この記事では、給付金や手当の情報を利用できる状況別にまとめて解説していきます。
長い人生を生きていると、環境の変化や自身の問題によってそれまでの生活を維持していくことが困難な状況に陥ることもありあります。
日本の社会保障には、それらの人に給付金や手当を支給することによって、生活をサポートする制度が整えられています。
失業・求職に役立つ給付や手当
失業等給付の基本手当
基本手当とは、雇用保険の一般被保険者であった者が離職し、失業した場合に国から支給される手当です。基本手当の仕組みは「受給金額×給付日数」です。受給金額は、離職前6ヶ月間に支払われた賃金に基づいて計算されます。給付日数は離職理由、被保険者であった期間、労働者の年齢によって、90日から360日の間で決定されます。
延長給付
延長給付は、社会情勢などの影響によって就職が困難である場合や個々の受給資格者の置かれている状況などに配慮して、本来の所定給付日数分の日数に加えて、基本手当を延長する制度です。訓練延長給付、広域延長給付、全国延長給付、個別延長給付、地域延長給付の5種類があります。このうち、地域延長給付は、令和4年3月31日までの暫定措置となっています。延長給付によって、30日から120日の日数が延長されます。
傷病手当
雇用保険の基本手当は仕事に就くことができる人を対象にしています。そのため、病気やケガが原因で継続して15日以上職業に就けない場合は、基本手当に代えて、傷病手当を受給することができます。30日以上職業に就けない場合は、傷病手当の支給か基本手当の受給期間を延長するか(最大4年が限度)選ぶことができます。
技能習得手当
職業訓練を受けるときに知っておきたい給付金が雇用保険の技能習得手当です。技能習得手当は、職業訓練を利用して失業中に新しい技術を身につけたいという人をバックアップする手当です。雇用保険の基本手当を受給する権利のある者(受給資格者)が公共職業安定所長の指示する公共職業訓練を受講する場合、その受給期間について、基本手当に加えて、技能習得手当が支給されます。技能習得手当には、①受講手当と②通所手当の2種類があります。
再就職手当・就業促進定着手当
早期に就職先を見つけた場合に支給される手当です。再就職手当の金額は下記の計算式で決まります。
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の2/3以上の場合
➝所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額(上限あり) - 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上の場合
➝所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額(上限あり)
また、再就職後の賃金が下がった場合、新しい職場に6ヶ月間定着することを条件として、賃金の下がった部分の6ヶ月分(上限は、再就職手当の給付率が60%の場合、基本手当の支給残日数の40%となり、再就職手当の給付率が70%の場合は、基本手当の支給残日数30%となります)が、一時金(就業促進定着手当)として上記手当に加えて支給されます。
就業手当
再就職手当を受給するためには「1年を超えて勤務することが確実」と見込まれる就職先を見つけなければなりません。しかし、中には、正社員ではなく、短期間のパートや人材派遣、契約社員の形で働くことになる人もいます。そこで、こうした再就職手当の受給要件に該当しない場合であっても就職先を見つけた人に支給することにしたのが就業手当です。
常用就職支度手当
常用就職支度手当は、就職が困難な人が支給日数が残っている受給期間内にハローワークの紹介で安定した職業に就いた場合に、基本手当日額の40%(最大で90日分)を支給する制度です。基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上の場合には再就職手当の対象者となるため、常用就職支度手当の対象者は基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3未満の者ということになります。
広域求職活動費
広域求職活動とは、雇用保険の失業等給付の受給資格者がハローワークの紹介で、そのハローワークの管轄区域外にある会社などの事業所を訪問したり、面接を受けたり、事業所を見学したりすることをいいます。広域求職活動を行う失業者に支給されるのが雇用保険の広域求職活動費です。
教育訓練給付金・教育訓練支援給付金
教育訓練給付(教育訓練給付金)
就職するために、スキルアップのための特殊技能の習得や、外国語の学習、資格の取得が必要なケースもあります。失業者のこのような能力開発の取り組みを国でも支援しようというのが教育訓練給付の制度です。3種類の教育訓練給付があり、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講・修了した際に支給される「一般教育訓練給付金」、ITスキルなどの早期のキャリア形成に役立つ訓練を受講・修了した際に支給される「特定一般教育訓練給付金」と、専門性の高い資格の取得を目的とする訓練を受講・修了した際に支給される「専門実践教育訓練給付金」があります。一般教育訓練給付金受給金額は、受講のために受講者本人が教育訓練施設に対して支払った教育訓練経費の20%(支給率)です。ただし、20%を乗じた額が4,000円を超えない場合は支給されません。また、20%を乗じた額が10万円を超えた場合には、10万円となります(特定一般教育訓練給付金の場合は支給率が40%、支給率を乗じて掛けた額が20万円を超えた場合には、20万円となります)。
専門実践教育訓練給付金の受給金額は教育訓練経費の50%(1年間の上限は40万円)で、さらに受講した教育訓練の結果、1年以内に資格を取得し就職に結びついた場合には、給付が更に20%追加され、合計70%(1年間の上限は56万)となります(支給率を乗じた額が4,000円を超えない場合は支給されません)。原則として2年間(最大3年間)給付されることになります。
教育訓練支援給付金
45歳未満の失業者が、専門実践教育訓練給付の対象となる講座を受講すると、その訓練期間中は、基本手当の80%が支給されます。この教育訓練支援給付金制度は、受講開始日が令和4年3月31日以前であることが条件です。
対象者・手続き
教育訓練給付(教育訓練給付金)
一般教育訓練給付・特定一般教育訓練給付の支給を受けることができるのは、下記の①、②のいずれかに該当する者で、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し、訓練を修了したものです。失業者だけではなく、在職者も利用することができます。
①雇用保険の一般被保険者
厚生労働大臣が指定した教育訓練の受講を開始した日(受講開始日)において雇用保険の一般被保険者である者のうち、支給要件期間が3年以上あるものです。
ただし、初めて教育訓練給付を受けようとする場合、支給要件期間は「1年以上」になります。
②雇用保険の一般被保険者であった者
受講開始日において一般被保険者でない者のうち、一般被保険者資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ支給要件期間が3年以上ある者が対象になります。
教育訓練給付の申請手続きは、教育訓練の受講終了後1ヶ月以内に教育訓練を受けた本人の住所地を管轄するハローワークに対して行います。
専門実践教育訓練給付の場合は、初めて教育訓練給付を受ける場合は支給要件期間が「2年以上」に、2回目以降は原則どうり「3年以上」となります。
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金の給付を受けることができるのは、45歳未満の、専門実践教育訓練給付の対象講座を受講するものです。教育訓練給付の申請手続きは、本人の住所地を管轄するハローワークに対して行います。
高年齢求職者給付金
65歳以降に退職すると、失業等給付の種類は基本手当ではなく高年齢求職者給付金という一時金に変わります。受給金額は、基本手当の50日分(被保険者として雇用される期間が1年未満のときは30日分)の給付金が一括で支給されます。
高年齢雇用継続基本給付金
労働の意欲と能力のある60歳以上65歳未満の者の雇用の継続と再就職を援助・促進していくことを目的とした給付が高年齢雇用継続給付です。高年齢雇用継続給付金は高年齢者の雇用継続を目的とした給付です。
高年齢再就職給付金
高年齢雇用継続給付のうち、高年齢者の再就職を支援する目的での給付が高年齢再就職給付金です。
未払賃金の立替制度
未払賃金については、「賃金の支払い確保等に関する法律」(賃確法)による未払賃金の立替払い制度を利用できる場合があります。立替払いの対象となるのは、未払賃金総額の80%相当額(年齢による上限あり)です。
退職日の年齢 | 未払賃金の上限額 | 立替払いの上限額 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
立替払いを受けるには、①破産手続き開始決定を受けたこと、②特別清算開始命令を受けたこと、③民事再生開始の決定があったこと、④会社更生手続開始の決定があったこと、⑤中小企業事業主が賃金を支払うことができなくなった場合において、退職労働者の申請に基づいて労働基準監督署長の認定があった場合(事実上の倒産)という要件のいずれかにあてはまることが必要になります。
立替払いの対象者は、労働保険の適用事業で1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業(法人、個人を問いません)に、労働者として雇用されていた者で、上記の破産手続きなどの事由があった日の6ヶ月前の日から2年間に退職した者です。ただし、未払賃金の総額が2万円未満の場合は、立替払いを受けることはできません。
国民健康保険の保険料減免
国民健康保険には、倒産やリストラなどの非自発的理由での失業によって加入した人の保険料を軽減する制度があります。国民健康保険は前年の所得などをもとに保険料を算出しますが、この制度では、前年度の所得を3割とみなして計算するため、その分だけ保険料が安くなります。軽減が受けられる期間は、退職日の翌日から翌年度末までです。ただし、再就職が決まり、会社の健康保険に加入した場合は、国民健康保険を脱退するので軽減措置は終了します。
対象者・手続き
対象者は、雇用保険の特定受給資格者と特定理由退職者で、65歳未満の人です。特定受給資格者とは、倒産、リストラ、セクハラやパワハラを受けた、実際の労働条件が契約と大きく異なっていたなどの理由で退職した人です。一方、特定理由離職者は、病気やケガ、体力不足、有期労働契約の期間満了による雇止め、親族の扶養や介護が必要になったなどの理由で退職した人です。申請手続きは、各市区町村役場で行います。手続きには、雇用保険の受給資格者証が必要になります。
国民年金の保険料免除
自分で直接保険料を納付することになっている第1号被保険者の場合は、経済的に困窮していて、保険料を払えないということもありえます。
そこで、救済措置として「保険料免除制度」が設けられました。保険料の免除には「法定免除」と「申請免除」があります。法定免除は、障害基礎年金をもらっている人や生活保護法に基づく生活扶助を受けている人などのための免除制度です。申請免除は、前年の所得が少ないなど経済的な理由で保険料を納めることが困難な人のための免除制度です。
対象者・手続き
申請免除には、保険料の全額が免除される「全額免除」と、保険料の3/4が免除される「4分の3免除」。半額が免除される「半額免除」。保険料の1/4が免除される「4分の1免除」があります。
第1号被保険者、配偶者、世帯主で、保険料を納付することが困難なときは、住所地の市区町村役場で申請を受けた場合には、免除の内容に応じて保険料が免除されます。
保険料の納付免除(全額・一部)・納付猶予・学生納付特例の申請は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間、過去にさかのぼって申請できます。
ケガ・病気・障害・死亡に役立つ給付や手当
療養(補償)給付
労働者が、業務上または通勤途中のケガ・病気によって療養を必要とする場合に労災保険から給付されます。業務災害の場合を療養補償給付といい、通勤災害の場合を療養給付といいます。
治療の現物給付を行うという「療養の給付」と、現金給付の「療養の費用の支給」の2種類がありますが、「療養の給付」が原則です。「療養の給付」では、労災指定病院で治療を受ければ、原則として傷病が治癒するまで必要な療養を受けることができます。
「療養の費用の支給」は、労災指定病院以外で療養を受けた場合に、そのかかった費用を支給するというものです。治療費だけでなく、入院の費用、看護料、移送費など、通常療養のために必要なものは全額支給されます。
対象者・手続き
対象者は業務上または通勤途中のケガ・病気によって療養を必要とする労働者です。
療養の給付を請求する場合、療養を受けている指定医療機関等を経由して、所轄の労働基準監督署に、所定の請求書を提出します。労災指定病院以外で治療を受け、療養の費用を請求する場合には、支払った費用の領収書等とともに、所定の請求書を事業所管轄の労働基準監督署に提出します。
療養の給付
健康保険では、業務以外の事由による病気やケガなどの保険事由に対して、療養の給付という形で医療を現物給付します。一部負担金として、療養の給付に要した額の2割もしくは3割を負担します。
しかし、保険の適用を受けられない病院で治療を受けたり、保険証を持たずに病院に行ったという場合には、受診者が医療費を全額自己負担しなければなりません。ただし、後から請求することで支払った医療費費の一部を療養費として現金給付してもらうことができます。
対象者・手続き
療養の給付を受ける場合には、保健医療機関などに被保険者証を提出します。70歳以上の場合には高齢受給者証も合わせて提出します。
また、療養費の給付を受けるための手続きとしては、保険者(健康保険の運営者。健保組合や協会けんぽ、市区町村国保等)に対して療養費の請求を行います。保険者が請求内容について療養の給付が困難であると認めたときや、被保険者が保険利用期間・保険薬局以外の医療機関・薬局で診療や調剤を受けたことにつきやむを得ない事情があると認めるときには、自己負担した医療費から一部負担金(原則として医療費の2割もしくは3割。通常、窓口で支払う個人負担額)を除いた金額の払い戻しを受けることができます。
休業(補償)給付
休業(補償)給付とは、業務中または通勤中に被ったケガ・病気で働けない場合の生活補償費です。業務中の原因による場合を休業補償給付、通勤中の原因による場合を休業給付といい、労災保険から給付されます。
業務上または通勤途中の負傷・疾病による療養のために休業し賃金を受けない日の第4日目以降から支給されます。
休業1日目について給付基礎日額の60%が休業(補償)給付として支給され、これに加えて、給付基礎日額の20%が休業特別支給金として支給されるので、合わせて給付基礎日額の80%を受け取ることができます。なお、給付基礎日額とは、原則として、災害発生日以前3ヶ月間に被災した労働者に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で割って算出されます。
対象者・手続き
休業(補償)給付の対象者は、業務中または通勤中に被ったケガ・病気で働けない労働者です。ただし、3日間の待期期間が設定されているため、休業(補償)給付は、療養のため労働することができずに賃金を受けられない日の4日目から支給されます。つまり、3日で完治した場合には、休業(補償)給付を受給することはできません。休業(補償)給付を受けるためには、治療を受けている医師から労務不能であった期間の証明を受け、出勤簿などの添付書類とともに、事業所管轄の労働基準監督署に所定の書類を提出します。また、休業特別支給金は、「休業(補償)給付支給請求書」と同一の用紙で同時に請求を行うことができます。
傷病手当金
労働者(被保険者)が業務外の病気やケガで働くことができなくなり、その間の賃金を得ることができないときに、健康保険から傷病手当金が支払われます。傷病手当金の支給額は、1日につき標準報酬月額の2/3相当額です。ただ、会社などから賃金の一部が支払われたときは、傷病手当金と支払われた賃金の差額が支払われます。傷病手当金の支給期間は支給開始から1年6ヶ月です。1年6ヶ月経過すると傷病手当金の支給は打ち切られますが、1年6ヶ月後も障害が残っている場合には障害基礎年金・障害厚生年金が支給されることになります。
対象者・手続き
傷病手当金を受給するためには、療養のために働けなくなり、その結果、連続して3日以上休んでいたことが要件となります。「療養のため」とは、療養の給付を受けた(健康保険を使って医院等を受診した)という意味に限らず、自分で病気やケガの療養を行った場合も含みます「働くことができない」状態とは、病気やケガをする前にやっていた仕事ができないことを指します。「軽い仕事だけならできるが以前のような仕事はできない」という場合に、働くことができない状態にあたります。
傷病手当金の給付を受けるためには、傷病手当金支給申請書を、事業所を管轄する全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部、または会社の健康保険組合に提出することが必要です。
なお、市区町村等が運営する国民健康保険(国保)も条例で傷病手当金を支給することができる規定がありますが(国民健康保険法58条2項)、実施している国保はありません。
高額療養費制度
医療費の自己負担額が一定の基準額を超えた場合に被保険者に給付される(払い戻される)のが健康保険の高額療養費です。
高額療養費は、被保険者や被扶養者が同じ月に同じ病院などで支払った自己負担額(入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まれません)が、高額療養費算定基準額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた部分の額が高額療養費として支給されます。医療費の1ヶ月あたりの自己負担限度額は、被保険者の年齢や所得の多寡によって異なります。
対象者・手続き
対象者は健康保険に加入できる75歳未満の健康保険の被保険者(被扶養者)です。医療費の1カ月あたりの自己負担限度額の計算方法は、被保険者の年齢や所得の多寡によって異なります。70歳未満の人は、所得に応じて5つの区分けされており、所得が高いほど自己負担額が高くなります。所得が「標準報酬月額28万~50万円」の範囲の人については、原則として、下記の計算式で算出します。
$$80,100円+(総医療費−267,000円)×1%$$
70~74歳の人については、「現役並み所得者」「一般所得者」「低所得者」の3つに区分けされており、所得が「一般所得者」の人については、個人ごとの外来について18,000円、世帯の外来・入院について57,600円が上限です。所得が「現役並み所得」の人の自己負担限度額の計算方法は、所得に応じてさらに3つに区分けされており、70歳未満の人の自己負担限度額と同じ計算式を使用して算出します。
高額療養費を請求する場合、暦月の1ヶ月ごと、医療機関ごとに、年齢と所得に応じて定められた金額を超えて自己負担額を支払ったときは、「健康保険被保険者(扶養義務、世帯合算)高額療養費支給申請書」をすみやかに全国健康保険協会または会社の健康保険組合に提出します。
1ヶ月あたりの医療費の自己負担限度額(70歳未満)
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当 |
標準報酬月額 83万円以上の方 |
252,600円+ (総医療費−842,000円)×1% |
140,100円 |
標準報酬月額 53万円~79万円の方 |
167,400円+ (総医療費−558,000円)×1% |
93,000円 |
標準報酬月額 28万円~50万円の方 |
80,100円+ (総医療費−267,000円)×1% |
44,400円 |
一般所得者 (標準報酬月額26万円以下) |
57,600円 | 44,400円 |
低所得者 (被保険者が市町村民税の非課税者等) |
35,400円 | 24,600円 |
1ヶ月あたりの医療費の自己負担限度額(70~74歳の場合)
被保険者の区分 | 医療費の自己負担限度額 | |
外来(個人) | 外来・入院(世帯) | |
現役並み③ (標準報酬月額 83万円以上) |
252,600円+(総医療費−842,000円)×1% (多数該当:140,100円) |
|
現役並み② (標準報酬月額 53万~79万円) |
167,400円+(総医療費−58,000円)×1% (多数該当:93,000円) |
|
現役並み① (標準報酬月額 28万~50万円) |
80,100円+(総医療費−267,000円)×1% | |
一般所得者 | 18,000円 (年間上限14.4万円) |
57,600円 (多数該当:44,400円) |
市区町村民税の 非課税者等 |
8,000円 | 24,600円 |
被保険者とその扶養家族 すべての人の所得がない |
15,000円 |
障害(補償)一時金
労災事故によってケガや病気をし、それが治癒した後、比較的軽度の障害が残った場合に支給されるのが、障害(補償)一時金です。障害(補償)一時金の額は、障害の等級によって異なります。毎年支給される年金ではなく、一回限りの一時金として支給されます。
なお、障害(補償)一時金が支給される者には障害特別支給金と障害特別一時金(賞与など特別給与に基づいて別に算定)がそれぞれ支給されます。
対象者・手続き
障害(補償)一時金の支給対象者になるのは、残った障害の等級が8級から14級までの人です。請求の手続きは、ケガや病気が治癒した段階で行います。この場合の治癒とは、元の状態に戻ったことを言うのではなく、症状が固定し、治療を継続しても改善が期待できない状態をいいます。
請求先は、所轄の労働基準監督署です。請求書には、診断書を添付する必要があるので、医療機関に依頼して記載してもらいましょう。場合によってはレントゲンなどの証明資料を添付するよう求められることがあります。
なお、障害(補償)一時金の請求権は、ケガや病気が治癒したと判断された日の翌日から5年を経過すると時効によって掃滅しますので、できるだけすみやかに請求手続きを行うようにしましょう。
障害(補償)年金
業務上や通勤途上での労災事故によって重度から中程度の障害が残った場合に支給されるのが障害(補償)年金です。重度の障害が残ると仕事をすることができなくなりますし、中程度の障害が残った場合には仕事を行うことが著しく制約されることになります。このため、一時金ではなく年金の形で長く支援することになっています。このため、支給額は障害の等級によって異なります。なお、障害(補償)年金が支給される者には障害特別支給金と障害特別年金が支給されます。
対象者・手続き
障害(補償)年金の支給対象になるのは、労災事故によって残った障害等級が1級~3級(重度)、4級~7級(中程度)までの人です。請求書の様式は労働基準監督署などで入手することができます。これに必要事項を書き入れ、請求書に添付する診断書に医師(歯科医師)に診断内容を記入してもらい、事業主の証明を受けて請求先の労働基準監督署に提出します。必要に応じてレントゲン写真などを求められることがありますので、事前に確認しておきましょう。なお、障害(補償)年金の請求権の時効は、ケガや病気が治癒したと判断された日の翌日から5年です。この期間を超えると請求することができませんので注意してください。
障害年金
障害年金は、年金制度に加入している間に、病気やケガで障害を負った人に対して給付される年金です。国民年金の加入者が障害を負った場合の給付を「障害基礎年金」といいます。障害等級が1級・2級の場合は、障害基礎年金が支給されます。厚生年金に加入している場合は、障害基礎年金に上乗せされて障害厚生年金が支給されます。また、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。そして、障害厚生年金を受けるときよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。
対象者・手続き
障害基礎年金を受給するためには、下記の3つの要件を満たすことが必要です。
- 初診日に国民年金に加入している、または、過去に国民年金の加入者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に在住している
- 障害認定日に障害等級が1級または2級に該当する
- 以下のいずれかの保険料納付要件を満たしている
・初診日の前日に、初診日の月の前々月までに国民年金の加入者であったときは、全加入期間のうち、保険料の納付期間の免除期間が2/3以上を占める
・初診日に65歳未満であり、初診日の月の前々月まで直近1年間に保険料の滞納がない(初診日が令和8年4月1日前の場合の特例)
障害基礎年金の支給額は、1級が97万7125円、2級が78万1700円です。(令和2年度の基準)。障害厚生年金の支給額は、その人の障害の程度や収入に応じて異なった金額となります。
障害年金を請求する場合、初診日から、1年6ヶ月経過日またはそれ以前に症状が固定したときはその時点で、居住する市区町村役場(国民年金のみの人)または住所地または勤務地を管轄する年金事務所(共済組合)に請求します。提出書類は「年金請求書」「年金手帳(組合員機関等証明書)」「医師の診断書」などです。
高額介護サービス費
介護保険制度は、被保険者が介護を必要とする状態になったときに必要なサービスが提供される公的社会保険制度です。
被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれています。65歳以上の人が第1号被保険者で、医療保険に加入している40~64歳の人が第2号被保険者です。介護保険の利用者は利用したサービスについての費用につき原則1割を自己負担しますが、住民税を課税されている65歳以上の人で、一定の収入のある方は2~3割負担となります。
介護給付を受けるために認定を受けた利用者は、その認定の度合いによって受けられる給付額が異なります。このように、介護保険で利用できるサービスの費用の上限を要介護度・要支援度ごとに定めたものを区分支給限度額(月額)といいます。ただし、在宅サービスの利用料の自己負担額が高額になってしまった場合には、高額介護サービス費として、市区町村から支給(払い戻し)を受けることができます。
対象者・手続き
自己負担額の上限は、生活保護受給者や、世帯全員が住民税非課税でかつ老齢福祉年金受給者(第1段階)、世帯全員が住民税非課税でかつ課税年金収入額合計所得金額の合計が80万円以下の利用者(第2段階)については15,000円、世帯全員が住民税非課税で利用者負担の第2段階に該当しない場合(第3段階)については24,600円、第1~3段階にあたらない世帯については44,400円です。
自己負担額を超え、高額介護サービス費の支給を申請する場合、市区町村で手続きを行います。
遺族(補償)給付
労働者が仕事中(業務上)または通勤途中に死亡した場合に、残された遺族の生活補償を目的として支給されるのが労災保険の「遺族(補償)給付」です。正式には、業務災害の場合は、「遺族補償給付」といい、通勤災害の場合は「遺族給付」といいますがこの2つを併せて、遺族(補償)給付と呼んでいます。遺族(補償)給付には年金と一時金があります。
遺族(補償)年金の受給資格者がいる場合には、その者に「遺族(補償)年金」が支給されます。遺族(補償)年金の給付額は、遺族の数に応じ給付基礎日額の153日から245日分の年金となります。
遺族補償年金の受給資格者がいない場合や、遺族(補償)年金の受給資格者はいるがその権利が消滅し、他に年金を受け取る遺族がいない場合には、一定の遺族に「遺族(補償)一時金」が支給されます。遺族(補償)一時金の金額は給付基礎日額の1000日分です(前払一時金が支払われている場合には1000日分との差額)。
対象者・手続き
遺族(補償)年金を受ける権利のある遺族を受給資格者といいます。
受給資格者になることができる遺族は、労働者の死亡当時にその労働者の収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。この場合の配偶者には事実婚姻関係(内縁関係)と同様の事情にある者を含みます。また妻以外の遺族については、年齢による制約(高年齢または少年)や一定の障害状態にあることなどの要件があります。
これらの受給資格者のうち、最も先順位の者(遺族)だけが受給権者となって、実際に遺族(補償)年金を受給することになります。
遺族(補償)給付を受給するためには、労働者の死亡日から5年以内に事業所管轄の労働基準監督署に「遺族(補償)年金支給請求書」「死亡診断書」「戸籍謄本」などを提出します。
遺族年金
公的年金の加入者、老齢年金、障害年金の受給者が死亡したとき、残された家族に対して給されるのが遺族年金です。遺族年金には、遺族基礎年金、遺族厚生年金があります。
遺族基礎年金は、従来母子家庭の孤児だけの場合にのみ年金が支給される制度でしたが、平成26年4月から父子家庭も支給対象になりました。遺族基礎年金の金額は、「本体部分」と「子供扶養のための加算」部分で構成されます。本体部分は老齢基礎年金と同じ金額、年間78万1700円となり、子のある妻に対する子ども扶養のための加算は第1子と第2子が22万4900円、第3子以降が7万5000円(金額は令和2年度)となっています。遺族厚生年金は、死亡した者の収入に応じた金額がもらえます。具体的には、死亡した者の老齢厚生年金の3/4です。ただし、加入期間の長さの違いによって、「短期要件」と「長期要件」があり、支給金額の計算方法が異なります。
対象者・手続き
遺族基礎年金をもらえる遺族は限られています。対象は、被保険者(年金制度に加入したいた本人)または被保険者であった者の死亡の当時、その者によって生計を維持されていた18歳未満(障害者は20歳未満)の子のいる配偶者、または子です。
ただし、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の2/3以上あることが受給要件です。なお、この要件を満たさなくても、令和8年4月1日前の場合は、死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がなければ受給できます(納付済期間に関する要件については、遺族厚生年金でも同様です)
遺族厚生年金支給の対象となる遺族は、死亡した者によって生計を維持されていた妻、18歳未満の子・孫(一定の障害がある場合は20歳未満)および55歳以上の夫・父母・祖父母(60歳から支給)です。子のいない妻であっても支給対象になります。これらの対象者のうち、最も先順位の者(遺族)だけが受給権者となって、実際に遺族年金を受給することになります。
遺贈年金を請求する場合、居住する市区町村役場(国民年金のみの人)や、住所地または勤務地を管轄する年金事務所(共済組合)に請求します。手続きの際には、「年金請求書」を「年金手帳(組合員機関等証明書)」「戸籍謄本」「死亡診断書」などの添付書類とともに提出します。
寡婦年金・死亡一時金
国民年金の第1号被保険者(農業、自営業などの被保険者である夫が亡くなったときに、その夫の支給されるはずであった老齢基礎年金の一部が妻に年金として支給されるのが「寡婦年金」で、一時金として遺族に支給されるのが「死亡一時金」です。
自営業の夫(国民年金第1号被保険者)が死んだ場合、子どもがいなければ妻は遺族基礎年金をもらうことができません。会社員の夫(国民年金第2号被保険者)が死亡したときには、妻は子どもがいない場合であっても、同様に遺族基礎年金はもらえませんが、遺族厚生年金はもらえます。同じ環境で、一方は年金をもらえるのに、もう一方はもらえないという補償の偏りを補うために寡婦年金、死亡一時金という第1号被保険者のための独自の給付制度が設けられています。
対象者・手続き
寡婦年金とは、結婚10年(内縁関係でも可)以上の妻の場合、60歳から65歳までの期間、夫がもらったと考えられる老齢基礎年金の3/4が支給される制度です。さらに、受給するためには、第1号被保険者として、保険料を納めた期間(免除期間)が10年以上ある必要があります。
寡婦年金をもらう要件が揃っていない場合に、死亡時までの保険料相当分をもらえるのが死亡一時金です。支給を受けるには、国民年金第1号被保険者として保険料を3年以上納めている必要があります。死亡一時金は、最も優先順位の高い遺族に一時金として支給されます。
なお、寡婦年金の支給要件と死亡一時金の支給要件の両方を満たしている人の場合、どちらかを選択して受け取ることができます。
寡婦年金と死亡一時金の申請は、住所地の市区町村役場で行われます。
葬祭料(葬祭給付)
葬祭料(葬祭給付)は、労働者が業務上または通勤途中に死亡した場合に、原則として死亡した労働者の遺族に対して支給されます。業務上の災害などで死亡した場合の給付を「葬祭料」といい、通勤途中の災害などで死亡した場合の給付を「葬祭給付」といいます。支給額は31万5000円に給付基礎日額30日分を加えた額ですが、この額が給付基礎日額の60日分より少ない場合は、給付基礎日額の60日分が支給されることになっています。
対象者・手続き
葬祭料・葬祭給付は、死亡した人の葬祭を行た人を対象として支給されます。通常は遺族が対象になりますが、葬祭を行う遺族がおらず、友人や会社が葬儀を行ったという場合には、その友人や会社に対して支給されることもあります。
葬祭料・葬祭給付を請求する場合は、所轄の労働基準監督署に「葬祭料請求書」または「葬祭給付請求書」を提出します。葬祭料・葬祭給付を請求する場合の添付書類としては、「死亡診断書」や「住民票」など、本人の死亡の事実と死亡年月日を確認できる資料があります。ただ、遺族(補償)給付の請求書をすでに提出している場合は、すでに証明書類を提出してあるはずですから、改めて提出しなくてよいことになっています。
なお、葬祭料の請求権は、本人が死亡した日の翌日から2年を経過すると時効により消滅しますので、注意してください。
埋葬料
健康保険に加入している労働者(被保険者)が業務外の事由で死亡した場合には、その保険者により生計が維持されていた人で、かつ埋葬を行う人に対し埋葬料が支払われます。埋葬料は、被保険者が自殺した場合にも支払われます。また、被保険者に扶養されている家族が死亡した場合には、被保険者に対し家族埋葬料が支払われます。
対象者・手続き
「被保険者により生計を維持されていた人」とは、死亡した被保険者の妻や子などです。遺族が一般的ですが、民法上の親族である必要はなく、同居していない者であってもかまいません。生計の一部を維持されていた人も含まれますし、健康保険の被扶養者である必要もありません。
「埋葬を行う人」とは、常識的に考えて埋葬を行うべき人をいいます。たとえば、被保険者の兄弟姉妹やその他親族の者などです。
埋葬料・家族埋葬料の額は、一律5万円です。健康保険組合によっては、これを付加埋葬料を上乗せしているところもあります。
死亡した被保険者に家族がいないなど、埋葬料を受け取るべき人がいない場合は、実際に埋葬を行った人に「埋葬費」が支給されます。埋葬費の額は、埋葬料の金額を上限として、火葬費や僧侶への謝礼など実際に埋葬に要した実費相当額です。
埋葬料を請求するときは、「健康保険埋葬料支給申請書」に、「死亡診断書」等を添付して保険者に提出します。このとき、「健康保険被保険者資格喪失届」と被保険者の「健康保険証」(被扶養者分も含む)も一緒に提出することになります。埋葬料は死亡の翌日から2年以内、埋葬費は埋葬を行った日の翌日から2年以内に請求します。
老齢年金
老齢基礎年金
老齢基礎年金は国民年金から支給される年金で、老齢給付の土台となる年金です。老齢基礎年金の年金額は、「何か月保険料を支払ったか」で決まります。20歳から60歳まで、40年間すべての月の保険料を支払った場合が満額で1年につき78万1700円(令和3年度の基準)がもらえます。
支給開始時期は原則として65歳からですが、本人の希望によって60~64歳の間に受給を始めたり、66~70歳の間に受給を遅らせたりすることができます。受給開始を早めることを繰り上げ支給といい、繰り上げ請求時の年齢に応じて減額され、生涯にわたり減額されます。逆に、支給時期を遅くすることを繰り下げ支給といい、繰り下げ請求時の年齢に応じて、生涯にわたり支給額が増減されます。なお、繰り下げ支給について、66歳~75歳まで拡大する法改正が令和4年4月から行われる予定となっています。
対象者・手続き
国民年金へ10年以上の加入期間(経過措置あり)で受給資格を得たすべての者に支払われます。老齢給付の「10年」という期間は、納付済期間だけでなく、保険料免除期間(経済的な理由などで保険料の支払いの全部または一部を免除された期間)、合算対象期間(強制加入ではなかった時期に任意で加入しなかった期間について加入したこととして扱う期間)も含めます
平成29年7月31日までは25年間の加入期間が必要でしたが、法改正が行われ、平成29年8月から受給資格期間が10年に短縮されています。遺族年金の加入期間には変更はなく、25年のままとなっていますので注意してください。
年金を請求する場合、居住する市区町村役場(国民年金のみの人)や、住所地または勤務地を管轄する年金事務所(共済組合)に請求します。また、厚生年金の加入者であれば「街角の年金相談センター」(日本年金機構から委託を受けた社労士会が運営)でも手続きをすることができます。
老齢厚生年金
厚生年金には厚生年金に加入している会社の会社員、公務員などが加入します。公的年金制度は、国民年金(基礎年金)をすべての人が加入する年金制度として位置づけているため、厚生年金の加入者は、老後は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受給することができます。
支給時期
老齢厚生年金は、60歳から受給できる60歳台前半の老齢厚生年金と65歳から受給する本来の老齢厚生年金の2つに分けて考える必要があります。法律上の老齢厚生年金の支給開始時期は将来的には完全に65歳からになりますが、現在は支給時期を段階的に遅らせている状況にあり、生年月日によっては60~64歳の人にも特別に支給される年金として、老齢年金が支給されています。これを「特別支給の老齢厚生年金(60歳台前半の老齢厚生年金)といいます。特別支給の老齢厚生年金は原則として報酬額に関係のない定額部分と報酬額によって受給額が変わってくる報酬比例部分という2つの部分から成り立っています。まず、定額部分の支給を段階的に遅らせて、それが完了したら今度は報酬比例分の支給を段階的に遅らせていきます。これにより、男性の場合、昭和36年4月2日以降生まれ、女性の場合、昭和41年4月2日以降生まれの人は60歳台前半の老齢厚生年金を受け取ることができなくなります。
受給要件と支給額
65歳から本来の老齢厚生年金については、老齢基礎年金の受給資格期間(10年間)を満たした人で、厚生年金の加入期間が1ヶ月以上ある人は老齢基礎年金に上乗せして、本来の老齢厚生年金をもらうことができます。一方、特別支給の老齢厚生年金を受給するためには厚生年金の加入期間が1年以上あることが必要です。
65歳からもらえる本来の老齢厚生年金の支給額は老齢基礎年金と異なり、納めた保険料の額で決まります。つまり、現役時代に給料が高かった人ほどたくさん老齢厚生年金をもらえる仕組みになっています。
一方、特別支給の老齢厚生年金の金額は、65歳からの老齢基礎年金に相当する部分(定額部分)については納付月数に応じて支給額が決められます。また、65歳からの老齢厚生年金に相当する部分(報酬比例部分といいます)については現役時代の報酬を基に支給額が決められています。
手続き
老齢厚生年金の請求手続きは、国民年金のみに加入していたが、厚生年金に加入していた期間であったかによって異なりますが、最後に被保険者として使用されていた事業所または住所地を管轄する年金事務所で、また、厚生年金の加入者であれば「街角の年金相談センター」(日本年金機構から委託を受けた社労士会が運営)でも手続きをすることができます。手続きの際には、「年金請求書」を「戸籍謄本」や「住民票」などの添付書類とともに提出します。
加給年金
加給年金とは、厚生年金の受給者に配偶者(内縁関係も含む)や高校卒業前の子がいるときに支給されるものです。会社員で一定の条件を満たす人は、老齢厚生年金(または定額部分)の受給開始と同時に加給年金が上乗せされます。支給額も大きく、国民年金にはない厚生年金保険独自のメリットです。「子」とは、具体的には、18歳になった最初の3月31日までの者、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する者で、どちらも未婚の場合をいいます。ただ、。加給年金は、配偶者が65歳になって配偶者自身の老齢基礎年金がもらえるようになると支給が打ち切られます。その後、加給年金は配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算という年金給付として金額が変わり、加算されるようになります。
対象者・手続き
加給年金の支給対象者は下記の要件に該当する者です。
- 年金を受け取っている者(特別支給の老齢厚生年金の場合は、定額部分の支給があること)
- 厚生年金保険料の加入期間が20年以上ある者
➝20年というのは原則であり、生年月日に応じて、男性で40歳(女性で35歳)を過ぎてからの厚生年金保険加入期間が15年~19年あれば受給資格が得られます。 - 一定の要件を満たす配偶者や子の生計を維持している者
➝一定の要件を満たす配偶者とは、配偶者の前年度の年収が850万円未満であること、65歳未満であること、配偶者がすでに老齢年金などを受給している場合は、その年金の加入期間が20年未満であること、です。
加給年金の手続きは、老齢厚生年金の請求手続き(裁定請求)と同時に行われますので、加給年金について改めて請求する必要はありません。
在職老齢年金
老齢厚生年金を受け取ることができる60歳以降になっても働き続ける人が増えています。そうすると、60歳以降の収入は給与と年金の2つの柱になりますが、会社などで働きながら年金を受け取る場合、年金が全額または一部減額されることがあります。これを在職老齢年金制度といいます。「60歳から64歳まで」と「65歳以降」の場合で計算式が異なります。
60歳台前半の在職老齢厚生年金
60歳台前半の在職老齢厚生年金のしくみは、基本報酬月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円を超えているかどうかと、総報酬月額相当額が47万円を超えているかどうかを基に判断します。基本月額とは、受給している老齢厚生年金額(加給年金を除く)を12で割って月額換算した額のことです。総報酬月額相当額とは、年金受給者が勤務先から受け取る賃金と過去1年間に受け取った賞与の合計額を12で割った額のことです。
年金受給者が働いても総報酬月額相当額と基本月額の合計額が28万円に達するまでは年金の全額が支給されます。
総報酬月額相当額と基本月額の合計額が28万円を上回る場合は、総報酬月額相当額の増加分の半額に該当する年金額が停止されます。
総報酬月額相当額が47万円を超える場合は、さらに総報酬月額相当額が増加した分だけ年金が支給停止されます。60歳から64歳までの在職老齢年金については、収入によっては全額カットされる可能性もあります。
なお、年金がカットされることにより、60歳以降の人の働く意欲を阻害しかねないという観点から、支給停止の基準額を28万円から47万円に引き上げる法改正が令和4年4月から施行される予定です。
60歳台後半の在職老齢年金
65歳以上の人が老齢厚生年金を受給しながら会社勤めをする場合も受け取る賃金の額に応じて老齢厚生年金の額が減額されます。ただし、調整のしくみは60歳台前半の在職老齢年金とは異なり、基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超えた場合に、その超えた分の半額に相当する年金額の支給が停止されます。
厚生年金の被保険者は原則として70未満の者ですが、70歳を過ぎても厚生年金が適用される事業所の雇用され、健康保険の被保険者となっている場合には同様の仕組みで年金額が調整されます。
「65歳以降」の在職老齢年金については給与収入がある場合に支給が停止されるのは老齢厚生年金だけであり、老齢基礎年金の方は全額が支給されます。60歳台前半の在職老齢年金と異なり、その人が受け取る年金の全額が支給停止されるということはありません。
対象者・手続き
60歳以降も在職して働く場合には、在職老齢年金制度により、年金額の調整が行われます。
ただし、給与と支給調整される在職老齢年金の手続きは、会社と年金事務所の方で行われるので、年金受給者が手続きをする必要はありません。会社に「年金手帳」と「年金証書」を提出し、勤務している事業所を管轄する年金事務所に手続きをしてもらうことになります。
出産・子育て・介護に役立つ給付や手当
出産育児一時金
妊娠・出産は病気やケガではありません。このため、定期検診や正常分娩にかかる費用については療養の給付を受けることができず、全額自己負担となります。しかし、出産し、育児が始まると経済的な負担は非常に大きくなります。そこで、健康保険では、出産費用の補助を行っています。これを出産育児一時金といいます。
対象者・手続き
被保険者またはその被扶養者である家族が妊娠4ヶ月以降(妊娠85日以後)に出産したときに、一児につき42万円が支給されます。(多胎妊娠の場合は、42万円×人数分)。ただし、出産した医療機関等が産科医療補償制度に加入していない場合は、一児につき40万4000円の支給になります。産科医療補償制度とは、出産の際に重度の脳性麻痺が発生した場合、医療機関に過失がなかったとしてもその出生児に対して補償(総額3,000万円)を行うという制度です。補償を受けるためには出産を行う医療機関側が1つの分娩について3万円の保険料を負担する必要があるため、その分、出産育児一時金が上乗せされています。出産育児一時金は、妊娠85日以後であれば出産に限らず死産や流産でも支給されます。また、被保険者資格を喪失する日の前日まで継続して1年以上被保険者期間のある人が、資格喪失後6ヶ月以内に出産した場合も支給されます。ただ、資格喪失後に夫の被扶養者となって「家族出産育児一時金」を受けられる場合は、どちらか一方の選択となります。
なお、出産費用が出産育児一時金の支給額を超える場合は、その差額分を自己負担することになります。
出産手当金
出産のために仕事を休んだ場合の賃金の補填としての給付を出産手当金といいます。
被保険者が出産のため会社を休み、給料(報酬)を受けられないときは、出産日(出産予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(多胎妊娠のときは98日)から出日後56日までの期間、欠勤1日につき標準報酬月額の2/3が支給されます。
給与が支払われないとは、まったく支払われない場合だけでなく、出産手当金の額(標準報酬月額の2/3)に満たない給料の場合も対象となります。その場合は出産手当金との差額が支給されます。
対象者・手続き
出産手当金を請求する場合、産前、産後別または産前産後一括してそれぞれの期間経過後に、事業所管轄の全国健康保険協会の都道府県支部または会社の健康保険組合に提出します。出産手当金を受けられる日ごとにその翌日から起算して2年で時効となり、請求権がなくなります。
出産を機に退職する労働者もいると思いますが、出産手当金は在職中の労働者にだけ支給されるというわけではありません。会社などを退職し、健康保険の被保険者としての資格を喪失した労働者に対しても出産手当金が支給されることがあります。
ただし、退職後に出産手当金の支給を受けるためには健康保険の資格喪失日の前日までに引き続き1年以上被保険者(任意続被保険者と共済組合の被保険者を除く)であること、資格を喪失した際に出産手当金の支給を受けていることが必要です。
育児休業給付金
原則として、1歳未満の子を養育するために休みを取得できるのが育児休業制度ですが、一定の要件を満たす育児休業取得者は育児休業給付金を受給できます。支給金額は、休業開始後6ヶ月間については、休業開始時の賃金日額に支給日額を乗じた額の67%相当額です。休業開始から6ヶ月が経過した場合は給付割合は50%となります。
支給期間は子が1歳になるまでが原則です。ただし、保育所に入所申込みを行ったが定員オーバーで入所できない場合や、配偶者の死亡や疾病により育児が困難な場合など、一定の延長自由が認められる場合には、1歳6ヶ月または2歳まで支給期間が延長される場合があります。また、父母がともに育児休業を取得するパパ・ママ育児プラス制度を利用する場合は、子が1歳2か月になるまでの最大1年間(女性の場合は産後休業期間を含む)となります。
対象者・手続き
育児休業は、父親も取得することができます。育児休業給付金を取得するためには下記の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の一般被保険者(1週間以上の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みのある者のこと)であること
- 育児休業開始日前の2年間に、賃金を受けて雇用保険に加入していた日が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
- 事業主に対して育児休業の開始日と終了日を申し出していること
事業主は、初回の支給申請を行う日までの間に、所轄のハローワークに休業開始時賃金月額証明書を提出して、受給資格確認手続きをしなければなりません。通常は、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を同時に提出して、初回支給申請を併せて行います。受給資格確認手続きと初回支給申請を併せて行う場合、休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日までに行う必要があります。この場合、「賃金台帳」「出勤簿」などの記載内容を証明する書類と「母子健康手帳」などの育児の事実を確認できる書類のコピーを添付する必要があります。なお、2回目以降の申請は、ハローワークにから交付される「育児休業給付金支給申請書」を提出します。
産休中の社会保険料免除
産休期間中は収入が減るため、社会保険料は労働者にとって大きな重荷です。その社会保険料が負担にならないようにするために設けられたのが、産休中は社会保険料の納付が免除されるという制度です。
免除される社会保険料は、健康保険、介護保険、厚生年金保険です。労働者本人の負担分だけでなく、会社負担分についても免除されることになっています。この制度の適用を受けるためには、事業主が年金事務所に申し出なければなりません。免除を受けるためには、労働者が実際に仕事を休んでいることが必要ですが、有給・無給であるかは問いません。
対象者・手続き
産休とは、出産の6週間前(双子以上の場合は14週間)から出産後8週間の休業をいいます。出産を予定している労働者が申し出たときは、事業主は、産休を取らせなければならないということが労働基準法によって規定されています。
保険料免除は日割り計算ではなく月単位なので、免除の対象となる期間は産休を開始した月から産休終了日の翌日の月の前の月(産休終了日が月の末日の場合は産休終了月)までです。
社会保険料の支払が免除されてもその期間中は保険料を支払ったものとして扱われるので、健康保険・介護保険の給付を受けることができ、また年金も減額されることはありません。
産休中の社会保険料免除を受けるためには、労働者から申し出(産休中に行う必要があります)を受けた事業主が事業所管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金産前産後休業取得申出書」を提出しなければなりません。
また、平成31年4月からは出産前後の一定期間、国民年金保険料が免除される制度も開始されました。免除期間は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間です。対象となるのは免除期間内に国民年金第1号被保険者の期間を有する人です。国民年金保険料の免除を受けるには、居住する市区町村にある国民年金担当窓口に母子手帳などを提出しなければなりません。免除の届け出は出産予定日の6ヶ月前から行うことが可能です。
育児休業期間中の社会保険料免除
育児休業期間中は、労働者の収入がどうしても少なくなります。このため、社会保険料の納付が免除される制度が設けられています。
免除される社会保険料は、健康保険・介護保険・厚生年金保険です。この場合、労働者本人の負担分だけでなく、会社負担分についても免除されることになっています。この制度の適用を受けるためには、事業主が年金事務所に申し出ることが必要です。
免除される期間は、育児休業を開始した月から、終了した日の翌日の前月までです。育児休業期間中、労働者の給与が有給であるか無給であるかは問いません。
対象者・手続き
社会保険料の免除が認められるのは、育児休業と子が3歳になるまでの育児休業に準じる休業ですので、休業期間中であっても、子が3歳になればその時点で免除は終了します。
なお、社会保険料の支払が免除されてもその期間中は保険料を支払ったものとして扱われますので、健康保険・介護保険の給付を受けることができ、また年金も減額されることはありません。
この育児休業期間中の社会保険料免除とよく似た制度で、産休期間中の社会保険料の納付を免除する制度があります。これを活用すれば産休が明けても職場復帰せず、そのまま育児休業に入って、保険料免除をそのまま継続することもできます。ただし、届け出は改めて行わなければなりませんので注意が必要です。
育児期間中の社会保険免除を受けるためには、労働者からの申し出を受けた事業主が、事業所管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険育児休業取得者申出書」を提出することが必要です。
児童手当
子育てにかかる費用の負担を少しでも軽減するために支給されているのが児童手当です。支給対象となる児童とは、0歳から中学卒業まで(0歳から15歳になった後の最初の3月31日まで)の者のことを意味します。
支給金額は(月額)は下記のとおりです。
年齢 | 金額 |
0~3歳未満 | 第1・2子:15,000円 |
第3子以降:30,000円 | |
3歳~小学校修了まで | 第1・2子:10,000円 |
第3子以降:30,000円 | |
中学生 | 第1・2子:10,000円 |
第3子以降:30,000円 | |
高校生 | 第1・2子:10,000円 |
第3子以降:30,000円 |
児童手当は、平成23年まで支給されていた子ども手当と異なり、養育者の所得について所得制限が設定されています。養育者の所得が所得金額を超える場合、児童手当を受給することはできません。ただし、現在のところ、所得金額を超える父母などに対しても、特例給付として月額5000円が支給されます。
対象者・手続き
児童手当を受給するためには、居住する地域の市区町村で認定手続きが必要です。支払時期については、2月~5月分については毎年6月、6月~9月分については毎年10月、10月~1月分は毎年2月に支払われます。
児童扶養手当・特別児童扶養手当
児童扶養手当とは、父母の離婚などで、父または母と生計を同じくしていない子どもが育成される家庭(ひとり親家庭等)の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図ることを目的として、支給される手当です。
対象者・手続き
子どもをかかえて離婚した親などに対しては、児童扶養手当が支給されます。母子家庭に限らず父子家庭も対象で、配偶者からの暴力で「裁判所からの保護命令」が出された場合も支給されます。18歳に達する年度末までの間にある児童が対象で、手当額は、児童義務者の所得によって10,180~43,160円です。2人目以降の児童への加算もあります。
子どもの精神あるいは身体に障害がある場合は、特別児童扶養手当が支給されます。法律で定められた1級障害児に対しては月額5万2500円、2級障害児については月額3万4970円が支給されます。(金額は令和3年)
これらの手当の支給を受けようとする場合、手当を受けようとする者が居住する市区町村役場の窓口で手続きをすることになります。
ひとり親家庭等医療費助成
ひとり親家庭について、医療費の自己負担部分を、一部を除いて免除する制度です。子供の医療費だけでなく、親や養育者の医療費についても免除されます。東京都の場合、各市区町村で手続きをすると、「マル親医療証」が交付されます。この「マル親医療証」と健康保険証をセットにして、医療機関の窓口に提出すると、医療費の自己負担分が一部免除されるしくみです。ただし、各市区町村の外で治療を受けたり、この制度を扱っていない医療機関に行くこともあります。その場合は、医療機関で支払いをすませた後、領収書を添えて市区町村役場に申請をして、多く支払った分を返してもらうことになります。
対象者・手続き
対象者は、母子家庭の母、父子家庭の父、両親がいない児童を養育している人、その家庭の18歳未満の子ども(障害がある場合は20歳未満)などです。ただし、各市区町村が定めた所得制限以上の所得がある人、生活保護受給者、健康保険未加入者などは対象外です。申請手続きは、各市区町村役場で行います。詳しくは、各市区町村のホームページを見るか、担当部署に問い合わせてください。
母子(父子)福祉資金
国から支給される手当の他に、母子(父子)福祉資金という低利の融資制度もあります。就職に必要な職業技能を身につけるための技能習得資金、事業を始めるための事業開始資金、あるいは子どもを学校に入学させるための就学資金、住宅の建設・改築・保全のための住宅資金などさまざまな貸付金が用意されています。いずれも年1%の利子あるいは無利子で、一定の据え置き期間経過後に返済することになります。
対象者・手続き
母子(父子)福祉資金の対象者は、20歳未満の子どもを扶養する母子(父子)家庭の母親(父親)です。申請にあたっては、物的担保(抵当権や質権など)は扶養ですが、原則として連帯保証人を1人以上立てなければなりません。申請は居住する市区町村の福祉担当窓口で行い、審査を経て貸付の可否が決まります。
就学費援助
一定の基準を満たす低所得の世帯を対象に、小中学生の子どもの就学に必要な費用を援助する制度です。就学に必要な費用を幅広くカバーしています。具体的には、給食費、学用品費、修学旅行費、医療費(特定の病気のみが対象)、通学費、体育実技用具費、クラブ活動費などの費用が対象です。費用の支給は、実際にかかった費用を支給する実費支給と、かかった費用にかかわらず一定の額を支給する定額支給があります。支給方法は、口座振り込みです。ただし、給食費や医療費については、学校や医療機関に直接支払われる場合もあります。
対象者・手続き
利用対象は、生活保護を受給してい世帯と、それに準じる程度の低所得の世帯です。後者は各市区町村によって認定の基準が異なります。また援助内容や手続きの方法は、各市区町村によって異なります。詳細は、各学校、市区町村、教育委員会などに問い合わせてみましょう。
その他の役立つ給付や手当
生活福祉資金の貸付
低所得世帯や高齢者世帯などに対し、低利もしくは無利子で貸付を行う制度です。貸付資金の種類としては下記の4種類があります。
- 生活を再建するための資金を貸し付ける総合支援資金
- 冠婚葬祭費や技能習得期間中の生活費などを貸し付ける福祉資金
- 子どもを高校や大学に進学させるための資金を貸し付ける教育支援資金
- 一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける不動産担保型生活資金
貸付を受けることができる金額は、貸付資金の種類、世帯人数や収入などによって異なります。
対象者・手続き
貸付が受けられるのは、市町村民税非課税程度の低所得世帯で他からの資金の借入れが困難な世帯および障害者や高齢者が属する世帯です。また、新型コロナウイルスの影響による休業や失業により、収入が減少し、生計の維持が困難になった世帯は、緊急小口貸付を受けることができます。貸付上限額は20万円以内で、据え置き期間年後に返済を開始します。
申込みの際には各市区町村の社会福祉協議会の窓口に相談申請を行い、都道府県社会福祉協議間の審査を受けることになります。民生委員の面接が求めれれるケースもあります。総合支援資金や福祉資金の貸付を受ける際には、連帯保証人を立てることが原則ですが、連帯保証人がいなくても利用できる融資もあります。
災害弔慰金
自然災害によって死亡した人の遺族に対して、国がお金を支給する制度です。一家の家計を支えている人が死亡した場合は、家計に与える悪影響が大きいため、支給額が高くなります。具体的には、東京都では、死亡者1人につき250万円を支給しますが、死亡したのが生計維持者であった場合には倍の500万円を支給することになっています。災害が直接のきっかけになって死亡した場合だけでなく、災害後のさまざまなストレスがもとで病気になり、死亡した「災害関連死」についても支給対象になります。
なお、支給対象となる災害は下記の4つになります。
- 1市区町村において住居が5世帯以上減失した災害
- 都道府県内において住居が5世帯以上減失した市区町村が3以上ある場合の災害
- 都道府県内において災害援救助法が適用された市区町村が1以上ある場合の災害
- 災害救援助法が適用された市区町村をその区域内に含む都道府県が2つ以上ある場合の災害
対象者・手続き
対象者は、災害によって死亡した遺族です。配偶者、子、父母、孫、祖父母までが遺族として扱われ、この順位で支給対象者が決まります。なお、配偶者、子、父母、孫、祖父母がいない場合は、死亡者と同居するかまたは生計を同じくしていた兄弟姉妹も支給の対象となります。申請手続きは、各市区町村役場で行います。
災害障害見舞金
災害障害見舞金は、自然災害によって重度の障害を負った人に国がお金を支給する制度です。家族の家計を支えていた人が障害を負うと、家計に与える打撃が大きいため、支給額が多く設定されています。具体的には、東京都では、1人あたり125万円を支給しますが、障害を負ったのが生計維持者の場合には、その倍の250万円を支給する決まりです。対象となる災害は災害弔癒金と同様に一定の条件をクリアするものに限定されています。障害年金の支給条件を満たす場合には、災害障害見舞金と障害年金の両方を受け取ることができます。
対象者・手続き
支給対象者は、災害によって日常生活が困難になるほどの重度の障害を負った人です。たとえば、両目を失明した人、内臓の機能に障害が残って要介護状態になった人などです。申請手続きは各市区町村で行います。
災害減免法による所得税の減額
自然災害などによって住宅や家財に損害を受けた場合、災害減免法の適用を受けられる可能性があります。この法律の適用を受けると、所得税の全額もしくは一部が減免されます。類似の制度としては「雑損控除」がありますが、これらを重複して受けることはできません。雑損控除と災害減免法のいずれの適用も受けれる場合は、対象者がどちらか有利な一方を選択すればよいことになっています。
対象者・手続き
災害減免法による減免を受けることができるのは、災害によって住宅や家財に時価の1/2以上の損害を受けた人のうち、災害にあった年の年間所得の合計が1,000万円以下の人とされています。その災害が盗難や横領である場合や年間所得が1,000万円を超える人については対象外となりますが、雑損控除を受けることは可能です。
減免される所得税の額は、所得が500万円以下の場合は全額、500万円を超え750万円以下の場合は1/2、750万円を超え1,000万円かの場合は1/4です。法の適用を受けるためには、確定申告書に災害減免法による減免を受ける旨および被害の状況・損害額を記載して所菅の財務署に提出する必要があります。
国税の納付の猶予制度
一度に納税をすると生活が困難になる場合や、災害で財産を失ってしまった場合など、特定の事情があるときは、財務書に申請をすることで、国税の納付の猶予制度を受けられる可能性があります。この制度を利用することで期限後でも、資力に応じた額で分割納付等をすることができます。猶予期間中(最大1年間)は延滞税の全部または一部が免除されます。また、令和2年4月30日の新型コロナ税特法の施行により、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が大幅に減少している人に向けて納税の猶予の特例(特例猶予)が創設されました。特例猶予の場合は、延滞税はかかりません。
対象者・手続き・申請期間
制度を利用できるのは、一度に納税することで、事業の継続や生活の維持が困難となるおそれがある人です。納税について誠実な意思があること、猶予を受けようとする国税以外に滞納がないことが必要です。申請は、納税期限から6ヶ月以内に行わなければなりません。新型コロナウイルスに関する特例猶予を受けられるのは、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月1日以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、収入が前年同期と比べておおむね20%以上減少し、一事の納税が困難な人です。
住居確保給付金
離職等により収入が減少し、住居を失った、またはそのおそれがある人に対して、就職に向けた活動をすることを条件に、家賃相当額を自治体から家主に支給する制度です。一定の要件を充たした場合、原則3カ月間(就職活動を誠実に行っている場合は最大で9ヶ月まで延長可能)、支給を受けることができます。支給される金額は、単身世帯か複数世帯かによって異なりますが、東京23区の場合、単身世帯で5万3700円、2人世帯だと6万4000円、3人~5人世帯だと6万9800円が上限となります。
対象者・手続き・申請期間
対象者は、主たる生計維持者が離職や廃業後2年以内である場合、または自己都合によらない休業等により、収入が離職や廃業と同程度まで減少している場合です。誠実かつ熱心に求職活動をしていることと世帯収入や世帯の預貯金額が一定以下であることも必要です。なお、以前はハローワークに求職申込をしていることが条件でしたが令和2年4月30日以降、ハローワークへの申込みは不要となりました。住居確保給付金の申請や相談については、最寄りの自立相談支援機関で受け付けています。