失業したときに頼りになるのが、雇用保険(失業保険)の失業手当(基本手当)です。
当然、受給条件を満たしていないと上記の手当を受けることはできません。
しかし、雇用保険のサポートを受けられず、再び就労できないとなると、国家としても税収を得られなくなるなど問題があります。
よって、雇用保険によるサポートを受けられない失業者には、雇用保険とは別に支援する仕組みが存在しているのです。
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雇用対策法に基づく訓練手当
雇用保険の受給資格がない人が公共職業訓練を受けるとき、雇用対策法に基づいて、その期間中の生活を保障するために支給されるのが「訓練手当」です。
支給されるのは、月額にして11万円弱~13万円程度(住所地によって異なる)です。
この訓練手当の対象者は、雇用保険の訓練延長給付と同じく、ハローワークで「受講指示」が得られた人だけです(受講推薦は支給対象にはなりません)。
つまり、ハローワークが「訓練を受けないと就職が難しい」と判断して初めて出るのが「訓練手当」なのです。
しかも、この「訓練手当」は、全額国庫負担ではなく、一部都道府県負担もあるのがポイントです。
そのため、予算が少ない地方では、障害者や母子家庭の母子等の就職困難者のみ対象で「一般の求職者にはまず出ない」のが実情となっています。
ところが、その例外なのが東京都です。
東京都の場合は、個別にその人の事情をみるのではなく、一律の基準で判定しています。
具体的には、母子家庭の母親や身体障害者のほか、年齢が「45歳以上の人」も、受講指示の対象になっているのです。
通えるのは、委託訓練を除く都立の施設内訓練だけですが、その6ヶ月コースには、訓練手当受給者の優先枠まで設けられています。
東京都以外の首都圏に在住している45歳前後の人は、このことをよく覚えておきましょう。
いざというときには、都内に転入することで、訓練手当をもらうことも可能になるからです。
そのほかの地方の人も、隣接地域の訓練手当の支給要件を調べてみて、「45歳上」が明記されていれば、そちらへ転入する方法も検討してみましょう。
緊急人材育成・就職支援基金
いわゆる「派遣切り」に遇い、仕事と同時に住居まで失う人が続出したことを受けて、雇用保険のセーフティーネットの網から漏れた人を救済するために設けられたのが、「緊急人材育成・就職支援基金(基金訓練)」です。
雇用保険の受給資格がない人が、ハローワークの斡旋を受けて、厚生労働省が指定した3ヶ月~1年の基金訓練を受講した場合に月額10万円(扶養家族がいる人は月額12万円)支給されます。
「年収見込み200万円以下で、かつ世帯全体の年収見込が300万円以下」など、明確な支給要件が挙げられているのが特徴で、それらをクリアすれば、比較的容易に給付を受けられるのがメリットです。
ただし、「主たる生計者である」ことが要件となっていたり、年収の審査が世帯全体が対象になっているため、親と同居している単身者は、給付が受けられる可能性がかなり少なくなってしまうのが難点です。
技能者育成資金
もともと厚生労働省管轄のポリテク系大学校や職業訓練校の生徒を対象にした奨学金制度だったのを拡張して、広く一般の求職者でも、訓練を受ける時に利用しやすくした制度です。
他の制度と大きく異なるのは「給付」ではなく「貸付」であることです。
しかしそこで「返すアテがないので駄目だ」と思うのは早計です。
この制度には、返済免除の規定があり、まじめに訓練を受けて就職した人については、なんと全額返済免除されるという特典が付いてくるのです。
さらに、もし運悪く就職できなくても、一定期間、一生懸命に就職活動に励みさえすれば、ほとんどの額(約8割)が返済免除となります。
ただし、返還免除が受けられるのは「主たる生計者」だけで、年収審査も世帯全体が対象になっていますので、親と同居している人にとっては、不利であることを理解しておきましょう。
東京都チャレンジ支援制度
先述した3つはどれも、国が実施している制度ですが、都道府県が独自に実施している制度もあります。
その代表例が、東京都が実施している「チャレンジ支援制度」です。
この制度の大きな特徴は、他の制度のような失業者を主な対象にしているのではなく、現在、非正規で働いている人を対象に、正社員への就職を手厚くサポートしてくれるところです。
基金訓練や技能者育成資金と比べると、年収要件が176万円以下(単身者)と、やや低く設定されていたり、支給額が月に15万円と、ほかの制度よりも高いのが魅力です。
さらに、通常は自己負担となる教科書代まで全額支給してくれるというのですから至れり尽くせりです。
しかし、この制度の最大の魅力は、なんといっても、訓練が就職につながりやすいことです。
きめ細やかな就職支援をしてくれるうえ、この事業による訓練を修了した人を正社員として採用した企業には助成金を出す制度にしている点などは、かなり効果が期待できます。
いくら熱心に訓練を受けても、採用してくれる企業がみつからなければ、何にもなりません。
その点、求職者と採用企業の両方を支援しているのは、なかなか考えられた制度と言えます。
まとめ
制度名 | 対象者 | 期間 | 支給額 | 主な支給要件 |
雇用対策法に基づく訓練手当 | 雇用保険の受給資格がなく、職業訓練を受講する人 | 最長2年 (現実的には6ヶ月) |
月額11万円弱~13万円程度 (住所地によって異なる) |
住所地の職業安定所から受講指示を出された人 (障害者、母子家庭の母親、45歳以上の求職者など) |
緊急人材育成・就職支援資金 | 雇用保険を受給できない人で、安定所の斡旋により職業訓練を受講する人 | 3ヶ月~1年 | ・扶養家族あり:月額12万円 ・扶養家族なし:月額10万円 |
主たる生計者であること、年収見込み200万円以下でかつ世帯全体の年収見込が300万円以下など |
技能者育成資金 | 雇用保険を受給できない人で、離職者訓練を受講する人 | 最長2年 | ・扶養家族あり:月額12万円 ・扶養家族なし:月額10万円 ・デュアル受講者:月額4.6200円 ・利子年3% |
・世帯全体の年収見込が200万円以下 ・デュアル訓練受講者等はジョブカードの交付を受けていること (終了後6ヶ月以内に就職すれば全額返済免除) |
東京都チャレンジ支援制度 | 正社員への就職にチャレンジする意欲を持つ人 | 1~6ヶ月 (施設内訓練6ヶ月、委託訓練1~3ヶ月) |
月額15万円 | ・世帯の生計中心者であること ・都内に引き続き1年以上在住していること ・課税所得が一定以下であること(単身者年収176万円) |
なお、同居している人がこれらの制度の適用を受けやすくなるためには、住所は今のままで、自分が別の世帯主となる「世帯分離」の手続きを行うことが有効です。
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