2022年4月に不妊治療の保険適用が拡大しました。
体外受精など高額の治療が含まれ、患者の費用負担が軽くなるケースが増える見込みです。
ただ不妊治療の内容は人により異なり、保険対象とならない治療もあります。
どの治療にいくらかかるのか、事前に費用の見通しを確認しましょう。
合わせて読みたい記事⇩
-
不妊治療・妊活について学べるおすすめの本7選【2024年版】
夫婦にコウノトリがやって来るかは神のみぞ知るところですが、それを望む夫婦にとっては切実です。医学の発達により、妊娠の確率を上昇させることができます。この記事では、不妊治療・妊活について分かるおすすめの ...
続きを見る
-
妊娠・出産について分かるおすすめの本8選【2024年版】
出産の痛みを経験者が表現する言葉には、「生理痛の100倍くらいの痛み」、「お腹の中を刃物でグルグルかき回されているような痛み」、「ハンマーで殴られて腰が砕けるような痛み」などがあります。このため、妊娠 ...
続きを見る
これまで不妊治療は各医療機関が独自に価格を決め、患者が全額を払っていた
不妊治療は検査で原因を探ったうえで、段階的に治療を進めるのが一般的です。
最初は自然妊娠の可能性を高めるタイミング法、次に精子を子宮内に人工的に送る人工授精、体外で受精させた受精卵を子宮内に移植する体外受精となります。
従来、保険が適用されていたのは基本的な検査やタイミング法までです。
人工授精や体外受精は保険が適用されない自由診療となり、各医療機関が独自に価格を決め、患者が窓口で全額を払っていました。
保険診療の範囲内なら、患者負担は14万から20万円程度になる
出典:日本経済新聞社
今回の大きな変更点は人工授精や体外受精の基本的な治療が保険適用となったことです。
従来は人工授精が1万~4万円程度、体外受精が40万円以上かかることが多かったです。
それが一定の基準を満たす医療機関なら同じ金額で治療を受けられ、患者は原則3割を負担すればよくなりました。
3割負担の場合、体外受精は治療内容により幅があるものの、保険診療の範囲内なら、高度な顕微授精を含めて患者負担は14万から20万円程度となる見込みです。
人工授精の患者負担は1万円未満と言われています。
一連の治療で何にいくらかかるか
出典:日本経済新聞社
一連の治療で何にいくらかかるか、体外受精の例でみてみましょう。
体外受精はまず、採卵・採精をして、体外で人工的に受精。受精卵を培養した「胚」を、子宮へ移植することになります。
良好な胚が複数ある場合などは凍結し保存することも多いです。
保険適用により、それぞれの医療技術などに価格が決まっています。
採卵の段階では採卵術の基本料金の自己負担が1回9600円になります。
採取した卵子の数に応じて7200円(1個)から2万1600円(10個以上)の加算があります。
1回の施術による採卵個数は年齢などで変わります。
30代前半までなら10個以上の卵子を獲得できるケースが多いです。
採卵個数が10個なら、採卵時の費用は3万1200円(薬剤などの費用を含まない)。
男性の不妊治療が必要なら、その検査費用や治療費用が別途かかります。
受精から培養の段階では受精の技術料と培養の管理料がかかります。
体外受精の技術料は1万2600円、顕微鏡を用いる顕微授精は実施した卵子の数に応じて1万4400円から3万8400円かかります。
受精卵を培養する費用や、「胚盤胞」と呼ばれる状態に培養する場合の加算費用も個数に応じて変わってきます。
30代前半の体外受精の場合、10個を採卵したら、その8割以上が受精卵となり、最終的に5個程度が移植できる状態に育つのが標準的なイメージです。
その場合の培養に関わる費用は約3万円になります。
育った胚は移植や凍結保存をすることになります。
移植は胚の凍結前か凍結後かで費用が異なり、それぞれ2万2500円、3万6000円です。
凍結保存では管理料が胚の数に応じて発生します。
一連の費用は凍結せずに移植した場合で体外受精が12万円弱、顕微授精が14万円強となる見込みです。
保険対象の治療には高額療養費制度が使える
実際には実質的な自己負担はさらに少なくなることがあります。
保険対象の治療には高額療養費制度が使えるためです。
外来診療などで払った1カ月の医療費の自己負担額を合算し、上限額を超えた分が還付されます。
上限額は年齢や所得水準によって変わり、70歳未満で年収370万円から770万円程度の人が50万円の治療を受けると、上限は約8万2000円になります。
健康保険組合なら上限を2万~3万円などとする付加給付を用意している場合もあります。
合わせて読みたい記事⇩
-
高額療養費制度とは?高額療養費制度の詳細をわかりやすく解説
この記事では、公的医療保険制度の「高額療養費制度」について解説していきます。高額な医療費を請求された場合、高額療養費制度を活用することによって負担額を軽減できます。個人が負担する上限額は、「年齢」や「 ...
続きを見る
-
高額療養費制度の自己負担限度額をわかりやすく解説
この記事では、高額療養費制度の「自己負担限度額」について解説していきます。高額な医療費を請求された場合、高額療養費制度を活用することによって負担額を軽減できます。個人が負担する上限額は、「年齢」や「所 ...
続きを見る
先進医療として認められた治療は、保険適用分に先進医療の治療費を上乗せできる
不妊治療では保険内の治療で成功しなかった場合に、保険適用外の治療に取り組むことも多いです。
通常は保険診療と適用外の自由診療を併用すると、保険診療分についても全額を負担しなければいけません。
ただし「先進医療」として認められた治療は、保険適用分に先進医療の治療費を上乗せできます。
先進医療となった技術は8種類です(2022年5月17日時点)。
胚の培養を培養器の内蔵カメラで観察する技術や受精卵が着床しやすい子宮の環境をつくる技術などがあります。
先進医療の内容は、若い患者の大半の治療は保険診療と先進医療で対応できると評価されています。
先進医療の併用が認められるのは施設基準を満たし、届け出や承認がある医療機関に限られています。
体外受精は治療開始が早いほど妊娠しやすい
出典:日本経済新聞社
保険適用により費用面のハードルは下がりました。
しかし、治療がうまくいくかに女性の年齢が影響することは変わりはありません。
日本産科婦人科学会の資料によると20代が体外受精の治療(全胚凍結を除く)で妊娠する割合は4割程度ですが、40代は2割以下になります。
体外受精の保険適用の条件は原則女性が43歳未満の場合です。
40歳未満は1子ごとに6回、40歳以上は同3回という回数の制限があります。
治療開始が早いほど妊娠しやすい。できるだけ早く始めるべきでしょう。
合わせて読みたい記事⇩
-
不妊治療・妊活について学べるおすすめの本7選【2024年版】
夫婦にコウノトリがやって来るかは神のみぞ知るところですが、それを望む夫婦にとっては切実です。医学の発達により、妊娠の確率を上昇させることができます。この記事では、不妊治療・妊活について分かるおすすめの ...
続きを見る
-
妊娠・出産について分かるおすすめの本8選【2024年版】
出産の痛みを経験者が表現する言葉には、「生理痛の100倍くらいの痛み」、「お腹の中を刃物でグルグルかき回されているような痛み」、「ハンマーで殴られて腰が砕けるような痛み」などがあります。このため、妊娠 ...
続きを見る