社会保障

雇用保険(失業保険)の再就職を支援するさまざまな手当や給付を解説

雇用保険(失業保険)の再就職を支援するさまざまな手当や給付を解説

この記事では、雇用保険の再就職を支援する「就職促進給付」について解説していきます。

雇用保険(失業保険)と言えば、失業中に現金の支給を受けられる求職者給付の基本手当が有名ですが、他にもさまざまな手当や給付があります。


今回は、失業中の再就職を支援する制度に注目していきます。


自力では難しい再就職も、国の制度をうまく活用することで、就業へ繋げることができるかもしれません。



再就職を支援する就職促進給付とは

再就職を支援する就職促進給付とは

失業者を支援する雇用保険(失業保険)の給付といえば、失業期間中の失業者に現金を給付する求職者給付の基本手当が有名ですが、再就職を支援する就職促進給付という制度も存在します。


就職促進給付は支給目的によって下記の3つが存在します。

  1. 就業促進手当
  2. 移転費
  3. 求職活動支援費


それぞれわかりやすく解説していきます。


1.就業促進手当とは

就業促進手当とは

1.はさらに、「再就職手当」「就業手当」「就業促進定着手当」「常用就職支度手当」の4種類に分かれます。


ただし、就職促進手当(常用就職支度手当は除く)の受給対象者に65歳以上の高年齢受給資格者(失業した高年齢継続被保険者で高年齢求職者給付金の受給資格のある者)は含まれませんので、65歳以上の定年退職者などが仕事を見つけたとしても支給されません。


再就職手当

再就職手当とは、受給資格者(失業した一般被保険者で基本手当の受給資格のある者)が失業後、早期に再就職した場合に支給される手当です。


支給額は所定給付日数の支給残日数に基本手当日額を掛けて算出した金額の6割に相当する額です。

式に表すと下記のようになります。

$$再就職手当=所定給付日数の支給残日数×60%もしくは70%×基本手当日額(上限あり)$$


給付額は基本手当に支給残日数によって下記のように異なります。

  • 基本手当の支給残日数が所定給付日数の2/3以上の方は、所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額
  • 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上の方は、所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額


なお、再就職手当を計算する際の基本手当日額については、離職時の年齢によって上限額が定められており、離職時の年齢が60歳未満の場合には6,195円、60歳以上65歳未満であれば5,013円が上限額となります(令和2年8月)(毎年8月1日以降に変更されることがあります。)



再就職手当の受給要件

再就職手当は、下記の受給要件のすべてに該当する場合に支給されます。

  1. 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職、または事業を開始した
  2. 就職日の前日までに失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の1/3以上である
  3. 離職した前の事業者に再び就職したものでない。また、離職した前の事業所と資本・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業所に就職した
  4. 自己都合などの理由で離職したために給付制限を受けている場合には、求職申込後、待期期間満了後1ヶ月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものである
  5. 1年を超えて勤務することが確実である
  6. 原則として、雇用保険の被保険者になっている
  7. 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがない
  8. 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定した事業主に雇用されたものでない
  9. 再就職手当の支給決定の日までに離職していない


さらに、離職前の賃金と比べて再就職後の賃金が下がった場合に、新しい職場に6ヶ月間定着することを条件として、賃金の下がった部分の6ヶ月分(上限は基本手当日額×支給残日数×40%)が、一時金(就業促進定着手当)として、上記の再就職手当に上乗せされて支給されます。


就業手当

就業手当とは、再就職手当の受給要件に該当しない人に支給される手当です。


雇用保険の失業等給付の受給者は、すべて正社員として再就職できるわけではありません。中には、パートや派遣社員、契約社員として働くことになる人もいます。

また、実際にこのような正社員以外の雇用形態が増えてきています。


上記のような方のために、就業手当は存在します。


就業手当の受給要件

就業手当の受給要件は下記の5つです。

  1. 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上、かつ45日以上である
  2. 7日間の待機期間が経過した後に就業したものである
  3. 退職前の会社(関連会社も含む)に再び雇用されるわけではない
  4. 給付制限を受けた場合、待機満了後1ヶ月間について、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介により就職した
  5. 採用の内定が受給資格決定日以後である


就業手当の支給額は基本手当日額の30%に相当する額で、就業日ごとに支給されます。

ただし、1日あたり1,858円(60歳以上65歳未満は1,503円、令和元年2月)が上限となっています。(毎年8月1日以降に変更されることがあります。)


就業手当を受給するには、原則として、失業の認定にあわせて、4週間に1回、前回の認定日から今回の認定日の前日までの各日について、「就業手当支給申請書」に、受給資格証と就業した事実を証明する資料(給料明細書など)を添付してハローワークに申請する必要があります。


就業促進定着手当

就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた人が、引き続きその再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合、就業促進定着手当の給付を受けることが出来ます。


支給額は、(離職前の賃金日額-再就職手当の支給を受けた再就職の日から6か月間に支払われた賃金額の1日分の額)×再就職の日から6か月間内における賃金の支払いの基礎となった日数(通常月給制の場合は暦日数、日給月給制の場合はその基礎となる日数、日給制や時給制の場合は労働の日数)となります。


ただし、下記のとおり上限額があります

$$上限額:基本手当日額(注意2)×基本手当の支給残日数に相当する日数(注意3)× 40%(注意4)$$


注意2:基本手当日額の上限は、6,195円(60歳以上65歳未満は5,013円)となります。(毎年8月1日以降に変更されることがあります。)

注意3:再就職手当の給付を受ける前の支給残日数です。

注意4:再就職手当の給付率が70%の場合は、30%です。


常用就職支度手当

再就職が決まっても一定の支給残日数が残っていない場合、再就職手当は受けられません。

しかし、就職時に45歳以上の中高年齢者の受給資格者(再就職援助計画の対象者)や障害者など一般に就職が困難な人が再就職した場合で、一定の要件を満たした場合には、常用就職支度手当が支給されることがあります。


この支度手当は、就職が困難な人が、支給日数が残っている受給期間内に、ハローワークの紹介で安定した職業についた場合に支給される手当です。

常用就職支度手当の支給額は、基本手当の支給残日数により、45~90日分の基本手当日額の40%となります。


なお、前述した再就職手当の支給要件に該当した場合には、再就職手当が支給され、常用就職支度手当は支給されません。

支給残日数 常用就職支度手当の額
90日以上 90日分×基本手当日額×40%
45日以上90日未満 残日数×基本手当日額×40%
45日未満 45日分×基本手当日額×40%



2.移転費とは

移転費とは

ハローワークの紹介で就職先が決まった者の中には、再就職のために引っ越しが必要な者もいると思います。

こういった者には「移転費」が支給されます。


移転費が支給されるのは下記の2つのいずれかに該当し、公共職業安定所所長が必要と認めた場合です。

  1. 受給資格者がハローワークの紹介した職業に就くため、または公共職業訓練等を受けるため、住所または居所を変更する場合
  2. 事業所または訓練施設が、自宅から往復4時間以上かかり、住所または居所を変更する必要があると求める場合


移転費には、鉄道運賃、船賃、航空賃、車賃、移転料、着後手当の6種類があります。


鉄道運賃、船賃、航空賃、車賃は支給対象者に同伴する同居の親族分も加算して支給されます。

また、移転料は移転距離や親族の随伴状況に応じて金額が変わります。


着後手当は親族が随伴する場合には76,000円(移転距離が100㎞を超える場合95,000円)が支給され、単身者の場合、その半額分が支給されます。


移転費の支給を受ける場合は、引っ越しした日の翌日から1ヶ月以内にハローワークに支給申請書を提出します。

なお、移転費は失業等給付の受給資格者などが対象になります。

また、ハローワークの紹介で就職先が決まった者が支給の対象ですので、県外などの遠方で自営業を始めた者などは支給の対象にはなりません。


3.求職活動支援費とは

求職活動支援費とは

3.はさらに、「広域求職活動費」「短期訓練受講費」「求職活動関係役務利用費」に分けることができます。

これらは、文字どおり、求職活動を円滑に行うための支援費になります。


広域求職活動費

ハローワークで求職活動をする人の中には、自分に合った働き口を探すために、県外に行ったりして就職活動を行う者もいます。

これらの者は就職活動に相当の交通費がかかります。このような場合に役に立つのが雇用保険の広域求職活動費です。


広域求職活動費は、待期期間満了後、または給付制限期間の経過後に広域求職活動を行う場合に支給されます。

なお、広域求職活動のため訪問する事業所から広域求職活動のための費用が支給された場合には支給が行われませんが、支給された額が広域求職活動費より少ない場合には差額が支給されます。


広域求職活動は、雇用保険の失業等給付の受給資格者がハローワークの紹介で、そのハローワークの管轄区域外にある会社等の事業所を訪問したり、面接を受けたり、事業所を見学したりすることをいいます。

管轄区域外と認定されるためには、雇用保険を受給しているハローワークから訪問する求人事業所の住所地を管轄するハローワークまでの距離が200㎞以上あることが条件です。


支給される額は、求職者の住所地を管轄するハローワークと訪問事業所の所在地を管轄するハローワークの往復にかかる費用(鉄道運賃、船賃、車賃など)です。

上記の距離が400㎞以上であれば、宿泊費も支給されます。


広域求職活動費は、結果的に就職できなかった場合でも、支給を受けることができます。

広域求職活動費の支給を受ける場合は、ハローワークの指示を受けた日の翌日から10日以内にハローワークに支給申請書を提出する必要があります。


短期訓練受講費

短期訓練受講費は、受給資格者などが再就職のために必要な教育訓練を受け、修了した場合に、本人が支払った教育訓練費用(入学金や受講料など)の一部が支給される制度です。


支給額は、教育訓練費用の2割(上限10万円)です。

支給申請書は、教育訓練を修了した日の翌日から1ヶ月以内に「求職活動支援費(短期訓練受講費)支給申請書」に受給資格者証などを添付して、ハローワークに提出することになります。


求職活動関係役務利用費

求職活動関係役務利用費とは、求人者と面接をするために、子の保育サービスを利用する場合があります。

そういった場合に、保育サービス費用の本人負担費用の一部を支給する制度です。


支給額は、保育等サービス利用のために本人が負担した費用の80%です。

一日あたりの支給上限額は6,400円です。また、求人者と面接などを行う場合には15日、職業訓練を受講する場合には60日まで求職活動関係役務利用費の支給対象となります。


支給申請は、保育サービスを利用した日の翌日から4ヶ月以内に「求職活動支援費(求職活動関係役務利用費)支給申請書」に受給資格者証などを添付して、ハローワークに提出することになります。



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