自立した生活を維持していくには継続した収入が必要になり、賃金収入が得られる就業は多くの方にとって必須のはずです。
日本の社会保障には、障害によって働くことのできなくなった方には公的保険によって、生活するための現金が支給されます。
障害を負って就業ができなくなった場合の公的保険といえば、国民年金から支給される「障害年金」が有名です。
その他にも、障害の原因が業務上・通勤途上の場合は労災保険から「障害(補償)年金」が併せて支給されます。
この記事を読めば、「障害(補償)年金」の「金額」「支給要件」「給付期間」などを知ることができます。
障害(補償)年金とは
障害(補償)年金とは、業務上または通勤途上の傷病が治ったとき(症状が固定した後)に一定以上の障害が残った場合に支給される年金です。
障害の区分は、重い1級~軽い14級まであります。
1級~7級までは「障害(補償)年金」が支給され、8級~14級までは「障害(補償)一時金」が支給されます。
障害等級 | 補償 |
1級~7級 | 障害(補償)年金 |
8級~14級 | 障害(補償)一時金 |
この記事では、上記の「障害(補償)年金」について解説していきます。
厳密には、業務災害の場合を「障害補償年金」。通勤災害の場合を「障害年金」といいます。
しかし、「障害年金」というと、国民年金保険による障害年金を連想しがちです。
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受給要件
労働者が業務上または通勤途上で負傷し、または疾病にかかり、治った後、身体に障害が残った場合で、その障害の程度が障害等級1級~7級に該当するとき。
問合わせ先
問合わせ先は、管轄の労働基準監督署になります。
労災保険における「治ったとき」とは
障害(補償)年金は、業務上または通勤途上の傷病が治ったとき、または症状が固定した後に一定以上の障害が残った場合に支給される年金です。
労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいい、この状態を労災保険では「治癒」(症状固定)といいます。
したがって、「傷病の症状が投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるに過ぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には労災保険では「治癒」(症状固定)として、療養(補償)給付を支給しないことになっています。
障害(補償)年金の給付の内容
障害(補償)年金の給付の内容は下記のとおりです。
出典:厚生労働省
それでは、詳しく解説していきます。
年金額
障害等級に応じ、それぞれ給付基礎日額(後述)により、1級は313日分、2級は277日分、3級は245日分、4級は213日分、5級は184日分、6級は156日分、7級は131日分が1年間に支給されます。
ただし、年金給付基礎日額については、最低限度額・最高限度額が年齢仮想別に設定されていて、その最低・最高の限度額を超える場合には下表の限度額となります。
年齢階層別年金給付基礎日額限度額
年齢 | ~19 | 20~24 | 25~29 | 30~34 | 35~39 | 40~44 |
最低限度額 | 4,892 | 5,475 | 6,000 | 6,379 | 6,749 | 7,031 |
最高限度額 | 13,264 | 13,264 | 14,226 | 17,257 | 19,022 | 21,365 |
年齢 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~64 | 65~69 | 70~ |
最低限度額 | 7,075 | 6,902 | 6,414 | 5,213 | 3,940 | 3,940 |
最高限度額 | 23,267 | 25,192 | 24,757 | 19,737 | 14,973 | 13,264 |
障害特別支給金
上記年金額に加えて、障害等級に応じ、それそれ、1級は 342万円、2級は 320万円、3級は 300万円、4級は 264万円、5級は 225万円、6級は 192万円、7級は 159万円の一時金が支給されます。
障害特別年金
上記年金額に加えて、障害等級に応じてそれぞれ算定基礎日額の、1級は 313日分、2級は 277日分、3級は 245日分、4級は 213日分、5級は 184日分、6級は 156日分、7級は 131日分の年金が支給されます。
給付期間
受給要件の状態が続いている間は給付が続きます。
基礎年金・厚生年金との同時給付による減額
障害(補償)年金と同時に厚生年金保険の障害厚生年金および国民年金の障害基礎年金が受けられるときは 27%、障害厚生年金だけが受けられるときは 17%、障害基礎年金だけが受けられるときは 12%、それぞれ労災保険の障害(補償)年金が減額されます。
年金の支払い月
障害(補償)年金は、支給要件に該当することになった月の翌月分から支給され、毎年 2月、4月、6月、8月、10月、12月の 6期に、それぞれの前 2ヶ月分が支払われます。
給付基礎日額とは
「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に騒動する額をいいます。
平均賃金とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。
年金としての保険給付の額の算定の基礎となる給付基礎日額は、毎年、前年度と比較した賃金水準の変動率に応じて増額または減額(スライド)されます。
また、年齢階層別の最低・最高限度額も適用されます(年金給付基礎日額)。
※船員については、給付基礎日額の特例があります。
算定基礎日額とは
「算定基礎日額」とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を 365で割った額です。
特別給付とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。
特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の 365倍に相当する額)の 20%に相当する額を上回る場合には、給付年額の 20%に相当する額が算定基礎年額となります。
ただし、150万円が限度額です。
傷病(補償)年金に該当する状態
障害等級 | 障害の状態 |
1級 | ・両眼が失明したもの ・咀嚼及び言語の機能が失われたもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・両上肢をそれぞれひじ関節以上で失つたもの ・両上肢が用をなさなくなつたもの ・両下肢をそれぞれひざ関節以上で失つたもの ・両下肢が用をなさなくなつたもの |
2級 | ・一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下に減じたもの ・両眼の視力がそれぞれ0.02以下に減じたもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ・両上肢をそれぞれ手関節以上で失つたもの ・両下肢をそれぞれ足関節以上で失つたもの |
3級 | ・一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下に減じたもの ・咀嚼又は言語の機能が失われたもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの ・ 両手のすべての指を失つたもの |
4級 | ・両眼の視力がそれぞれ0.06以下に減じたもの ・咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの ・両耳の聴力が全く失われたもの ・一上肢をひじ関節以上で失つたもの ・一下肢をひざ関節以上で失つたもの ・両手のすべての指が用をなさなくなつたもの ・両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
5級 | ・一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下に減じたもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・一上肢を手関節以上で失つたもの ・一下肢を足関節以上で失つたもの ・一上肢が用をなさなくなつたもの ・一下肢が用をなさなくなつたもの ・両足のすべての指を失つたもの |
6級 | ・両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの ・咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの ・両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度に減じたもの ・一方の耳の聴力が全く失われ、他方の耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの ・脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの ・一上肢の三大関節のうちのいずれか二関節が用をなさなくなつたもの ・一下肢の三大関節のうちのいずれか二関節が用をなさなくなつたもの ・片手のすべての指を失つたもの又はおや指をあわせ片手の四本の指を失つたもの |
7級 | ・一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下に減じたもの ・両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの ・一方の耳の聴力が全く失われ、他方の耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの ・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・おや指をあわせ片手の三本の指を失つたもの又はおや指以外の片手の四本の指を失つたもの ・片手のすべての指が用をなさなくなつたもの又はおや指をあわせ片手の四本の指が用をなさなくなつたもの ・片足をリスフラン関節以上で失つたもの ・一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ・一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ・両足のすべての指が用をなさなくなつたもの ・女子の外貌が著しく醜くなつたもの ・両側の睾丸を失つたもの |
手続き
障害(補償)給付を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、「障害補償給付支給請求書」または「障害給付支給請求書」を提出します。
また、請求書に添付する診断書に、医師または歯科医師の診断を記入してもらって下さい。
「障害(補償)一時金」と「障害(補償)年金」を『障害(補償)給付』といいます。
ダウンロード用(OCR)様式
障害補償給付支給請求書などダウンロード(厚生労働省)
(リンク先の「障害(補償)等給付関係」のところにあります)
請求書記入例
障害(補償)給付を請求するときの請求書の記入例は下記のとおりです。
出典:厚生労働省
通勤災害の場合の請求書の記入例
通勤災害の場合の請求書の記入例は下記のとおりです。
障害(補償)年金の請求に関する時効
障害(補償)給付は、傷病が治った日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。
「障害(補償)一時金」と「障害(補償)年金」を『障害(補償)給付』といいます。
受給権者が死亡した場合の遺族への支給額
障害(補償)年金の受給権者が死亡した場合は、「障害(補償)年金差額一時金」として遺族が支給を受けることができます。
障害(補償)年金の受給権者が死亡した場合、すでに支払われた障害(補償)年金の合計額が、障害等級に応じ定められている額(1級は 1,340日分、2級は 1,190日分、3級は 1,050日分、4級は 920日分、5級は 790日分、6級は 670日分、7級は 560日分)に満たないとき、その差額が「傷病(補償)年金差額一時金」として遺族に支給されます。
障害等級 | 日分 |
1級 | 1,340日分 |
2級 | 1,190日分 |
3級 | 1,050日分 |
4級 | 920日分 |
5級 | 790日分 |
6級 | 670日分 |
7級 | 560日分 |
障害補償年金と障害年金の違い
障害補償年金と障害年金の違いは、公的保険の違いです。
障害補償年金は「労災保険」から支給される年金で、障害年金は20歳から60歳の方に加入義務のある「国民年金保険」から支給される年金です。
- 国民年金保険:障害年金
- 労災保険:障害補償年金
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【まとめ】業務上・通勤途上の事故に関する補償をすべて解説
災害補償制度は、労働者(職員等)の業務上(公務・職務上)や通勤途上の病気、ケガ、障害および死亡に対して補償給付を行うとともに、労働者(職員等)の福祉に必要な事業を行うことを目的として、民間労働者につい ...
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