付加給付は支給されません。
また、老齢厚生年金等の老齢または退職を事由とする年金給付を受けることができるときは、退職後の傷病手当金は支給されません。
ただし、年金給付の額が傷病手当金の額を下回るときは、その差額が傷病手当金として支給されます。
公的医療保険の違いによる傷病手当金の継続給付
公的医療保険の種類は全部で下記の5つがあります。
- 健康保険
- 共済組合
- 船員保険
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療
この中で傷病手当金が支給されるのは、「健康保険(一般保険者)」、「共済組合」、「船員保険」のみです。
加入している公的医療保険によって傷病手当金の継続給付の内容が異なります。
それぞれわかりやすく解説していきます。
健康保険(一般保険者)
受給要件
退職日までの1年間、引き続き加入者である必要があります。
給付額
1日につき、下記の計算式による額が支給されます。
【注】支給開始月を含む直近の期間において、加入する健康保険で標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合は、下記のいずれかの低い方の額で計算します。
- 支給開始月を含む直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額
- 当該年度の前年度の9月30日における、加入する健康保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額
支給期間
支給開始後1年6カ月です。
手続き
手続きは加入者であった時と同じです。ただし、退職しているため事業主の証明は不要になります。
〈加入者であった時の手続き〉
傷病手当金支給申請書に労務不能に関する医師等の意見書、労務に服さなかった期間およびその間における給料支払いの有無に関する事業主の証明書を添付し、事業所を管轄している全国健康保険協会都道府県支部または加入する健保組合へ提出することで手続きが完了します。
船員保険
受給要件
下記のいずれかに該当する必要があります。
- 退職の日の前1年間に3ヵ月以上加入者であったこと
- 退職の日の前3年間に1年間以上加入者であったこと
給付額
1日につき、下記の計算式による額が支給されます。
【注】支給開始月を含む直近の期間において、標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合は、支給開始月を含む直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額で計算します。
支給期間
支給開始後3年間です。
手続き
手続きは加入者であった時と同じです。ただし、退職しているため船舶所有者の証明は不要になります。
〈加入者であった時の手続き〉
傷病手当金支給申請書に労務不能に関する医師等の意見書、労務に服さなかった期間に関する船舶所有者の証明書を添付し、全国健康保険協会船員保険部へ提出することで手続きが完了します。
共済組合等
受給要件
退職日までの1年間、引き続き組合員等である必要があります。
給付額
給付額は「国家共済、地方共済」と「私学共済」で求める計算式が異なります。
国家共済、地方共済の場合は、1日につき、下記の計算式による額が支給されます。
私学共済の場合は、1日につき、下記の計算式による額から学校等で支払った報酬を差し引いた額が支給されます。
【注】支給開始月を含む直近の期間において、加入する組合等で標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合は、下記のいずれか低い方の額で計算します。
- 支給開始月を含む直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額
- 当該年度の前年度の9月30日における、加入する組合等の全組合等の標準報酬月額の平均
給付期間
支給開始後1年6ヶ月です(結核性疾病の場合は3年)。
手続き
組合等であった時と同じです。
〈加入者であった時の手続き〉
傷病手当金支給申請書を加入する共済組合等へ提出することで手続きが完了します。
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【まとめ】医療費に関する社会保障の種類をわかりやすく解説
公的医療保険は業務上(公務・職務上)のもの以外の病気やケガについて、医療(現物)と医療費、また療養中の生活費の保障を第一の目的とした社会保険です。国民はだれでもいずれかの公的医療保険に加入者本人または ...
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